カモミールの福音 ～花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語～

第一六話 遠足は花々に満ちあふれて

第一六話 一

　フィオやライモの発案によって急遽夏休み間の行事として組み込まれた遠足。今日はその当日である。
　暑さは避けたいが寒いのは嫌だと夏が盛りのジニアの花守であるニアが意見し、現在秋なのは六番地あたりだがそこには春の遠足で行ったばかりだとスギナも難しい顔をして言った。ならば初夏の陽気に戻ってはどうかとウタセが発言し、一二番地に遠足に行くことが決まったのだった。
　急な予定にもかかわらず、今回の遠足も全員参加だった。北西に向かって歩く最中、元気な声が郊外の丘に広がる。
「じゅうにばんちってどんなところなの？」
　問われたスイセンは、手をつないでいるテオを見下ろして微笑んだ。
「一二番地は花の市が有名だよ。それから小路が多いから迷子にならないように気を付けないとね」
「はなのいち？」
「路いっぱいに花を並べて売り買いするんだ。いろんな花があってきれいなんだよ」
「へー！」