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武術訓練のお時間 4
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大切な事なのに伝わらないなら、足りない言葉を足せば良い。
「ズルするとなんにも出来なくなるのは覚えてる?」
こくりと頷く子供達の瞳は雄弁だ。きっちりと「まさか、これもお勉強なの!?」と書かれている。
「お勉強だよ?ソルゴスさんは意地悪して言ったんじゃないの。アルゴス君とマルケス君が怪我をしないようにって考えて、なんでも楽チンを選ばないでコツコツお勉強をしていって欲しいなって思って、二人に嫌われる事も覚悟の上で、準備運動と走り込みをしなさいって言ってくれたの。意地悪じゃない証拠に、自分も走るって言ってくれたでしょ?」
じっと聴き入っていた子供達はこくんと頷いた。つい先程まで声を出しながら鍛練していた方々も動きを止めている。
「でも、アルゴス君もマルケス君もヘナチョコな大人になっても良いなら……」
「わ~っ!!頑張るっ!!俺達、走る!!今の無しっ!!」
「が、頑張る!!」
いたずら心で付け足した私の言葉を慌てて遮るアルゴス君はヘナチョコな大人になるのはよほど嫌だったようで片言になってしまっているし、マルケス君も吃ってしまっている。
ごめんね!!脅かし過ぎちゃったね。「良い子」と「ヘナチョコ」が両極端な魔法の言葉だってのは覚えたからね~。
子供達はチロリと上目遣いでソルゴスさんを伺うと、お互いの顔を見合わせて小さく頷いた。
「「ソルゴス、ごめんなさい。嫌いにならないで?」」
アルゴス君とマルケス君の言葉に、目を見開いたソルゴスさんはすぐに笑みを浮かべた。
「はい。もちろんです」
「「本当?」」
「はい。本当です」
微笑みながら頷いたソルゴスさんに安心したのかアルゴス君もマルケス君もホッとしたように笑顔を浮かべている。
「それから、お勉強を教えてくれる人と年上の人へのお返事は、はい、か、いいえ、だよ。言葉遣いもあるんだけど、それはゆっくり教えるからね?」
「「はい!!」」
「ソルゴスさんへ、なにか忘れ物無いかな?」
私の言葉に子供達は気をつけする。ちらりと三人で視線を交わす。
「「「よろしくお願いします!!」」」
ソルゴスさんに頭を下げた後に、私も、鍛練している方々に挨拶していなかったと思い至る。
子供達に偉そうに言ってる場合じゃない!!白い目で見られても良い!!挨拶しなきゃ!!
「ご挨拶が大変遅くなりまして申し訳ありません。私は水無月 楓と申します。どうかミーナとお呼び下さい。これからもお邪魔するかと思います。皆さん、よろしくお願いします」
本来であればコロッセオに足を踏み入れる前に挨拶をしなければいけなかった為、失った礼を少しでも回復させたい。出来るだけ沢山の方々に聞いてもらいたいと腹から出した声は中々に響いたと思う。
「「よろしくお願いします!!」」
アルゴス君とマルケス君に説明していた時から動きを止めて見入る鍛練していた方々に、自分達の挨拶を待っていると思ったのだろう子供達も続いた。
「全員、行進集合!!後、整列っ!!目標点、隊長!!」
ソルゴスさんの物ではない、だが、凛とした張りのある男性の声が響いた瞬間、フィールド上の人々が、武器を持った者は携帯し、持っていない者はそのままに、走らず、だが、速やかに、ザッザッと言う足音と共にソルゴスさんを目指して一斉に動き出す。
突然始まった演習に私もアルゴス君もマルケス君も目を真ん丸に見開いた。
「すっげえ~!!」
「凄い!!カッコイイ~!!」
「本当!!綺麗だね!!」
凄い!!凄~い!!カッコイイ~!!統率のとれた動きって本当、カッコイイ~!!
「ズルするとなんにも出来なくなるのは覚えてる?」
こくりと頷く子供達の瞳は雄弁だ。きっちりと「まさか、これもお勉強なの!?」と書かれている。
「お勉強だよ?ソルゴスさんは意地悪して言ったんじゃないの。アルゴス君とマルケス君が怪我をしないようにって考えて、なんでも楽チンを選ばないでコツコツお勉強をしていって欲しいなって思って、二人に嫌われる事も覚悟の上で、準備運動と走り込みをしなさいって言ってくれたの。意地悪じゃない証拠に、自分も走るって言ってくれたでしょ?」
じっと聴き入っていた子供達はこくんと頷いた。つい先程まで声を出しながら鍛練していた方々も動きを止めている。
「でも、アルゴス君もマルケス君もヘナチョコな大人になっても良いなら……」
「わ~っ!!頑張るっ!!俺達、走る!!今の無しっ!!」
「が、頑張る!!」
いたずら心で付け足した私の言葉を慌てて遮るアルゴス君はヘナチョコな大人になるのはよほど嫌だったようで片言になってしまっているし、マルケス君も吃ってしまっている。
ごめんね!!脅かし過ぎちゃったね。「良い子」と「ヘナチョコ」が両極端な魔法の言葉だってのは覚えたからね~。
子供達はチロリと上目遣いでソルゴスさんを伺うと、お互いの顔を見合わせて小さく頷いた。
「「ソルゴス、ごめんなさい。嫌いにならないで?」」
アルゴス君とマルケス君の言葉に、目を見開いたソルゴスさんはすぐに笑みを浮かべた。
「はい。もちろんです」
「「本当?」」
「はい。本当です」
微笑みながら頷いたソルゴスさんに安心したのかアルゴス君もマルケス君もホッとしたように笑顔を浮かべている。
「それから、お勉強を教えてくれる人と年上の人へのお返事は、はい、か、いいえ、だよ。言葉遣いもあるんだけど、それはゆっくり教えるからね?」
「「はい!!」」
「ソルゴスさんへ、なにか忘れ物無いかな?」
私の言葉に子供達は気をつけする。ちらりと三人で視線を交わす。
「「「よろしくお願いします!!」」」
ソルゴスさんに頭を下げた後に、私も、鍛練している方々に挨拶していなかったと思い至る。
子供達に偉そうに言ってる場合じゃない!!白い目で見られても良い!!挨拶しなきゃ!!
「ご挨拶が大変遅くなりまして申し訳ありません。私は水無月 楓と申します。どうかミーナとお呼び下さい。これからもお邪魔するかと思います。皆さん、よろしくお願いします」
本来であればコロッセオに足を踏み入れる前に挨拶をしなければいけなかった為、失った礼を少しでも回復させたい。出来るだけ沢山の方々に聞いてもらいたいと腹から出した声は中々に響いたと思う。
「「よろしくお願いします!!」」
アルゴス君とマルケス君に説明していた時から動きを止めて見入る鍛練していた方々に、自分達の挨拶を待っていると思ったのだろう子供達も続いた。
「全員、行進集合!!後、整列っ!!目標点、隊長!!」
ソルゴスさんの物ではない、だが、凛とした張りのある男性の声が響いた瞬間、フィールド上の人々が、武器を持った者は携帯し、持っていない者はそのままに、走らず、だが、速やかに、ザッザッと言う足音と共にソルゴスさんを目指して一斉に動き出す。
突然始まった演習に私もアルゴス君もマルケス君も目を真ん丸に見開いた。
「すっげえ~!!」
「凄い!!カッコイイ~!!」
「本当!!綺麗だね!!」
凄い!!凄~い!!カッコイイ~!!統率のとれた動きって本当、カッコイイ~!!
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