197 / 269
笑顔の為に 6
しおりを挟む
パンッと軽く手を叩いて王様が口を開いた。
「そちらの事情は全部ではないが理解したつもりだ。血生臭い歴史は残念ながらどの国にもあり、同じくかつてはうちにもあったと伝えられている。だが、始祖様と国民皆のおかげで、それを不祥することの無いように努力している」
「はい」
「そして、我々はこれからの優しい世界のために、お互いに努力しようと誓い合った。それも事実だ」
「はい」
「だから、フリスト。ゆっくりと互いで進んでいこう」
「はい」
『同じ夢を見て、同じ目標に向かってそれぞれの国に居ても努力する』
それは言うのは簡単だけど、実行するのはとても難しい。
だから、夢だ。
だから、その難しい思いへ手を取り合って、意識をも共通にして進むのだ。
ん。私が聞いて、とても困ったときの話をしよう。
これは、ある農家さんが全く別の土地の作物を、同じ味に仕上げてほしいと要望された話だ。
その方は、ご近所さんからお土産を渡される時に、「北海道に旅行に行ったけれど、そこで食べた◯◯という作物が美味しかったから種はゲットしてきたの。だから育ててもらえない?」と言われてしまったそうだ。
少しでも生産業をかじったことがある人はお分かりだろうが、所変われば品変わる。
そんな中でも、「特産品と呼ばれるものを別の土地で全く同じ味に仕上げることは不可能」なのだ。
当然、言われた方は困ってしまい、「どう説明すれば角が立たないだろうか?」と私の祖母に相談に来ていた。
その時、祖母も頭を抱えながら「根本を理解していないのだから、そこを正直に指摘しましょう」と答えていた。
「ここで食べる◯◯と、北海道で食べる◯◯は同じ◯◯なのに、味が違うでしょう??それは、気候も土壌も水も風土も、なにもかもが違うからなの。だから、残念だけど、育て上げても北海道の◯◯の味は出せないの」
そう、説明したらどうかと祖母は言い、相談者もそのまま伝えたと言う。
「そしたらね!!納得してくれたし、次は一緒に行きましょうと誘われたの!!」
後日、祖母に嬉しそうに話していたその人は、なにもしていない私にもお礼を言ってくれた上に、お手製のおはぎをくれた。
この話のように、土台も風土も、考え方も国民性も習慣も、上げていけばきりがない状態で、両国で同じものを作り出そうとするにはどうしたら良いのか。
『報告、連絡、相談の徹底に努め、意識の共有を図る』しかないのである。
何故、出来上がったものが違うと不平不満をもらすのか。
それは、知識が無いからだ。
上の話のように、意識の共有を図り、擦り合わせて「全く同じ」ではなく、「違うけれど、それは個性」と認め合うことが、認識し合うことが重要なのだと理解する。
要望を出している方は根本の考えが違うと判らないからこそ不満をもらすのだから、互いの考えを擦り合わせ、理解度を上げていけば、争いの種と呼ばれるものは減らすことは出来る。
文句を言う前に、要望を出す前に、自分が手を出してつまずいたポイントの指示をあおぐ。又は理解する為に情報収集する。
情報収集が物を言うとコトバはこれを指すのではないかと思う。
寒い土地で売れているもの、例えばストーブを暖かい土地でそのまま持っていって売れるか?
当然だが、欲しているものが違えば売れない。
だから、売るためにどうすれば良いか考える。
売りたいものと売れるものの擦り合わせをはかるのだ。
オーシャンの問題にはくちばしを挟むのは差し控え、なんの解決にもなっていないため、本国に戻れば、彼等は策略と謀略と疑心暗鬼の波に苛まれるだろう。
だけど、今だけは夢を見ても良いじゃないかと思う。
……話がだいぶズレた。
習慣も気候も土壌も何もかもが違う、なんなら世界すらも違う私がオーシャンに行っても、フォレストの、アルゴスくんとマルケスくんのように素敵な関係は結べないだろう。
ましてや、あちらは「こども達を傀儡にして自分が頂点に立ちたい人間が居る可能性が高い」のだ。
ノコノコ私が行っても、精神、身体、いろんな意味で始末されておしまいだ。
だからこそ、ここでできる限りの知識の共有とすりあわせをする。
「優しい世界の実現の為に……」
こぼれた言葉に、オーシャン、フォレストのみんなが笑ってくれる。
本当であれば、こんな他国の秘密を知ったお返しとして、私がこちらに来た理由を言うべきなのかもしれない。
正直『秘密は秘密としておくよりばらした方が突っ込まれたとしてもみんな知ってますがなにか??』とすっとぼけられるし良いと思っているからこそ、ここで明かしてしまいたい。
だけども、『ここで独断で明かして、こども達の身に危険が差し迫ったら??』とイヤな考えも浮かぶ。
ここに使者団として居る方々のことは信用に値すると思っている。
オーシャンの始祖様なリオさん、そして、ここで起こった事象の全てを把握する始祖様がなにも言わないのだ。
口出ししなくても良い。危険が及ぶことは無い。
つまりはそういうことだろう。
だから、今は明かさない。
明かす時期はみんなで考えてからにする。
外交カード??
こんなグダグダな状況で、カードもへったくれも無い。
や、確かに通常であれば、カードは多い方が良い。
良いけど、これだよ??
