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第一七話 夏の終わりに縁日を
第一七話 九
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丘には日陰がなく直射日光が降り注ぐので、皆の健康状態を観察しながらの道中だった。幸い誰もが元気なまま、街にたどり着く。そこで各班に分かれて目的の物を買うために解散した。
慈乃もまたサーヤとシキブから聞いた店を目指して、ヨルメイとアスキを連れ、歩を進めた。店は案外すぐに見つかり、小路に入るか入らないかといったところに構えられていた。そこまで小路に入っていないことと無事店が見つかったことに慈乃が内心安堵していると、アスキに袖を引かれた。ヨルメイが「入りましょう?」と慈乃を促す。
日陰にあるためにひんやりとした店内には数えきれないほどの調味料が置かれていた。砂糖や醤油といった日常生活で使うものもあったが、特に力を入れているらしくスパイスは珍しいものがいくつも取りそろえられていた。
独特の香りとともに出迎えられて、ヨルメイが不思議そうな顔をした。
「保健室みたいな匂いがしますね」
「そうですね。スパイスと生薬は共通しているものも多いと聞きますし、そのせいでしょうか」
目の前には『クローブ』と書かれた札をつけるビンがあった。これは生薬でいう『丁子』だ。その隣には『シナモン』、生薬名は『桂皮』が置かれている。
「クローブにシナモンですね」
慈乃の視線を追っていたヨルメイが呟いた。
「カルダモンとショウガがあればチャイができますね」
「よく知っていますね」
「ウタ兄さんに教えてもらったんです」
アスキが「あった」と聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言うと、レジ横を指さした。そこにはちょうど探していた三種類のシロップが置かれたいた。まるでこの店で購入することを予期していたかのようだと思っていると、奥から店員が現れた。
慈乃もまたサーヤとシキブから聞いた店を目指して、ヨルメイとアスキを連れ、歩を進めた。店は案外すぐに見つかり、小路に入るか入らないかといったところに構えられていた。そこまで小路に入っていないことと無事店が見つかったことに慈乃が内心安堵していると、アスキに袖を引かれた。ヨルメイが「入りましょう?」と慈乃を促す。
日陰にあるためにひんやりとした店内には数えきれないほどの調味料が置かれていた。砂糖や醤油といった日常生活で使うものもあったが、特に力を入れているらしくスパイスは珍しいものがいくつも取りそろえられていた。
独特の香りとともに出迎えられて、ヨルメイが不思議そうな顔をした。
「保健室みたいな匂いがしますね」
「そうですね。スパイスと生薬は共通しているものも多いと聞きますし、そのせいでしょうか」
目の前には『クローブ』と書かれた札をつけるビンがあった。これは生薬でいう『丁子』だ。その隣には『シナモン』、生薬名は『桂皮』が置かれている。
「クローブにシナモンですね」
慈乃の視線を追っていたヨルメイが呟いた。
「カルダモンとショウガがあればチャイができますね」
「よく知っていますね」
「ウタ兄さんに教えてもらったんです」
アスキが「あった」と聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言うと、レジ横を指さした。そこにはちょうど探していた三種類のシロップが置かれたいた。まるでこの店で購入することを予期していたかのようだと思っていると、奥から店員が現れた。
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