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優しい時間 9

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「預かってくれてありがとう」
「へへ~。どういたまして」
「お安いご用だよ!!」
 預かって貰っていた鏡を礼を言って受けとると、『えへん』と胸を張った、でも少し言い間違えたアルゴスくんと同じく少し誇らしげに笑うマルケスくんにメロメロにされたのは私だけでは無かったようで誤魔化すような声があちらこちらから聞こえていた。
 それはもとより、私は一つ気になっていることがあった。
 それは、結構な時間をランくんとリーンくんとお話ししているのに、鏡の向こうのオーシャンのオトナ達が誰も二人に声をかけていないこと。
 恐らく、アルゴスくんとマルケスくんの兄弟と同じくらいと思われる年齢なのに、だ。
 いくら兄弟二人とは言え、普通、子供たちの姿が見えなくなったら、探したり声をかけたりしないか??と思ったのだ。
 少なくとも、私は日本でも知人の子供たちにもしてきたから、自信をもって「声掛けや見守りはやる」と言える。
 それに、事故や事件に巻き込まれていたらどうしようと悪い方にも考える。
 なのに、あちらからの音はランくんとリーンくんの声だけ。
 さらに言うなら、誰も傍に居ないこの状況が日常なのか??と思ったのだ。
 魔法とか特殊な道具でも使っているのか??とも思ったけど……。
 うん。子供たちのお勉強が終わったら、フリストさんに聞いてみよう。
 他の家庭、国??の方針にとやかく言うのも、とは思うが、気になるし、私は出会った子供たち全員をへなちょこなオトナにはしたくないのだ。
「ランくん、リーンくん、あなた達は悪いことをしたら謝るという事をお勉強してきたから今、こうして謝れる。それはとっても素敵なこと!!」
「あ……」
「俺、出来てる?」
「「出来てる!!」」
 ポカンと口を開けてしまった二人に、アルゴスくんとマルケスくんは、笑顔付きで太鼓判を押した。
「やってないって嘘つくことも出来るのに、ランくんもリーンくんもそれをしなかった」
 言えば、ポカンとした表情でランくんとリーンくんは聞いてくれている。
「それは、きちんとお勉強してる良い子だから出来るんだよ。ね??フリストさん」
「そうだな。本当にお前らは良い子だ」
「「そうだよ!!」」
「あ、あり、う"う~」
 せっかく泣き止んでいたのに、私とフリストさん、アルゴスくんとマルケスくんの言葉が心を揺らしたようで、ランくんとリーンくんは二人で涙で顔はグシャグシャだし、うまく言えないそれも又、乱れていた。
「お、おで、……」
「うぅ~」
 子供たちは四人で視線を交わし、力強く一つ頷いた。
「俺たちはまだまだ子供です!!」
「だけど、へなちょこなオトナにはなりたくないです!!」
「だがらぁっ!!おっお勉ギョ、っうっ」
「おじぇでぐだざい!!」
アルゴスくんから始まった子供たちの決意表明は、私達オトナの胸を強くついた。
「勿"論"だあっ!!」
 感極まったのだろうフリストさんの言葉は、この場に居たオトナ達の総意だった。
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