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第一八話 蕾のリンドウ

第一八話 一一

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 ミトドリは昨日の報告と今後の予定を軽く話した後、「皆からは何かあるかい?」と尋ねた。これに手を挙げたのはニアだった。
「はい、ニア」
「リンのことなんだけど」
 それだけでニアの言いたいことを察したらしいミトドリはひとつ頷いた。
「皆の懸念はわかるさ。けれど、まだ三日目だろう?」
 そこでミトドリはにこりと温和な笑みを浮かべた。
「わたしはね、ここで彼を救いたいと思っているんだよ。今のような態度をとるのには原因がある。それをも乗り越えて、救われてほしい」
 ミトドリは順々に皆の顔を見渡した。ミトドリの言葉にあるものは経験してきた光景に重ね、ある者は自身の過去に重ねていた。慈乃も学び家に救われた者のひとりだから、ミトドリの言わんとしていることはわかった。
「……わかり、ます。ミトさんのおっしゃること」
 自分からはあまり話し出さない慈乃の発言に、視線が一斉に集まる。少し震えてはいたが、言葉は案外するりと出てきた。
「私も、この学び家で救われました。その恩に報いるためにも、彼のためにも、できることをしていきたいです……!」
「シノ……。ありがとう」
 ミトドリは柔らかく目を細めた。
 すると、慈乃に触発されたのかニアとウタセが元気を取り戻した。
「そうよね……! 向こうが挨拶してくれないなら、挨拶してくれるまでやり続けるだけ!」
「うん。時間がかかっても、いつか心を開いてくれればそれでいいんだ」
 ツクシとスギナも顔を見合わせて頷いていた。皆の様子を見て安心したミトドリは、くすりと吐息をもらして笑った。
「もちろん、君達に無理をしてほしいわけじゃあない。無視されれば傷つくだろうし、落ち込むだろう」
 ミーティング前のニアとウタセを思い出したのだろう。ミトドリは彼らの方をちらと見た。
「けれど、そんなときこそ家族に頼ってほしい。わたしも含めて職員も子ども達も、きっと力になってくれるだろうからね。……力を合わせて、解決していこう」
 いつの間にか増えていた大事な家族の顔を胸に描きながら、慈乃はしっかりと頷くのだった。
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