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笑顔の為に 6

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 パンッと軽く手を叩いて王様が口を開いた。
「そちらの事情は全部ではないが理解したつもりだ。血生臭い歴史は残念ながらどの国にもあり、同じくかつてはうちにもあったと伝えられている。だが、始祖様と国民皆のおかげで、それを不祥することの無いように努力している」
「はい」
「そして、我々はこれからの優しい世界のために、お互いに努力しようと誓い合った。それも事実だ」
「はい」
「だから、フリスト。ゆっくりと互いで進んでいこう」
「はい」
『同じ夢を見て、同じ目標に向かってそれぞれの国に居ても努力する』
 それは言うのは簡単だけど、実行するのはとても難しい。
 だから、夢だ。
 だから、その難しい思いへ手を取り合って、意識をも共通にして進むのだ。
 ん。私が聞いて、とても困ったときの話をしよう。
 これは、ある農家さんが全く別の土地の作物を、同じ味に仕上げてほしいと要望された話だ。
 その方は、ご近所さんからお土産を渡される時に、「北海道に旅行に行ったけれど、そこで食べた◯◯という作物が美味しかったから種はゲットしてきたの。だから育ててもらえない?」と言われてしまったそうだ。
 少しでも生産業をかじったことがある人はお分かりだろうが、所変われば品変わる。
 そんな中でも、「特産品と呼ばれるものを別の土地で全く同じ味に仕上げることは不可能」なのだ。
 当然、言われた方は困ってしまい、「どう説明すれば角が立たないだろうか?」と私の祖母に相談に来ていた。
 その時、祖母も頭を抱えながら「根本を理解していないのだから、そこを正直に指摘しましょう」と答えていた。
「ここで食べる◯◯と、北海道で食べる◯◯は同じ◯◯なのに、味が違うでしょう??それは、気候も土壌も水も風土も、なにもかもが違うからなの。だから、残念だけど、育て上げても北海道の◯◯の味は出せないの」
 そう、説明したらどうかと祖母は言い、相談者もそのまま伝えたと言う。
「そしたらね!!納得してくれたし、次は一緒に行きましょうと誘われたの!!」
 後日、祖母に嬉しそうに話していたその人は、なにもしていない私にもお礼を言ってくれた上に、お手製のおはぎをくれた。
 この話のように、土台も風土も、考え方も国民性も習慣も、上げていけばきりがない状態で、両国で同じものを作り出そうとするにはどうしたら良いのか。
 『報告、連絡、相談の徹底に努め、意識の共有を図る』しかないのである。
 何故、出来上がったものが違うと不平不満をもらすのか。
 それは、知識が無いからだ。
 上の話のように、意識の共有を図り、擦り合わせて「全く同じ」ではなく、「違うけれど、それは個性」と認め合うことが、認識し合うことが重要なのだと理解する。
 要望を出している方は根本の考えが違うと判らないからこそ不満をもらすのだから、互いの考えを擦り合わせ、理解度を上げていけば、争いの種と呼ばれるものは減らすことは出来る。
 文句を言う前に、要望を出す前に、自分が手を出してつまずいたポイントの指示をあおぐ。又は理解する為に情報収集する。
 情報収集が物を言うとコトバはこれを指すのではないかと思う。
 寒い土地で売れているもの、例えばストーブを暖かい土地でそのまま持っていって売れるか?
 当然だが、欲しているものが違えば売れない。
 だから、売るためにどうすれば良いか考える。 
 売りたいものと売れるものの擦り合わせをはかるのだ。
 オーシャンの問題にはくちばしを挟むのは差し控え、なんの解決にもなっていないため、本国に戻れば、彼等は策略と謀略と疑心暗鬼の波に苛まれるだろう。
 だけど、今だけは夢を見ても良いじゃないかと思う。
 ……話がだいぶズレた。
 習慣も気候も土壌も何もかもが違う、なんなら世界すらも違う私がオーシャンに行っても、フォレストの、アルゴスくんとマルケスくんのように素敵な関係は結べないだろう。
 ましてや、あちらは「こども達を傀儡にして自分が頂点に立ちたい人間が居る可能性が高い」のだ。
 ノコノコ私が行っても、精神、身体、いろんな意味で始末されておしまいだ。
 だからこそ、ここでできる限りの知識の共有とすりあわせをする。
「優しい世界の実現の為に……」
 こぼれた言葉に、オーシャン、フォレストのみんなが笑ってくれる。
 本当であれば、こんな他国の秘密を知ったお返しとして、私がこちらに来た理由を言うべきなのかもしれない。
 正直『秘密は秘密としておくよりばらした方が突っ込まれたとしてもみんな知ってますがなにか??』とすっとぼけられるし良いと思っているからこそ、ここで明かしてしまいたい。
 だけども、『ここで独断で明かして、こども達の身に危険が差し迫ったら??』とイヤな考えも浮かぶ。
 ここに使者団として居る方々のことは信用に値すると思っている。
 オーシャンの始祖様なリオさん、そして、ここで起こった事象の全てを把握する始祖様がなにも言わないのだ。
 口出ししなくても良い。危険が及ぶことは無い。
 つまりはそういうことだろう。
 だから、今は明かさない。
 明かす時期はみんなで考えてからにする。
 外交カード??
 こんなグダグダな状況で、カードもへったくれも無い。
 や、確かに通常であれば、カードは多い方が良い。
良いけど、これだよ?? 
「ミーナ。可能であれば、オーシャンの始祖様である、彼の心境を聞いてもらえるか?」
「……期待はしないで下さいね??」
「はい!!」
 何故だか、フリストさんの顔が真っ白い長毛種のワンコに見えた。
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