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第一一話 雨の休日

第一一話 一二

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 遊戯室に残って雑談を交わしていたトゥナとソラルのもとに、ふらりとガザがやってきた。その後ろにはカルリア、クルル、スイセン、ツクシという珍しい取り合わせの顔ぶれが揃っている。しかしそれ以上に、ツクシ以外は皆顔色が優れないのが気になった。
「なんですか、負のオーラをまとって」
 ソラルが後退りながら問うと、ガザはよく聞いてくれましたと身を乗り出し、ついでにトゥナとソラルの肩を両腕で抱いた。
「さっきまでこのメンバーで新しいすごろくやってたんだけどさ、やばかったんだよ」
「ガザ兄がやばいっていうことからも、年長組が気分悪そうにしてることからも、相当なことがあったんだろうなとは思うよ」
「やだな~、やばいなんて~。ちょっと張り切り過ぎてできた産物だっていったじゃ~ん」
 肩を組む三人の正面にツクシが回り込む。ガザはぶんぶんと頭を振った。
「深夜テンションのツクシが、寝不足で不機嫌なスギナを巻き込んで作った地獄のすごろくだろ!」
 ガザの背後からも抗議の声があがる。
「そうよ。そうだって知ってたらやらなかったのに」
「もう、ほんと、えぐすぎた……」
「犠牲がぼく達だけで済んで良かったと、そう割り切りましょう……」
「も~、クルルちゃんたちまでおおげさなんだから~」
 ツクシただひとりが何事もなかったかのように笑っている。
「すごろく第一号は序の口だったんだ……! だからお前ら……」
 ガザは唐突にトゥナとソラルを解放すると、そのまま空いた手で背を押した。その先には笑顔のツクシがいる。嫌な予感がした。
「ちょっとやってこい!」
「ちょっ、うそでしょ⁉」
「どうしてそうなるんですか!」
「わ~、遊んでくれるの~? そんじゃあ、レッツゴ~」
 すかさずふたりを捕まえたツクシは来た方向を戻る。ガザは高笑いをして、その後をついていく。
「お前らだけ平和に遊んでたとか許せねえ」
「知らないよ! ただの八つ当たりだよね、それ!」
「しかも決して平和だけではありませんでしたよ!」
 残された三人は、その後ろ姿を見送った。
「結局、ガザくんはあのふたりと遊びたかったんでしょうね」
 スイセンがくすりと微笑んだ。対して、カルリアは眉間にしわを寄せる。
「わざわざ自分もあのすごろくをもう一回やるの? 男子の考えることってよくわかんない」
「今回ばかりはさすがにトゥナとソラルに同情するわ……」
 クルルは憐憫をこめた目で、彼らが向かった方向を眺める。視線の先ではツクシ、ガザ、トゥナ、ソラルの四人がすごろくを囲むように座ったところだった。遠目からでもすごろくを見たトゥナとソラルの顔が青ざめたのがわかった。
 三人はすごろくから目を逸らした。巻き込まれたくないので助けに行こうとは誰も口にしなかった。代わりに「お昼ご飯の手伝いでもしましょうか」とスイセンが提案した。
「いつもあのふたりでどうにかしてるのに、今さら手伝いに行く必要ってあるかしら?」
「行くだけ行ってみない?」
「……まあ、別に、断固反対とは言わないけど」
「なら、早いうちに向かいましょうか」

 とある梅雨の日の、とある午前中の出来事。
 今日の学び家も笑顔と活気に満ち溢れていた。
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