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笑顔のために 3

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「他国の方に申し訳ないのですが、ミーナとお呼びしても?」
「はい。もちろんです。私はただの教育係です。ですから、フリスト様もそのようにお使い下さい」
 『こども達の育成に、身分は関係無いですよ』と伝えたくて言えば、誰が見ても頷ける、表情を作っていない本当に柔らかい笑顔でフリストさんが「うんうん」とばかりに頷いてくれた。
「それは、我が国のこども達と……延いては世の中の幼子とアルゴス様とマルケス様を分け隔てなく教育していきたいと言う意味あいで捕(とら)えてよろしいですかな?」
「はい。その通りです。先ほどの陛下の言葉をお借りしますが、難しいこととは思いますが、全てのこども達の笑顔のために邁進(まいしん)していきたいのです」
 「み"、み"ーな"ざま"ぁっ!!」
 オーシャンの元誘拐犯四人組とディーバさんが、感極まった様子で私の名を呼んでいるが、もうその場のみんなは彼等を呆れたような表情で放置していた。
 だけれども、「うんざり」とかの負の視線というより、「感激屋さんなんだからもう~」といった、どちらかといえば好意的なそれだと思いとれる。
「何故、オトナがランとリーンの側にいないのか、でしたな?」
「はい。失礼な言い方とは思いますが、正直、幼い彼等に何かあった時にストッパーや教育するための人間がいるのが普通と思っていました。実際、今回のような案件も産み出しましたし……」
 わざと濁(にご)して言えば、フリストさんはこちらの「やらかしてしまったことへの謝罪は受けたし、これ以上はなにも言わない」という意図を察してくれたのか、小さく頷いてくれた。
「そうですな。今回の鏡事件は防げたはずのものでしたな。しかし……オトナを側におく。それをしたくても、怖くて出来ないのです」
 苦い、としか言い様の無い苦しげな表情は彼だけでなく、オーシャンの皆、全てがそんな苦々しい表情で、視線は下を向いていた。
 まさか……
 ここフォレストでもあったという『血で血を洗う歴史が現在もある!?』
 いや。それだと、女性を近づけなければ良い話で、男性どころか、全てのオトナを寄せない理由にはなり得ない。
 なら……、考えろかんがえろ。
 ぐるぐると絡まりそうになる思考の糸を解いて、今までの彼等の言動から仮説をたてる。
 オーシャン組もフォレスト組も、私の発言を待っているのか、もしくは「ジジイの話を……」と言っていたフリストさんの言葉を待っているのか、それとも、私が考えをまとめるのを見守ってくれているのか、誰も発言しない。
 だけども、それを良いことに私は深く深く考える。
 オトナを側におけない理由としてすぐに思い浮かぶのは、権力争い。
 オトナの勝手なそれで駒にされることを避けるため、こども達の側に誰もおかない。
 でも、普通の権力争いなら、こども達のそばに人をおけない理由になるか??
 フォレストの始祖様と同じ存在なリオさんが居るのに??
 いや、でも、彼とその血族の飛竜兄弟を怖がる人間が、アドバイスを求めに行けるか?
 罰ゲーム、というより、デスゲームのような心境におかれている状況で気軽に行ける人間はいないだろう。
 おけない理由。
 まさか!!
 男女関係無く、おけない理由。
 それは「こども達を洗脳状態にしてしまおうと企む人間が居た」としたら!?
 優しい笑顔で近付いて、オトナの都合の良いことだけを囁(ささや)いて、「だから、◯◯の言うことは信じるな。私の言うことが正しいんだ」と吹き込むオトナが居たとしたら?
 あくまでこれは私の想像でしかない。
 無いけれど、もしそれが合っていたとしたら、つじつまとしてはあう。
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