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答え合わせは昼食のあとで 3

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 どうやらうまくごまかせたようで、……というか皆さん、目の前のお皿に意識が集中していて、私も含めた他人にはほとんど目もくれていないようだ。
 とは言っても、隣あわせた人たちは小さい声だが、ほとんどが興奮気味に、アルゴスくんの直伝??と言って良いのかは判らないけれど、オーシャンの皆様にサンドイッチの存在を伝えたのはちびもふブラザーズだからヨシとしよう。
 って、シュリさん。
 シュリさんは私の視線に気付いてしまったのか、食事前だというのにお酒を飲んだように顔を真っ赤にして、激しい勢いで自分の腰元辺りで手を振ってくれている。
 恐らく誰にもばれていないと思っているのだろうが、両隣のランティスさんとマンティスさんにはもろバレで、二人ともに呆れた視線を送られていることにこれっぽっちも気付いていない。
 それより、嬉しくてたまらない、気付いてくれて嬉しいとばかりに、もう片方の手も振られ始めた。
 シュリさんは私に対してファン心理を抱いているってディーバさんが話してくれたけど、本当にそんな感じなんだな~と言葉通りに感心した。
 道端で、出会えるとは思っても見なかった憧れの存在にバッタリと出会い、それまでは色々と「出会うことが出来たら写真を撮って貰って、サインを貰って、思いを聞いて貰って……」などなどわりと具体的に予測していたはずなのに、リアルになった瞬間にどうして良いか判らなくなる。
 握手して貰った瞬間、どうすれば良いか判らなくなる。
 コンサートのファンサなどは「してくれたら良いな」と期待しながら行くから、何らかの心構えはあるのだけれど、こういう嬉しいハプニングには予告がない。
 だから余計に混乱してしまうんだろうけど、帰宅してから「ああすれば良かった、こうすれば良かった。つか、なんで、言えなかったのー!!」と頭を抱えてシャウトする。
 なんで詳しいかって??
 実際に大ファンの俳優さんとお酒の美味しいバーで出会って、ね!!
 怒らせてはいないようだけど、全く記憶がなくて、だから、まさか本当に彼が!!テレビでは「社交辞令は嫌いだ!!」を公言している彼がいつの間にかしていたらしい連絡交換のそれから電話をしてきてくれるとは思わずに相当パニクった。
「確かに◯月◯日にバーでご一緒させていただきました。それは事実です。ですが、お掛け間違いじゃないですか!?」
 そんな具合に聞きまくった。
 でも、そこが「信頼おける」と今ではまさかの「秘密の飲み友達」だ 。
 まぁそんなわけで、私は彼女の気持ちは痛いほど判る。
「お??シュリ、俺たちにメロメロだな」
 ん??
「そうだね。シュリ、僕たちのこと、大好きだね」
 んん??
 まさか!?
 にっこにこの二人は私ではなく、自分達に手を振ってくれていると、平和的勘違いをしているようだ。
「シュリ~。俺たちも好きだぞ~」
「僕たちも好きだよ~」
 子供だから許されるそれも大人は無理だ。それでも、口パクで「私もだよ~」と言ってくれたシュリさんに、アルゴスくんとマルケスくんのテンションは上がり、手に手を取り合って、ぴょんっとお尻ジャンプしているほどに嬉しそうだ。
 空気を読んでくれたシュリさんには後でお礼を言わなければ!!
 ふと、辺りを見回わせば、優しいのにどこか熱い、そんな空気が流れている。
「ん、ん。皆様にはご自分の手でお好きなものをお好きなパンに挟んで味わって貰おうとこのような形での提供に致しました。不完全な形での提供となりましたこと、お詫び致します。又、口にして具合が悪くなるものは無理せず残していただいて結構ですが、そうでないなら皿がカラになってからお代わりを求めてください」
 咳払いをして、視線を集めてからのディーバさんの説明に、目を輝かせて、だけれどもしたり顔で腕を組んで「うんうん」と頷いたのはアルゴスくんだ。
「そうだな。美味しいものは美味しく楽しく、大事に食べないとな!!不完全ってのはわからないけど、ディーバは楽しいと面白いとワクワクを全部一緒にしたってことだろ??」
「そうだね!!でも、無理はダメってことだよね??ママ」
 そうだ。
 アルゴスくんの言ったことはそのままこの場にいた人間への説明となったようだ。
 大人たちは「それはそうだ。無言の、いや、腹の探りあいの食事は正直、どこに入ったのか判らない」などと口にしあい、頷(うなず)きあっていた。
「そうだね。二人とも、大正解。無理して食べても美味しくないけど、作った方も無理しないで、美味しいな!!と食べてくれる方が嬉しいと思うしね」
「だよな!!」
「だよね」
「無理はダメだよな!!」
 腕を組んだまま、本人はいたって真面目に頷くアルゴスくんは、背伸びをしたいお年頃!!を体現しているようで控えめに言っても可愛い。
「不完全て言うのはそれを作るために足りないものがあったり、完成です!!って言えないことと思ってれば間違いではないかな?」
「は~。ありがとう。俺、今、不完全を習って賢(かしこ)くなった。マルケス、俺、大人??」
「ぇ!?」
 ん!?
 にっこにこしてるアルゴスくんはきっと、「難しい言葉を理解したから、大人に近付いた??」と聞いたつもりなのだろうが、問われたマルケスくんは小さく言葉をもらしてちびもふブラザーズの片割れを見ている。
 て!?え!?
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