207 / 269
答え合わせは昼食のあとで 3
しおりを挟む
どうやらうまくごまかせたようで、……というか皆さん、目の前のお皿に意識が集中していて、私も含めた他人にはほとんど目もくれていないようだ。
とは言っても、隣あわせた人たちは小さい声だが、ほとんどが興奮気味に、アルゴスくんの直伝??と言って良いのかは判らないけれど、オーシャンの皆様にサンドイッチの存在を伝えたのはちびもふブラザーズだからヨシとしよう。
って、シュリさん。
シュリさんは私の視線に気付いてしまったのか、食事前だというのにお酒を飲んだように顔を真っ赤にして、激しい勢いで自分の腰元辺りで手を振ってくれている。
恐らく誰にもばれていないと思っているのだろうが、両隣のランティスさんとマンティスさんにはもろバレで、二人ともに呆れた視線を送られていることにこれっぽっちも気付いていない。
それより、嬉しくてたまらない、気付いてくれて嬉しいとばかりに、もう片方の手も振られ始めた。
シュリさんは私に対してファン心理を抱いているってディーバさんが話してくれたけど、本当にそんな感じなんだな~と言葉通りに感心した。
道端で、出会えるとは思っても見なかった憧れの存在にバッタリと出会い、それまでは色々と「出会うことが出来たら写真を撮って貰って、サインを貰って、思いを聞いて貰って……」などなどわりと具体的に予測していたはずなのに、リアルになった瞬間にどうして良いか判らなくなる。
握手して貰った瞬間、どうすれば良いか判らなくなる。
コンサートのファンサなどは「してくれたら良いな」と期待しながら行くから、何らかの心構えはあるのだけれど、こういう嬉しいハプニングには予告がない。
だから余計に混乱してしまうんだろうけど、帰宅してから「ああすれば良かった、こうすれば良かった。つか、なんで、言えなかったのー!!」と頭を抱えてシャウトする。
なんで詳しいかって??
実際に大ファンの俳優さんとお酒の美味しいバーで出会って、ね!!
怒らせてはいないようだけど、全く記憶がなくて、だから、まさか本当に彼が!!テレビでは「社交辞令は嫌いだ!!」を公言している彼がいつの間にかしていたらしい連絡交換のそれから電話をしてきてくれるとは思わずに相当パニクった。
「確かに◯月◯日にバーでご一緒させていただきました。それは事実です。ですが、お掛け間違いじゃないですか!?」
そんな具合に聞きまくった。
でも、そこが「信頼おける」と今ではまさかの「秘密の飲み友達」だ 。
まぁそんなわけで、私は彼女の気持ちは痛いほど判る。
「お??シュリ、俺たちにメロメロだな」
ん??
「そうだね。シュリ、僕たちのこと、大好きだね」
んん??
まさか!?
にっこにこの二人は私ではなく、自分達に手を振ってくれていると、平和的勘違いをしているようだ。
「シュリ~。俺たちも好きだぞ~」
「僕たちも好きだよ~」
子供だから許されるそれも大人は無理だ。それでも、口パクで「私もだよ~」と言ってくれたシュリさんに、アルゴスくんとマルケスくんのテンションは上がり、手に手を取り合って、ぴょんっとお尻ジャンプしているほどに嬉しそうだ。
空気を読んでくれたシュリさんには後でお礼を言わなければ!!
ふと、辺りを見回わせば、優しいのにどこか熱い、そんな空気が流れている。
「ん、ん。皆様にはご自分の手でお好きなものをお好きなパンに挟んで味わって貰おうとこのような形での提供に致しました。不完全な形での提供となりましたこと、お詫び致します。又、口にして具合が悪くなるものは無理せず残していただいて結構ですが、そうでないなら皿がカラになってからお代わりを求めてください」
咳払いをして、視線を集めてからのディーバさんの説明に、目を輝かせて、だけれどもしたり顔で腕を組んで「うんうん」と頷いたのはアルゴスくんだ。
「そうだな。美味しいものは美味しく楽しく、大事に食べないとな!!不完全ってのはわからないけど、ディーバは楽しいと面白いとワクワクを全部一緒にしたってことだろ??」
「そうだね!!でも、無理はダメってことだよね??ママ」
そうだ。
アルゴスくんの言ったことはそのままこの場にいた人間への説明となったようだ。
大人たちは「それはそうだ。無言の、いや、腹の探りあいの食事は正直、どこに入ったのか判らない」などと口にしあい、頷(うなず)きあっていた。
「そうだね。二人とも、大正解。無理して食べても美味しくないけど、作った方も無理しないで、美味しいな!!と食べてくれる方が嬉しいと思うしね」
「だよな!!」
「だよね」
「無理はダメだよな!!」
腕を組んだまま、本人はいたって真面目に頷くアルゴスくんは、背伸びをしたいお年頃!!を体現しているようで控えめに言っても可愛い。
「不完全て言うのはそれを作るために足りないものがあったり、完成です!!って言えないことと思ってれば間違いではないかな?」
「は~。ありがとう。俺、今、不完全を習って賢(かしこ)くなった。マルケス、俺、大人??」
「ぇ!?」
ん!?
にっこにこしてるアルゴスくんはきっと、「難しい言葉を理解したから、大人に近付いた??」と聞いたつもりなのだろうが、問われたマルケスくんは小さく言葉をもらしてちびもふブラザーズの片割れを見ている。
て!?え!?
