カモミールの福音 ～花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語～

第一四話 輝く夏の始まりは

第一四話 四

　後ろ姿を見送って、慈乃はウルフィニへ振り向いた。
「ウルくんもあちらへ行きたくなったらいつでも行ってくださいね。私も付き合いますから……といってもプールサイドまでですが」
「うん、わかった」
　ウルフィニは再び小枝を手に取ると絵の続きを描きだした。慈乃も近くに落ちていた枝で絵を書き添える。そうしていると小さな動物園が出来上がった。
「ウルくんは絵が上手ですね」
　ウルフィニの描いた絵は、慈乃が教えた犬や猫、ライオンなどをよく再現していた。
「これがわんわんで、こっちはうさぎさん」
「こっちはきつねさんですね」
「そうだよ」
　ウルフィニは得意げに微笑むと、慈乃が描いた絵を真似して書き始めた。
「これは……ぞうさん」
「そうですよ」
　しばらくそうして地面に絵を描いていると、メリルとテオがやって来た。
「シノお姉ちゃん、ウルちゃん」
「いっしょにあそぼうよ」
　慈乃とウルフィニは顔を見合わせた。今度はウルフィニも頷いたので、四人揃って木桶のプールへ向かう。