上 下
211 / 269

答え合わせは昼食のあとで 7

しおりを挟む
 リオさんの不思議そうなニュアンスの呼び掛けは「どうして、あっちも返事をしたのか?」だろうか。
 キョトンとしているリオさんと、「やってしまった。どうしよう」と表情が物語っているフリストさんを見た始祖様は「ふぅ~」と小さく息をもらしてから口を開いた。
「あのな~。良いか?俺は、アルゴスとマルケス、ひいてはフォレストのじ~じだ」
「ん!!」
 ビシッと自分を指差しながら言う始祖さまに、コクンとリオさんが頷いた。
 え??アルゴスくんとマルケスくんの様子?
 二人は流れるこの、微妙な緊張感のある雰囲気をもろともせずに、『僕たちの考える最強のサンドイッチ』を作ることに専念というか集中しているというか、大人の思惑には気付いていないようだ。
 時折り、クフクフと含み笑いしながら作り上げている。
 て、え!?パン、全部使うの!?大丈夫??
 いや、でも、厨房のみんなは二人が食べきれるだろう量に留めておいてくれているから、大丈夫、……だよね??
「……で、だ。オーシャンのフリストは、お前の代わりにランとリーンのじ~じをしてる。だから、自分が呼ばれたと思ったんだろう」
「お?ん。判った」
 さすが、という言い方は失礼かもしれないが、アルゴスくんとマルケスくんの事を見守っていただけあって、リオさんへの説明もものすごく判りやすい。
 それはリオさん自身も感じているのか、コクコクと頷いていた。
 続くように、フリストさんも頷いていた。
「ホントか~?」
 本当に判ってるのか?と始祖様が茶化して肘でリオさんをつついているが、彼はそれに対しなにも思わないのかさしたる反応を示していない。
「ぁ、あの……」
「ん?じ~じ?謝る、無い。こっち、じ~じ。二人、じ~じ」
 フリストさんから不安げな声がこぼれるが、リオさんは「二人ともじ~じなんだから、謝ることはないよ」と優しい言葉を返していた。
 あ。リオさんっていわゆる世間一般の「誤解されやすい人」ってタイプなんじゃないかな?
「リオ兄、これ!!アルゴススペシャル」
「こっちはマルケススペシャル」
 いつの間に!?
 可愛い声が聞こえた方向には、いつの間に移動したのか、こどもたちがお皿にパンを乗せてリオさんにそれを差し出していた。
「ん??」
 あ!!だから、二人とも我関せずとばかりに真剣にサンドイッチを量産してたんだ!!
 おそらく二人は、「どうして良いか判らないみたいなリオ兄のために、自分達のスペシャルを食べてもらおう」と考えたのだと思われる。
 どこに出しても恥ずかしくない、満点のにこにこ笑顔で二人揃って「食べて食べて」と皿を受け取ってもらうのを待っている。
「良いの??」
「「うん!!」」
「受け取ってやれ。二人のスペシャルな気持ちだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

騎士団長のお抱え薬師

衣更月
ファンタジー
辺境の町ハノンで暮らすイヴは、四大元素の火、風、水、土の属性から弾かれたハズレ属性、聖属性持ちだ。 聖属性持ちは意外と多く、ハズレ属性と言われるだけあって飽和状態。聖属性持ちの女性は結婚に逃げがちだが、イヴの年齢では結婚はできない。家業があれば良かったのだが、平民で天涯孤独となった身の上である。 後ろ盾は一切なく、自分の身は自分で守らなければならない。 なのに、求人依頼に聖属性は殆ど出ない。 そんな折、獣人の国が聖属性を募集していると話を聞き、出国を決意する。 場所は隣国。 しかもハノンの隣。 迎えに来たのは見上げるほど背の高い美丈夫で、なぜかイヴに威圧的な騎士団長だった。 大きな事件は起きないし、意外と獣人は優しい。なのに、団長だけは怖い。 イヴの団長克服の日々が始まる―ー―。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...