上 下
45 / 454
第七話 運動会の応援へ

第七話 三

しおりを挟む
 そうこうしているうちに次のプログラムに移っていた。
「つぎはなにするの?」
 メリルに腕をつつかれて、慈乃は傍に置いてあったプログラム用紙を読み上げた。
「えっと……、徒競走ですね」
「ときょうそう?」
「みんなで走って速い人を決めるんです」
「サーヤお姉ちゃんははしるのはやいよ。ガザお兄ちゃんも」
「一番になれるといいですよね」
「うん! メリル、おうえんする!」
 メリルは両手に持った紅白の小さな旗を振った。
 スタート合図の笛の音が高らかに響く。低学年から始まっていく徒競走では、学び家の面々でいうとヨルメイとアスキから始まった。ふたりとも一生懸命に走っていた。
 次にアヅとライモで、アヅは一位で嬉しそうにしていて、ライモは僅差で二位だったので悔しそうにしていた。
 その次はソラルだったが、体育系は苦手な彼は運動会自体乗り気でない。一週間前からぶつぶつ文句を言っていたソラルは、今日も今日とてやる気がない。
「覇気がないね~、ソラくん」
 持ってきたおやつのせんべいをつまみながら、ツクシはまるっきり他人事のように言う。
 レヤとフィオがすっくと立ちあがった。
「よし! オレらが応援してやるか!」
「おう!」
「あたしもあたしも!」
 ニアの声援に続くようにレヤとフィオも「頑張れー!」と叫ぶ。
 ソラルは名前こそ呼ばれなかったものの、その声にはっとしたようにこちらを見た。顔をしかめる姿は容易に想像できたが、怯んだようにも見える。
 着順は五人中三位だった。
「ソラルにしてはよく耐えたな」
 スギナはフユに編み込みをぺたぺた触られながらも、ソラルのことはしっかり見ていたようだ。
「なんだかんだいって期待に応えようとするからね、あの子」
 得意げに言ったニアは、お茶で喉を潤した。
 次の学年の番では、サーヤ、シキブ、ヒイラギが走った。
 サーヤは言わずもがな、ヒイラギもなかなかの俊足で、ふたりとも大差をつけて一位だった。シキブは四位の子からかなり遅れてゴールした。それでも本人はやりきった表情をしていた。
 次はスイセン。なんでも器用にこなす彼らしく、徒競走でもやはり一位だった。
 クルルもなかなかに速かったが惜しくも二位。トゥナは同級生からの声援とも野次ともいえる声に送り出されて、一位をとっていた。
 タムは笛が鳴っても数秒、ぼーっと突っ立ていたが、思い出したようにのろのろと走り出した。先にゴールしていた友人が笑顔で迎えてくれていた。
 放送席で実況をしていたカルリアもこのときばかりはテント下から出て、徒競走に参加した。接戦の末、三位だった。ガザは「団長負けるなー!」「負けたらジュースおごりなー」「しょうがないからアイスでもいいぞ!」との声に「負けねーし、おごらねーよ!」とツッコミながら、スタートラインについた。結果は圧倒的な速さで一位だった。周りからからかい混じりの文句の声が上がったが、ガザも一緒になって大笑いしていた。
「いいねぇ、青春って感じで」
「ぼくもはやく、がくしゃにいきたいなぁ」
「テオは再来年だよね。それまで楽しみにしてようね」
「うん」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

キャラ交換で大商人を目指します

杵築しゅん
ファンタジー
捨て子のアコルは、元Aランク冒険者の両親にスパルタ式で育てられ、少しばかり常識外れに育ってしまった。9歳で父を亡くし商団で働くことになり、早く商売を覚えて一人前になろうと頑張る。母親の言い付けで、自分の本当の力を隠し、別人格のキャラで地味に生きていく。が、しかし、何故かぽろぽろと地が出てしまい苦労する。天才的頭脳と魔法の力で、こっそりのはずが大胆に、アコルは成り上がっていく。そして王立高学院で、運命の出会いをしてしまう。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。 本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。 俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。 どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。 だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。 ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。 かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。 当然のようにパーティは壊滅状態。 戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。 俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ! === 【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

処理中です...