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第二六話 あたたかな晩秋
第二六話 六
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待っている間、退屈なのかウタセが話しかけてきた。
「それにしても、さっきはちょっとびっくりしたなぁ」
「さっき、ですか?」
慈乃が首を傾げると、ウタセは慈乃を見てにっこりと笑った。
「まさかシノからリンを花祭に誘うなんて思わなかったから」
「あ、そのことですか」
慈乃が初めて花祭に参加したのは夏のときだ。あのときはまだ今よりも感情表現が苦手で、笑うこともできずにいた。そんな慈乃にウタセは夏の花祭に行ってみようと誘ってくれた。初めての夏の花祭は慈乃にとっては何もかもが新鮮で眩しく感じられた。それをきっかけに変化したことはいくつかあったが、特に思い出深いのはやはり笑顔を取り戻せたことだ。それもあって慈乃にとって花祭とは大事なものという認識が強くなった。
リンドウにも何か発見や変化があればいいと思ったら、自然と言葉が出てきたのだった。
「私が経験した嬉しかったことや楽しかったことをリンくんに示すことで、彼が変わる一助になれたらいいと思ったのです」
ひとは自分にされたことしかできないと慈乃は思う。だからこそ慈乃の良い思い出を蘇らせることで、リンドウに色づいた世界の広さと美しさを教えたいと考えた。そしてその行為は慈乃を変えてくれたという恩に報いることだとも思った。
「ウタくんは最初に言ってましたよね。ウタくんを救ってくれた、その恩に報いたいから救いを求める手は取ることに決めていると。今ならその気持ちがよくわかります」
そしてそれが巡り廻って、自分のためになり、誰かのためになる。
「シノ……」
ウタセは呆然と呟いていたが、やがて柔らかな笑みを浮かべた。
「シノ、成長したね」
素直に頷くのは気恥ずかしいが、謙遜や否定はしたくなかった。慈乃ははにかんで答えた。
「そう、ですね。きっと家族のおかげです」
ここに来たばかりの頃は与えられるばかりだった。しかし、今は違う。与えられたものを誰かに分け与え、恩に報いたいと考えている自分がいた。
慈乃が優しい微笑みを浮かべると、ウタセは慈しむような微笑みを返した。
「それにしても、さっきはちょっとびっくりしたなぁ」
「さっき、ですか?」
慈乃が首を傾げると、ウタセは慈乃を見てにっこりと笑った。
「まさかシノからリンを花祭に誘うなんて思わなかったから」
「あ、そのことですか」
慈乃が初めて花祭に参加したのは夏のときだ。あのときはまだ今よりも感情表現が苦手で、笑うこともできずにいた。そんな慈乃にウタセは夏の花祭に行ってみようと誘ってくれた。初めての夏の花祭は慈乃にとっては何もかもが新鮮で眩しく感じられた。それをきっかけに変化したことはいくつかあったが、特に思い出深いのはやはり笑顔を取り戻せたことだ。それもあって慈乃にとって花祭とは大事なものという認識が強くなった。
リンドウにも何か発見や変化があればいいと思ったら、自然と言葉が出てきたのだった。
「私が経験した嬉しかったことや楽しかったことをリンくんに示すことで、彼が変わる一助になれたらいいと思ったのです」
ひとは自分にされたことしかできないと慈乃は思う。だからこそ慈乃の良い思い出を蘇らせることで、リンドウに色づいた世界の広さと美しさを教えたいと考えた。そしてその行為は慈乃を変えてくれたという恩に報いることだとも思った。
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そしてそれが巡り廻って、自分のためになり、誰かのためになる。
「シノ……」
ウタセは呆然と呟いていたが、やがて柔らかな笑みを浮かべた。
「シノ、成長したね」
素直に頷くのは気恥ずかしいが、謙遜や否定はしたくなかった。慈乃ははにかんで答えた。
「そう、ですね。きっと家族のおかげです」
ここに来たばかりの頃は与えられるばかりだった。しかし、今は違う。与えられたものを誰かに分け与え、恩に報いたいと考えている自分がいた。
慈乃が優しい微笑みを浮かべると、ウタセは慈しむような微笑みを返した。
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