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第二九話 思い出を形に残して

第二九話 八

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「これはこれでいいけどさ。六人一緒ってまだだよな」
「ええ、そうですね」
「なら六人バージョンも撮ってくんねえ?」
 慈乃が頷くと、ガザはにっかりと笑った。そして前列にアヅ、レヤ、フィオを並ばせ、後列にガザを真ん中に、左右にトゥナとソラルを並び立たせた。
「いくよー」
 ウタセの号令に合わせて、慈乃は写真を撮った。
「区別するわけじゃないけど、やっぱりこの五人はオレにとって特別だからな」
画像を確認しながら語るガザの横顔は嬉しそうにも寂しそうにも見えた。
(この冬が終わる頃には……)
 この前、男子を引き連れて街へ行った帰り道での会話が思い起こされる。慈乃は複雑なガザの心中を察した。しかし、だからこそいつものように憂いなく笑っていてほしいと思った。
ウタセも同じように思ったのだろう。彼は慈乃と目が合うと微笑んで、次いでガザに向き直った。
「せっかくだし、ガザも撮ってみる?」
 ガザは目を瞬かせたあと、快活な笑みを浮かべた。混じりけのない笑みに慈乃は内心ほっと息を吐く。
「やりぃ!」
「えー、ガザ兄ちゃんだけずるい!」
「レヤにはまだ早いかな。もう少し大きくなったらね」
「ちぇー」
 慈乃はガザにカメラを手渡すと簡単に使い方を説明した。心得たとばかりにガザが皆のもとへ戻ると、さっそくカメラを構えて撮影を始めた。慈乃とウタセは少し離れたところからその様子を見守っていた。
「どんな写真が撮れるんだろうねぇ」
 ウタセは愉しげに目を細めてガザ達を目で追っていた。慈乃もウタセをちらりと見上げてから、彼と同じように園庭の方へ視線を戻した。
 アヅは嬉々として撮られており、レヤとフィオはガザをからかうように園庭中を走り回っている。ソラルは撮られることにあまり乗り気ではないようだったが、トゥナに腕を引かれて一緒に写真に収まっていた。
 カメラを向けられて笑う彼らの姿も良いが、こうしたありのままの姿の彼らもまた良いと思う。慈乃は小さく笑った。
「きっとガザくんらしい明るくて楽しそうな写真が撮れると思います」
「そうだね。後で見るのが楽しみだよね」
「はい」
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