とは言っても、隣あわせた人たちは小さい声だが、ほとんどが興奮気味に、アルゴスくんの直伝??と言って良いのかは判らないけれど、オーシャンの皆様にサンドイッチの存在を伝えたのはちびもふブラザーズだからヨシとしよう。
って、シュリさん。
シュリさんは私の視線に気付いてしまったのか、食事前だというのにお酒を飲んだように顔を真っ赤にして、激しい勢いで自分の腰元辺りで手を振ってくれている。
恐らく誰にもばれていないと思っているのだろうが、両隣のランティスさんとマンティスさんにはもろバレで、二人ともに呆れた視線を送られていることにこれっぽっちも気付いていない。
それより、嬉しくてたまらない、気付いてくれて嬉しいとばかりに、もう片方の手も振られ始めた。
シュリさんは私に対してファン心理を抱いているってディーバさんが話してくれたけど、本当にそんな感じなんだな~と言葉通りに感心した。
道端で、出会えるとは思っても見なかった憧れの存在にバッタリと出会い、それまでは色々と「出会うことが出来たら写真を撮って貰って、サインを貰って、思いを聞いて貰って……」などなどわりと具体的に予測していたはずなのに、リアルになった瞬間にどうして良いか判らなくなる。
握手して貰った瞬間、どうすれば良いか判らなくなる。
コンサートのファンサなどは「してくれたら良いな」と期待しながら行くから、何らかの心構えはあるのだけれど、こういう嬉しいハプニングには予告がない。
だから余計に混乱してしまうんだろうけど、帰宅してから「ああすれば良かった、こうすれば良かった。つか、なんで、言えなかったのー!!」と頭を抱えてシャウトする。
なんで詳しいかって??
実際に大ファンの俳優さんとお酒の美味しいバーで出会って、ね!!
怒らせてはいないようだけど、全く記憶がなくて、だから、まさか本当に彼が!!テレビでは「社交辞令は嫌いだ!!」を公言している彼がいつの間にかしていたらしい連絡交換のそれから電話をしてきてくれるとは思わずに相当パニクった。
「確かに◯月◯日にバーでご一緒させていただきました。それは事実です。ですが、お掛け間違いじゃないですか!?」
そんな具合に聞きまくった。
でも、そこが「信頼おける」と今ではまさかの「秘密の飲み友達」だ 。
まぁそんなわけで、私は彼女の気持ちは痛いほど判る。
「お??シュリ、俺たちにメロメロだな」
ん??
「そうだね。シュリ、僕たちのこと、大好きだね」
んん??
まさか!?
にっこにこの二人は私ではなく、自分達に手を振ってくれていると、平和的勘違いをしているようだ。
「シュリ~。俺たちも好きだぞ~」
「僕たちも好きだよ~」
子供だから許されるそれも大人は無理だ。それでも、口パクで「私もだよ~」と言ってくれたシュリさんに、アルゴスくんとマルケスくんのテンションは上がり、手に手を取り合って、ぴょんっとお尻ジャンプしているほどに嬉しそうだ。
空気を読んでくれたシュリさんには後でお礼を言わなければ!!
ふと、辺りを見回わせば、優しいのにどこか熱い、そんな空気が流れている。
「ん、ん。皆様にはご自分の手でお好きなものをお好きなパンに挟んで味わって貰おうとこのような形での提供に致しました。不完全な形での提供となりましたこと、お詫び致します。又、口にして具合が悪くなるものは無理せず残していただいて結構ですが、そうでないなら皿がカラになってからお代わりを求めてください」
咳払いをして、視線を集めてからのディーバさんの説明に、目を輝かせて、だけれどもしたり顔で腕を組んで「うんうん」と頷いたのはアルゴスくんだ。
「そうだな。美味しいものは美味しく楽しく、大事に食べないとな!!不完全ってのはわからないけど、ディーバは楽しいと面白いとワクワクを全部一緒にしたってことだろ??」
「そうだね!!でも、無理はダメってことだよね??ママ」
そうだ。
アルゴスくんの言ったことはそのままこの場にいた人間への説明となったようだ。
大人たちは「それはそうだ。無言の、いや、腹の探りあいの食事は正直、どこに入ったのか判らない」などと口にしあい、頷(うなず)きあっていた。
「そうだね。二人とも、大正解。無理して食べても美味しくないけど、作った方も無理しないで、美味しいな!!と食べてくれる方が嬉しいと思うしね」
「だよな!!」
「だよね」
「無理はダメだよな!!」
腕を組んだまま、本人はいたって真面目に頷くアルゴスくんは、背伸びをしたいお年頃!!を体現しているようで控えめに言っても可愛い。
「不完全て言うのはそれを作るために足りないものがあったり、完成です!!って言えないことと思ってれば間違いではないかな?」
「は~。ありがとう。俺、今、不完全を習って賢(かしこ)くなった。マルケス、俺、大人??」
「ぇ!?」
ん!?
にっこにこしてるアルゴスくんはきっと、「難しい言葉を理解したから、大人に近付いた??」と聞いたつもりなのだろうが、問われたマルケスくんは小さく言葉をもらしてちびもふブラザーズの片割れを見ている。
て!?え!?
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる