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答え合わせは昼食のあとで 4
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何か小さく呟(つぶや)いたと思ったら、なんとマルケスくんはくしゃりを顔を歪めてしまった。
「え!?マルケス!?」
「……て??」
予想だにしなかった展開に、アルゴスくんはもちろん、私たちもどうして良いか判らず、心境的におろおろしてしまう。
しかし、我々は国を代表するもの。
お互いに言われなければ、「ん??オロオロ?確かに少し落ち着かないか?」な程度に、表面的には取り繕(つくろ)っている。
なのに、他国の人間であるのに、フリストさんなんて「落ち着いて」と声かけしたくなるくらいに慌てているのがよく判る。
もう、視線が「どうした!?」という程に泳ぎまくっていたのだ。
あぁ。そっか。いまはまだ物理的に会えないランくんとリーンくんをアルゴスくんたちに重ねているんだ。
「おぃ、え、いか、……ぃで??」
あ!!そっちか!!
恐らく、マルケスくんはどんどん知識を吸収するアルゴスくんを見て、『このままでは置いていかれる』と思っているのだろう。先程の呟きは「僕を置いていかないで」になると思う。
マルケスくんの言葉に、フリストさんは激しくうなずいているけど、取り繕うよゆうなんて無いようだ。
「え??なんで??」
は???
って、え!?
お、置いてくの!?
独走するの!?
え!?
キョトンと目を丸くしながらもさらりと至極当然、というか、「なにを言ってるのだ?マルケスは」とでも言いたげに首を傾げるアルゴスくん。
そんな彼を見たマルケスくんのお目目はうるうると緩(ゆる)み、今にも泣き出しそうだ。
フリストさんは、両隣の方が肩に手を当て、宥めては居るものの卒倒寸前(そっとうすんぜん)だ。
でも、なんでってアルゴスくんはどういう意味で口にしたのかな。
「マルケスと俺は二人でムテキだろ??なんで、一人でいかなきゃなのさ」
「え??」
「あっ!!」
思わずあげてしまっただろう誰かの声は、まさしく私の心境と同じだった。
どうしてそんなことを!?と私と、おそらく気になって仕方が無かったのだろうフリストさんの疑問に図らずも答えてくれたのは、アルゴスくんだった。
そっか。
ああ。そっか。『なんで』は悪い意味で言ったんじゃなく、『どうして、一緒に居て当たり前なのにそんなこと聞くんだ?』の方だったんだ。
こぼれ落ちそうだったマルケスくんの涙も、意外な、いや、誰もが思っても見なかった返答だったせいか、いつのまにか引っ込んでいた。
「置いてくなら、おれより断然マルケスだろ!?」
「ぼく!??」
ん!?置いてくのが、マルケスくん??
いや、アルゴスくんの言葉は最後まで聞いていないと本当の意味が判らなくなる。
ついさっきの『なんで』が良い例だ。
「行儀悪くてごめんなさい」
ピョンッと椅子から飛び降りざまに言って、アルゴスくんはマルケスくんに近付いた。
対するマルケスくんも椅子から降りて、二人はぎゅっと正面から抱き締めあっていた。
その優しいハグはアルゴスくんからマルケスくんへ『大丈夫。怖くないよ』と言葉無く伝えているかのようだ。
フリストさんは「うん、うん」と声は出していないが、好好爺の見本のような笑顔を浮かべて重々しく頷いている。
「マルケスは俺をおバカだからって置いてくのも出来たのに、ずっとず~っと置いてかないだろ??」
「ぅ"ん!!」
狙ったわけではないだろうが私たちに背中を向けているような形になっているため、これが夜なら光の反射で鏡のようになっただろうが、残念ながら真っ昼間な現在、アルゴスくんの表情は見えない。
でも、二人の子供たちを始祖さまもリオさんも黙って、……だけれどもとても穏やかで優しい表情で見つめているため、フォレストもオーシャンの人間も二人に倣ったかのようにおとなしく見守っていた。
やっぱり、始祖さまはすごいな~。
彼を尊敬できると思うところは『遊ぶときは全力で、だけれども見守ると決めたら請われたら助言はするけど手は出さない』を言葉ではなく体で表していることだ。
命や心に傷を負いそうな時はもちろん即座に止めるだろう。
『良いことは良い。悪いことは悪い』
そう、はっきりと教えることが出来る始祖さま。実際にそういう場面でははっきりと「ダメだ」と子供たちに伝えていたし。
でも、それ以外は制止もせずに、アルゴスくんたちのやりたいようにやらせていた。
あ。もしかしたら、そういうことを学ぶためにリオさんはここに来た??
