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第一五話 ひと夏の冒険

第一五話 四

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「それに、私、カミユと仲良かったんだよ」
「え? 母と、ですか?」
 見た目は少女と女性の中間くらいのフロリアだが、実年齢は慈乃の母と同じくらいらしい。店やひとなどの街の様子を観察しながら、フロリアは母との思い出話を聞かせてくれた。
 物心つくころには既に仲が良く、お忍びで街で遊ぶときは大抵カミユが一緒だったこと。カミユは困った顔をしながらも共に過ごす時間を楽しんでいてくれたこと。フロリアもまたカミユのことを心から大切な友人だと思っていたこと。
「だけど、突然カミユは姿を消してしまった」
「それは……門が開いたから、でしょうか」
 フロリアは静かに頷いた。
「当時、カミユの両親が不慮の事故で亡くなってしまっていて……」
 案じるような瞳が慈乃に注がれる。けれど、会ったこともない祖父母に実感が湧かなかった。痛ましいとは思うがそれ以外の感情はなく、まるで他人事のように遠い出来事に感じた。
「そうだよね。シノは会ったことないんだもんね」
 一つ深呼吸したフロリアは話を続けた。
「カミユは憔悴しきっていた。もしかしたら後を追いたいと思ってたのかもしれない。反対に頑張って生きなきゃって思ってたのかもしれないし、あるいは両方の感情を抱えてたのかもしれない。……今となっては、わからないけど」
 お昼時が近づくにつれ、街は賑わっていく。運河を走る小舟から陽気な歌声が届いた。
「そんな真っ直ぐな思いが同調してしまって、カミユは人間界へ渡ってしまった」
 それ以降、誰もカミユの消息はつかめなかったという。
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