「ミーナ。可能であれば、オーシャンの始祖様である、彼の心境を聞いてもらえるか?」
「……期待はしないで下さいね??」
「はい!!」
何故だか、フリストさんの顔が真っ白い長毛種のワンコに見えた。
「そちらの事情は全部ではないが理解したつもりだ。血生臭い歴史は残念ながらどの国にもあり、同じくかつてはうちにもあったと伝えられている。だが、始祖様と国民皆のおかげで、それを不祥することの無いように努力している」
「はい」
「そして、我々はこれからの優しい世界のために、お互いに努力しようと誓い合った。それも事実だ」
「はい」
「だから、フリスト。ゆっくりと互いで進んでいこう」
「はい」
『同じ夢を見て、同じ目標に向かってそれぞれの国に居ても努力する』
それは言うのは簡単だけど、実行するのはとても難しい。
だから、夢だ。
だから、その難しい思いへ手を取り合って、意識をも共通にして進むのだ。
ん。私が聞いて、とても困ったときの話をしよう。
これは、ある農家さんが全く別の土地の作物を、同じ味に仕上げてほしいと要望された話だ。
その方は、ご近所さんからお土産を渡される時に、「北海道に旅行に行ったけれど、そこで食べた◯◯という作物が美味しかったから種はゲットしてきたの。だから育ててもらえない?」と言われてしまったそうだ。
少しでも生産業をかじったことがある人はお分かりだろうが、所変われば品変わる。
そんな中でも、「特産品と呼ばれるものを別の土地で全く同じ味に仕上げることは不可能」なのだ。
当然、言われた方は困ってしまい、「どう説明すれば角が立たないだろうか?」と私の祖母に相談に来ていた。
その時、祖母も頭を抱えながら「根本を理解していないのだから、そこを正直に指摘しましょう」と答えていた。
「ここで食べる◯◯と、北海道で食べる◯◯は同じ◯◯なのに、味が違うでしょう??それは、気候も土壌も水も風土も、なにもかもが違うからなの。だから、残念だけど、育て上げても北海道の◯◯の味は出せないの」
そう、説明したらどうかと祖母は言い、相談者もそのまま伝えたと言う。
「そしたらね!!納得してくれたし、次は一緒に行きましょうと誘われたの!!」
後日、祖母に嬉しそうに話していたその人は、なにもしていない私にもお礼を言ってくれた上に、お手製のおはぎをくれた。
この話のように、土台も風土も、考え方も国民性も習慣も、上げていけばきりがない状態で、両国で同じものを作り出そうとするにはどうしたら良いのか。
『報告、連絡、相談の徹底に努め、意識の共有を図る』しかないのである。
何故、出来上がったものが違うと不平不満をもらすのか。
それは、知識が無いからだ。
上の話のように、意識の共有を図り、擦り合わせて「全く同じ」ではなく、「違うけれど、それは個性」と認め合うことが、認識し合うことが重要なのだと理解する。
要望を出している方は根本の考えが違うと判らないからこそ不満をもらすのだから、互いの考えを擦り合わせ、理解度を上げていけば、争いの種と呼ばれるものは減らすことは出来る。
文句を言う前に、要望を出す前に、自分が手を出してつまずいたポイントの指示をあおぐ。又は理解する為に情報収集する。
情報収集が物を言うとコトバはこれを指すのではないかと思う。
寒い土地で売れているもの、例えばストーブを暖かい土地でそのまま持っていって売れるか?
当然だが、欲しているものが違えば売れない。
だから、売るためにどうすれば良いか考える。
売りたいものと売れるものの擦り合わせをはかるのだ。
オーシャンの問題にはくちばしを挟むのは差し控え、なんの解決にもなっていないため、本国に戻れば、彼等は策略と謀略と疑心暗鬼の波に苛まれるだろう。
だけど、今だけは夢を見ても良いじゃないかと思う。
……話がだいぶズレた。
習慣も気候も土壌も何もかもが違う、なんなら世界すらも違う私がオーシャンに行っても、フォレストの、アルゴスくんとマルケスくんのように素敵な関係は結べないだろう。
ましてや、あちらは「こども達を傀儡にして自分が頂点に立ちたい人間が居る可能性が高い」のだ。
ノコノコ私が行っても、精神、身体、いろんな意味で始末されておしまいだ。
だからこそ、ここでできる限りの知識の共有とすりあわせをする。
「優しい世界の実現の為に……」
こぼれた言葉に、オーシャン、フォレストのみんなが笑ってくれる。
本当であれば、こんな他国の秘密を知ったお返しとして、私がこちらに来た理由を言うべきなのかもしれない。
正直『秘密は秘密としておくよりばらした方が突っ込まれたとしてもみんな知ってますがなにか??』とすっとぼけられるし良いと思っているからこそ、ここで明かしてしまいたい。
だけども、『ここで独断で明かして、こども達の身に危険が差し迫ったら??』とイヤな考えも浮かぶ。
ここに使者団として居る方々のことは信用に値すると思っている。
オーシャンの始祖様なリオさん、そして、ここで起こった事象の全てを把握する始祖様がなにも言わないのだ。
口出ししなくても良い。危険が及ぶことは無い。
つまりはそういうことだろう。
だから、今は明かさない。
明かす時期はみんなで考えてからにする。
外交カード??
こんなグダグダな状況で、カードもへったくれも無い。
や、確かに通常であれば、カードは多い方が良い。
良いけど、これだよ??
「ミーナ。可能であれば、オーシャンの始祖様である、彼の心境を聞いてもらえるか?」
「……期待はしないで下さいね??」
「はい!!」
何故だか、フリストさんの顔が真っ白い長毛種のワンコに見えた。
0
お気に入りに追加
433
あなたにおすすめの小説
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる