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あまいひととき 5
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アルゴス君とマルケス君が少し落ち着いてから、手を洗って中断していた作業に戻る。
何度も中断しているのに、文句も言わず怒鳴りもしない料理人さん達に本当に頭が下がる。お礼としては小さ過ぎるかもしれないが、感謝の気持ちを込めてドロップクッキーのレシピを渡したい。こちらの文字がどういったものかは解らないが、教わりながら自分で書きたいと思う。
アラビア文字みたいなのだったら、どうしよう。
「ミーナ嬢!!卵入れたら、真っ黄色になりましたが大丈夫ですかぃ!?」
「はい。大丈夫です。卵を混ぜ終わったなら、へらに持ち替えて小麦粉を二回に分けて……」
料理人さんに返答していると、ボウルに指を入れて卵入りバタークリームと化しているそれをアルゴス君が舐めた。目を輝かせるアルゴス君を真似てマルケス君もぺろり。
「旨いっ!!ママ、俺、このまま食べたい!!」
「すーってお口の中で溶けちゃうねぇ」
興奮したように叫ぶアルゴス君と、ほんわりと微笑むマルケス君は、とても可愛らしく癒される。癒されるのだが・・・・。
「それだけ食べちゃうと、クッキーは出来ないよ?皆でクッキー食べてる時に、アルゴス君はそれだけでガマン出来る?」
「大丈夫っ!!マルケスからもら……」
アルゴス君はチラリとマルケス君のボウルを伺い、元気よく言いかけたのだが、狙われたマルケス君も負けていなかった。
「あげないもんっ!!ディーバやソルゴスやじーじにもあげたいもん!!」
「ぇ~!?……じゃ、くっちーで良い」
ボウルを抱きしめて断言するマルケス君に対して、あひるちゃんのお口になったアルゴス君の姿に負の感情の無いクスクスと忍び笑いが聞こえる。
「粉は二回に分けて混ぜて良いんですか?」
「はい。へらで切るように混ぜて下さい。練ってしまうとせっかく含ませた空気が逃げて、固くしまった出来上がりになるので注意して下さい。一回目の粉を混ぜた後、二回目の粉を入れる前に刻んだクルミを入れます」
「すっげえ美味しいのにな~」
「あげないもんっ!!」
未練たっぷりにボウルを見つめるアルゴス君に、マルケス君は慌てたように言うと、自分のボウルを抱きしめた。そんな二人のほほえましいやりとりに自然と笑みが浮かぶ。
「今から粉を入れるから、混ぜ混ぜしてね?生の粉を食べるとお腹が痛くなっちゃうから、お口に入れちゃダメだよ?」
「「はーい!!」」
二人で元気よく返事した後に、アルゴス君が上目遣いで私を見上げてくる。
「ちょびっとなら良い?」
やっぱりかー!!やっぱり舐めたいか。アルゴス君。
「出来上がったクッキーも晩御飯もお腹痛くて食べれなくなっても良いなら……」
「なんも言ってないぞ!!混ぜ混ぜするから、粉ちょーだい!!」
私の言葉を慌てて遮って言うアルゴス君にあわせて、何も聞いていなかったふりをして、二人のボウルに粉を入れてやる。
「混ぜ終わりました。次はどうすれば良いですか?」
「鉄板にバターを満遍なく塗った後、粉をうすくふって下さい。出来たら、鉄板の上にスプーンで一口大に一つづつ、間隔をあけて、生地を落として下さい。スプーン二本を使って、一本は生地を掬い、もう一本で押しだしてやると楽に出来ます。そこまで出来たら後は焼くだけです」
料理人さんに説明するとアルゴス君もマルケス君も「早く次の粉を入れて!!」と催促してくる。
「早く焼こう!!くっちー食べたい!!」
「どんな味かな~」
ワクワクと期待に満ちた表情を見せる二人に笑みを零しながら作業を続けた。
そうだよね~♪早く食べたいよね~♪
全員が鉄板に生地を置き終えると案内された石窯スペースに驚いた。大の字に寝転んだ大人が並んで二人は余裕ある程に大きい窯が五台あったからだ。
なんだか、この石窯は子供の心を刺激しそうだ。
パンを焼くには弱いという現在の温度に安心して、10分から15分焼いて出来上がりだと告げる。
「アルゴス君、マルケス君と私のお約束!!石窯には絶対に隠れない!!入らない!!眠らない!!お約束してくれるかな~?」
「「はーい!!」」
子供は薄暗い所や狭い空間に入りたがるものだ。
妙な危機感にかられて無理矢理約束させた私を、料理人の皆さんがニコニコと笑ってみている。
「「でもなんで?」」
「そんなの決まってんじゃん!!俺たちが上手く隠れたお前らに気付かずに、アルゴスとマルケスの丸焼きを作らねーよーにだよ」
二人の疑問に私より早く答えたルッツォさんの言葉に震え上がって、ちょっぴり涙目になって「絶対に入りません」を誓ってくれたのは良かったのか悪かったのか。
何度も中断しているのに、文句も言わず怒鳴りもしない料理人さん達に本当に頭が下がる。お礼としては小さ過ぎるかもしれないが、感謝の気持ちを込めてドロップクッキーのレシピを渡したい。こちらの文字がどういったものかは解らないが、教わりながら自分で書きたいと思う。
アラビア文字みたいなのだったら、どうしよう。
「ミーナ嬢!!卵入れたら、真っ黄色になりましたが大丈夫ですかぃ!?」
「はい。大丈夫です。卵を混ぜ終わったなら、へらに持ち替えて小麦粉を二回に分けて……」
料理人さんに返答していると、ボウルに指を入れて卵入りバタークリームと化しているそれをアルゴス君が舐めた。目を輝かせるアルゴス君を真似てマルケス君もぺろり。
「旨いっ!!ママ、俺、このまま食べたい!!」
「すーってお口の中で溶けちゃうねぇ」
興奮したように叫ぶアルゴス君と、ほんわりと微笑むマルケス君は、とても可愛らしく癒される。癒されるのだが・・・・。
「それだけ食べちゃうと、クッキーは出来ないよ?皆でクッキー食べてる時に、アルゴス君はそれだけでガマン出来る?」
「大丈夫っ!!マルケスからもら……」
アルゴス君はチラリとマルケス君のボウルを伺い、元気よく言いかけたのだが、狙われたマルケス君も負けていなかった。
「あげないもんっ!!ディーバやソルゴスやじーじにもあげたいもん!!」
「ぇ~!?……じゃ、くっちーで良い」
ボウルを抱きしめて断言するマルケス君に対して、あひるちゃんのお口になったアルゴス君の姿に負の感情の無いクスクスと忍び笑いが聞こえる。
「粉は二回に分けて混ぜて良いんですか?」
「はい。へらで切るように混ぜて下さい。練ってしまうとせっかく含ませた空気が逃げて、固くしまった出来上がりになるので注意して下さい。一回目の粉を混ぜた後、二回目の粉を入れる前に刻んだクルミを入れます」
「すっげえ美味しいのにな~」
「あげないもんっ!!」
未練たっぷりにボウルを見つめるアルゴス君に、マルケス君は慌てたように言うと、自分のボウルを抱きしめた。そんな二人のほほえましいやりとりに自然と笑みが浮かぶ。
「今から粉を入れるから、混ぜ混ぜしてね?生の粉を食べるとお腹が痛くなっちゃうから、お口に入れちゃダメだよ?」
「「はーい!!」」
二人で元気よく返事した後に、アルゴス君が上目遣いで私を見上げてくる。
「ちょびっとなら良い?」
やっぱりかー!!やっぱり舐めたいか。アルゴス君。
「出来上がったクッキーも晩御飯もお腹痛くて食べれなくなっても良いなら……」
「なんも言ってないぞ!!混ぜ混ぜするから、粉ちょーだい!!」
私の言葉を慌てて遮って言うアルゴス君にあわせて、何も聞いていなかったふりをして、二人のボウルに粉を入れてやる。
「混ぜ終わりました。次はどうすれば良いですか?」
「鉄板にバターを満遍なく塗った後、粉をうすくふって下さい。出来たら、鉄板の上にスプーンで一口大に一つづつ、間隔をあけて、生地を落として下さい。スプーン二本を使って、一本は生地を掬い、もう一本で押しだしてやると楽に出来ます。そこまで出来たら後は焼くだけです」
料理人さんに説明するとアルゴス君もマルケス君も「早く次の粉を入れて!!」と催促してくる。
「早く焼こう!!くっちー食べたい!!」
「どんな味かな~」
ワクワクと期待に満ちた表情を見せる二人に笑みを零しながら作業を続けた。
そうだよね~♪早く食べたいよね~♪
全員が鉄板に生地を置き終えると案内された石窯スペースに驚いた。大の字に寝転んだ大人が並んで二人は余裕ある程に大きい窯が五台あったからだ。
なんだか、この石窯は子供の心を刺激しそうだ。
パンを焼くには弱いという現在の温度に安心して、10分から15分焼いて出来上がりだと告げる。
「アルゴス君、マルケス君と私のお約束!!石窯には絶対に隠れない!!入らない!!眠らない!!お約束してくれるかな~?」
「「はーい!!」」
子供は薄暗い所や狭い空間に入りたがるものだ。
妙な危機感にかられて無理矢理約束させた私を、料理人の皆さんがニコニコと笑ってみている。
「「でもなんで?」」
「そんなの決まってんじゃん!!俺たちが上手く隠れたお前らに気付かずに、アルゴスとマルケスの丸焼きを作らねーよーにだよ」
二人の疑問に私より早く答えたルッツォさんの言葉に震え上がって、ちょっぴり涙目になって「絶対に入りません」を誓ってくれたのは良かったのか悪かったのか。
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