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第一六話 遠足は花々に満ちあふれて
第一六話 五
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大通りに出ると、路のそこかしこで売買される花に出迎えられた。慈乃達の住む三番街も花に溢れていると思っていたが、ここ一二番地はその比ではない。一二番地の家々に飾られているサフィニアやペチュニア、ゼラニウムやアイビーの他にも、サルビアやジニア、ポーチュラカなどの一二番地に訪れるだろうこれからが盛りの夏の花も路を彩る。
興味をひかれるままにゆっくりと歩き、時には立ち止まる慈乃にニアも歩調を合わせてくれている。
「あ、ジニアがありますよ」
ニアの花を見つけた慈乃が僅かに声を弾ませて振り返るのへ、ニアもまた嬉々として応じた。
「あら、ほんと。いろんな品種を扱ってるんだ」
慈乃達の視線の先ではニアの言う通り、様々な品種のジニアが売られていた。草丈が一メートルほどあるもの、八重咲きのもの、小ぶりで一重咲きのもの。花色も朱色や橙色、紅赤色など明るく鮮やかなものが目立つ。
ニアがたくさんの蕾をつけたジニアの一株に触れると、まるで魔法のようにわっと一斉に花開いた。
慈乃が目をまるくする一方で、一連の様子を見ていた店主の中年男性がおかしそうに笑いながらニアに声を掛けた。
「姉ちゃん、さてはジニアの花守だな?」
「あたり! せっかくだしこの株、買っていくわ」
「まいど!」
簡易包装された紅赤色の花をいくつも咲かせた苗を受け取って、ニアは慈乃の腕を引いた。
「時間は限られてるし、どんどん見て行こう。シノに見せたいところ、いっぱいあるんだから!」
「その、今のは……」
ニアについていきながら慈乃が戸惑いも露わに尋ねると、ニアはなんてことないように答えた。
「ああ、花を咲かせたこと? 元気かって訊いたら、元気だよって。たまにあるんだよね。花守の力ってやつ?」
ニアはからからと笑った。
興味をひかれるままにゆっくりと歩き、時には立ち止まる慈乃にニアも歩調を合わせてくれている。
「あ、ジニアがありますよ」
ニアの花を見つけた慈乃が僅かに声を弾ませて振り返るのへ、ニアもまた嬉々として応じた。
「あら、ほんと。いろんな品種を扱ってるんだ」
慈乃達の視線の先ではニアの言う通り、様々な品種のジニアが売られていた。草丈が一メートルほどあるもの、八重咲きのもの、小ぶりで一重咲きのもの。花色も朱色や橙色、紅赤色など明るく鮮やかなものが目立つ。
ニアがたくさんの蕾をつけたジニアの一株に触れると、まるで魔法のようにわっと一斉に花開いた。
慈乃が目をまるくする一方で、一連の様子を見ていた店主の中年男性がおかしそうに笑いながらニアに声を掛けた。
「姉ちゃん、さてはジニアの花守だな?」
「あたり! せっかくだしこの株、買っていくわ」
「まいど!」
簡易包装された紅赤色の花をいくつも咲かせた苗を受け取って、ニアは慈乃の腕を引いた。
「時間は限られてるし、どんどん見て行こう。シノに見せたいところ、いっぱいあるんだから!」
「その、今のは……」
ニアについていきながら慈乃が戸惑いも露わに尋ねると、ニアはなんてことないように答えた。
「ああ、花を咲かせたこと? 元気かって訊いたら、元気だよって。たまにあるんだよね。花守の力ってやつ?」
ニアはからからと笑った。
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