カモミールの福音 ～花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語～

第一八話 蕾のリンドウ

第一八話 一〇

　二日後、客間での朝礼会議は重苦しい空気で始まった。平時と変わらない顔をしているのはミトドリだけである。とりわけ朝から元気なはずのニアとウタセの落ち込みようといったらない。
「どうよ、ウタ……」
「挨拶すら返してもらえないよ……」
「あたしも」
　ふたりそろってため息を吐く。
「ミトさんの判断を疑いたいわけじゃねえけど、リンドウはうちに合ってないんじゃないか？」
　スギナは眉間のしわを深くしていた。その理由は寝不足だけではなさそうだ。
　ツクシも珍しく困り顔をしていた。その顔はスギナによく似ていた。
　慈乃はといえば、表情にこそ出ないものの心境としてはニア達と同じようなものだった。挨拶は返してもらえないし、おまけに何故か睨まれる。慈乃としては特に思い当たる節がなく、困惑するばかりだった。
　沈んだ空気を切り裂くように、ぱんっと手を打つ音が客間に響いた。
「はいはい。ミーティング始めるよ」
　何か言いたげにしていた皆だったが、黙ってミトドリの方を向いた。