『習うより慣れろ』
昔から伝えられる言葉のままに。
なんだか、それがあってるような気もするけれど、当事者の気持ちをこちらが汲むことはあっても、勝手にはかってはまともな話は出来ない。
聞けば良いんだから、妄想はダメだよね。
心なしかキラキラした瞳でリオさんが始祖さまを見る眼差(まなざ)しから、私がそう感じたのかもしれないけれど。
「だからおれも置いてかない!!俺たちちびもふブラザーズはっ!!二人でムテキだからな!!」
「う"ん!!」
私がツラツラ考えている内にも、どんどん成長していくアルゴスくんとマルケスくんの姿はとても眩しい。
二人揃って「お行儀悪くて、ごめんなさい」をすれば、どこからともなく拍手が鳴り、……あ、フリストさんだ。
めちゃくちゃ良い表情で手を叩いてる。
拍手の渦とフリストさんの様子に対してかちょっぴり顔を赤くしながら席に着いた。
『謝ったけど、お詫(わ)びはどうしよう』と ばかりに私を見つめる子供たちに誰より早く解決法を提示したのはディーバさんだった。
「お二人とも、サンドイッチオススメを皆さんに教えてくれませんか?」
「俺たち?」
「二人で?」
「はい。その通りです。お二人はどうやって止めてしまった昼食のそれをごめんなさいしようかと思ってらっしゃるのでしょう?ですから、私も勝手に提案してみました」
「「はいっ!!」」
ウマイな~。
子供たちの自尊心を傷つけないためにも下手に出て、だけれども卑屈(ひくつ)にならないように言葉にしたディーバさんに、アルゴスくんたちのお顔はニッコニコで、テンションも明らかに上がっている。
そして、優しく暖かい雰囲気の中、アルゴスくんとマルケスくんの、『美味しいサンドイッチを皆で食べよう講座』が唐突(とうとつ)に開催されることとなった。
「このくにょんってしたのはクロあっサンです」
お??珍しい。
いつもは勝手に言葉を作ってしまうのはアルゴスくんだけれど、今回は違った。
クロワッサンとうまく発音できなかったマルケスくんを助けるためだろう、ディーバさんは彼に「クロワッサン」だと優しく補足していた。
「ウマイけど、おデブになる。おデブになるからウマイのかは判らんちん。ごめんなさい」
アルゴスくんが皆に向けて真面目な顔をしてお間抜けなことを言う。
だから、も、これ、ギャグなの??お腹痛い。
さっきまでのさもすれば重苦しい、ドシリアスな展開があったから、よけいに静けさのなかで響くお腹の音並みに面白い。
どちらともに笑ってはいけない、緊張感を保ち続けなければいけない場面だから余計に、なんだよね。
「どれもパンにはバターは入ってるかもだけど、これはスペシャルに入ってるから、食べすぎるとスペシャルおデブになるの。気を付けてね~」
す!!スペシャルおデブ!!
マルケスくんの追撃とすら言えるそれに肩を揺らしているのは私だけではない。
言うまでもなく、子供たち以外の全員の肩が小さく揺れている。中には我慢しているつもりではあるのだろうが、そこだけ地震が来ているかのように体を大きく揺らしている方も居る。
だけれども、誰も吹いてはいない。子供たちが真面目に言っているのだからと、大人たちは『笑ってはいけない』という謎の一体感に包まれている。
言いたいことは判るし、言ってることは間違っていない。
けど!!けれどね?
言葉のチョイスがいちいち、こちらの笑いのツボを刺激してくるのはなんともはや。
「え!?マルケス!?」
「……て??」
予想だにしなかった展開に、アルゴスくんはもちろん、私たちもどうして良いか判らず、心境的におろおろしてしまう。
しかし、我々は国を代表するもの。
お互いに言われなければ、「ん??オロオロ?確かに少し落ち着かないか?」な程度に、表面的には取り繕(つくろ)っている。
なのに、他国の人間であるのに、フリストさんなんて「落ち着いて」と声かけしたくなるくらいに慌てているのがよく判る。
もう、視線が「どうした!?」という程に泳ぎまくっていたのだ。
あぁ。そっか。いまはまだ物理的に会えないランくんとリーンくんをアルゴスくんたちに重ねているんだ。
「おぃ、え、いか、……ぃで??」
あ!!そっちか!!
恐らく、マルケスくんはどんどん知識を吸収するアルゴスくんを見て、『このままでは置いていかれる』と思っているのだろう。先程の呟きは「僕を置いていかないで」になると思う。
マルケスくんの言葉に、フリストさんは激しくうなずいているけど、取り繕うよゆうなんて無いようだ。
「え??なんで??」
は???
って、え!?
お、置いてくの!?
独走するの!?
え!?
キョトンと目を丸くしながらもさらりと至極当然、というか、「なにを言ってるのだ?マルケスは」とでも言いたげに首を傾げるアルゴスくん。
そんな彼を見たマルケスくんのお目目はうるうると緩(ゆる)み、今にも泣き出しそうだ。
フリストさんは、両隣の方が肩に手を当て、宥めては居るものの卒倒寸前(そっとうすんぜん)だ。
でも、なんでってアルゴスくんはどういう意味で口にしたのかな。
「マルケスと俺は二人でムテキだろ??なんで、一人でいかなきゃなのさ」
「え??」
「あっ!!」
思わずあげてしまっただろう誰かの声は、まさしく私の心境と同じだった。
どうしてそんなことを!?と私と、おそらく気になって仕方が無かったのだろうフリストさんの疑問に図らずも答えてくれたのは、アルゴスくんだった。
そっか。
ああ。そっか。『なんで』は悪い意味で言ったんじゃなく、『どうして、一緒に居て当たり前なのにそんなこと聞くんだ?』の方だったんだ。
こぼれ落ちそうだったマルケスくんの涙も、意外な、いや、誰もが思っても見なかった返答だったせいか、いつのまにか引っ込んでいた。
「置いてくなら、おれより断然マルケスだろ!?」
「ぼく!??」
ん!?置いてくのが、マルケスくん??
いや、アルゴスくんの言葉は最後まで聞いていないと本当の意味が判らなくなる。
ついさっきの『なんで』が良い例だ。
「行儀悪くてごめんなさい」
ピョンッと椅子から飛び降りざまに言って、アルゴスくんはマルケスくんに近付いた。
対するマルケスくんも椅子から降りて、二人はぎゅっと正面から抱き締めあっていた。
その優しいハグはアルゴスくんからマルケスくんへ『大丈夫。怖くないよ』と言葉無く伝えているかのようだ。
フリストさんは「うん、うん」と声は出していないが、好好爺の見本のような笑顔を浮かべて重々しく頷いている。
「マルケスは俺をおバカだからって置いてくのも出来たのに、ずっとず~っと置いてかないだろ??」
「ぅ"ん!!」
狙ったわけではないだろうが私たちに背中を向けているような形になっているため、これが夜なら光の反射で鏡のようになっただろうが、残念ながら真っ昼間な現在、アルゴスくんの表情は見えない。
でも、二人の子供たちを始祖さまもリオさんも黙って、……だけれどもとても穏やかで優しい表情で見つめているため、フォレストもオーシャンの人間も二人に倣ったかのようにおとなしく見守っていた。
やっぱり、始祖さまはすごいな~。
彼を尊敬できると思うところは『遊ぶときは全力で、だけれども見守ると決めたら請われたら助言はするけど手は出さない』を言葉ではなく体で表していることだ。
命や心に傷を負いそうな時はもちろん即座に止めるだろう。
『良いことは良い。悪いことは悪い』
そう、はっきりと教えることが出来る始祖さま。実際にそういう場面でははっきりと「ダメだ」と子供たちに伝えていたし。
でも、それ以外は制止もせずに、アルゴスくんたちのやりたいようにやらせていた。
あ。もしかしたら、そういうことを学ぶためにリオさんはここに来た??
『習うより慣れろ』
昔から伝えられる言葉のままに。
なんだか、それがあってるような気もするけれど、当事者の気持ちをこちらが汲むことはあっても、勝手にはかってはまともな話は出来ない。
聞けば良いんだから、妄想はダメだよね。
心なしかキラキラした瞳でリオさんが始祖さまを見る眼差(まなざ)しから、私がそう感じたのかもしれないけれど。
「だからおれも置いてかない!!俺たちちびもふブラザーズはっ!!二人でムテキだからな!!」
「う"ん!!」
私がツラツラ考えている内にも、どんどん成長していくアルゴスくんとマルケスくんの姿はとても眩しい。
二人揃って「お行儀悪くて、ごめんなさい」をすれば、どこからともなく拍手が鳴り、……あ、フリストさんだ。
めちゃくちゃ良い表情で手を叩いてる。
拍手の渦とフリストさんの様子に対してかちょっぴり顔を赤くしながら席に着いた。
『謝ったけど、お詫(わ)びはどうしよう』と ばかりに私を見つめる子供たちに誰より早く解決法を提示したのはディーバさんだった。
「お二人とも、サンドイッチオススメを皆さんに教えてくれませんか?」
「俺たち?」
「二人で?」
「はい。その通りです。お二人はどうやって止めてしまった昼食のそれをごめんなさいしようかと思ってらっしゃるのでしょう?ですから、私も勝手に提案してみました」
「「はいっ!!」」
ウマイな~。
子供たちの自尊心を傷つけないためにも下手に出て、だけれども卑屈(ひくつ)にならないように言葉にしたディーバさんに、アルゴスくんたちのお顔はニッコニコで、テンションも明らかに上がっている。
そして、優しく暖かい雰囲気の中、アルゴスくんとマルケスくんの、『美味しいサンドイッチを皆で食べよう講座』が唐突(とうとつ)に開催されることとなった。
「このくにょんってしたのはクロあっサンです」
お??珍しい。
いつもは勝手に言葉を作ってしまうのはアルゴスくんだけれど、今回は違った。
クロワッサンとうまく発音できなかったマルケスくんを助けるためだろう、ディーバさんは彼に「クロワッサン」だと優しく補足していた。
「ウマイけど、おデブになる。おデブになるからウマイのかは判らんちん。ごめんなさい」
アルゴスくんが皆に向けて真面目な顔をしてお間抜けなことを言う。
だから、も、これ、ギャグなの??お腹痛い。
さっきまでのさもすれば重苦しい、ドシリアスな展開があったから、よけいに静けさのなかで響くお腹の音並みに面白い。
どちらともに笑ってはいけない、緊張感を保ち続けなければいけない場面だから余計に、なんだよね。
「どれもパンにはバターは入ってるかもだけど、これはスペシャルに入ってるから、食べすぎるとスペシャルおデブになるの。気を付けてね~」
す!!スペシャルおデブ!!
マルケスくんの追撃とすら言えるそれに肩を揺らしているのは私だけではない。
言うまでもなく、子供たち以外の全員の肩が小さく揺れている。中には我慢しているつもりではあるのだろうが、そこだけ地震が来ているかのように体を大きく揺らしている方も居る。
だけれども、誰も吹いてはいない。子供たちが真面目に言っているのだからと、大人たちは『笑ってはいけない』という謎の一体感に包まれている。
言いたいことは判るし、言ってることは間違っていない。
けど!!けれどね?
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