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第七話 運動会の応援へ
第七話 三
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そうこうしているうちに次のプログラムに移っていた。
「つぎはなにするの?」
メリルに腕をつつかれて、慈乃は傍に置いてあったプログラム用紙を読み上げた。
「えっと……、徒競走ですね」
「ときょうそう?」
「みんなで走って速い人を決めるんです」
「サーヤお姉ちゃんははしるのはやいよ。ガザお兄ちゃんも」
「一番になれるといいですよね」
「うん! メリル、おうえんする!」
メリルは両手に持った紅白の小さな旗を振った。
スタート合図の笛の音が高らかに響く。低学年から始まっていく徒競走では、学び家の面々でいうとヨルメイとアスキから始まった。ふたりとも一生懸命に走っていた。
次にアヅとライモで、アヅは一位で嬉しそうにしていて、ライモは僅差で二位だったので悔しそうにしていた。
その次はソラルだったが、体育系は苦手な彼は運動会自体乗り気でない。一週間前からぶつぶつ文句を言っていたソラルは、今日も今日とてやる気がない。
「覇気がないね~、ソラくん」
持ってきたおやつのせんべいをつまみながら、ツクシはまるっきり他人事のように言う。
レヤとフィオがすっくと立ちあがった。
「よし! オレらが応援してやるか!」
「おう!」
「あたしもあたしも!」
ニアの声援に続くようにレヤとフィオも「頑張れー!」と叫ぶ。
ソラルは名前こそ呼ばれなかったものの、その声にはっとしたようにこちらを見た。顔をしかめる姿は容易に想像できたが、怯んだようにも見える。
着順は五人中三位だった。
「ソラルにしてはよく耐えたな」
スギナはフユに編み込みをぺたぺた触られながらも、ソラルのことはしっかり見ていたようだ。
「なんだかんだいって期待に応えようとするからね、あの子」
得意げに言ったニアは、お茶で喉を潤した。
次の学年の番では、サーヤ、シキブ、ヒイラギが走った。
サーヤは言わずもがな、ヒイラギもなかなかの俊足で、ふたりとも大差をつけて一位だった。シキブは四位の子からかなり遅れてゴールした。それでも本人はやりきった表情をしていた。
次はスイセン。なんでも器用にこなす彼らしく、徒競走でもやはり一位だった。
クルルもなかなかに速かったが惜しくも二位。トゥナは同級生からの声援とも野次ともいえる声に送り出されて、一位をとっていた。
タムは笛が鳴っても数秒、ぼーっと突っ立ていたが、思い出したようにのろのろと走り出した。先にゴールしていた友人が笑顔で迎えてくれていた。
放送席で実況をしていたカルリアもこのときばかりはテント下から出て、徒競走に参加した。接戦の末、三位だった。ガザは「団長負けるなー!」「負けたらジュースおごりなー」「しょうがないからアイスでもいいぞ!」との声に「負けねーし、おごらねーよ!」とツッコミながら、スタートラインについた。結果は圧倒的な速さで一位だった。周りからからかい混じりの文句の声が上がったが、ガザも一緒になって大笑いしていた。
「いいねぇ、青春って感じで」
「ぼくもはやく、がくしゃにいきたいなぁ」
「テオは再来年だよね。それまで楽しみにしてようね」
「うん」
「つぎはなにするの?」
メリルに腕をつつかれて、慈乃は傍に置いてあったプログラム用紙を読み上げた。
「えっと……、徒競走ですね」
「ときょうそう?」
「みんなで走って速い人を決めるんです」
「サーヤお姉ちゃんははしるのはやいよ。ガザお兄ちゃんも」
「一番になれるといいですよね」
「うん! メリル、おうえんする!」
メリルは両手に持った紅白の小さな旗を振った。
スタート合図の笛の音が高らかに響く。低学年から始まっていく徒競走では、学び家の面々でいうとヨルメイとアスキから始まった。ふたりとも一生懸命に走っていた。
次にアヅとライモで、アヅは一位で嬉しそうにしていて、ライモは僅差で二位だったので悔しそうにしていた。
その次はソラルだったが、体育系は苦手な彼は運動会自体乗り気でない。一週間前からぶつぶつ文句を言っていたソラルは、今日も今日とてやる気がない。
「覇気がないね~、ソラくん」
持ってきたおやつのせんべいをつまみながら、ツクシはまるっきり他人事のように言う。
レヤとフィオがすっくと立ちあがった。
「よし! オレらが応援してやるか!」
「おう!」
「あたしもあたしも!」
ニアの声援に続くようにレヤとフィオも「頑張れー!」と叫ぶ。
ソラルは名前こそ呼ばれなかったものの、その声にはっとしたようにこちらを見た。顔をしかめる姿は容易に想像できたが、怯んだようにも見える。
着順は五人中三位だった。
「ソラルにしてはよく耐えたな」
スギナはフユに編み込みをぺたぺた触られながらも、ソラルのことはしっかり見ていたようだ。
「なんだかんだいって期待に応えようとするからね、あの子」
得意げに言ったニアは、お茶で喉を潤した。
次の学年の番では、サーヤ、シキブ、ヒイラギが走った。
サーヤは言わずもがな、ヒイラギもなかなかの俊足で、ふたりとも大差をつけて一位だった。シキブは四位の子からかなり遅れてゴールした。それでも本人はやりきった表情をしていた。
次はスイセン。なんでも器用にこなす彼らしく、徒競走でもやはり一位だった。
クルルもなかなかに速かったが惜しくも二位。トゥナは同級生からの声援とも野次ともいえる声に送り出されて、一位をとっていた。
タムは笛が鳴っても数秒、ぼーっと突っ立ていたが、思い出したようにのろのろと走り出した。先にゴールしていた友人が笑顔で迎えてくれていた。
放送席で実況をしていたカルリアもこのときばかりはテント下から出て、徒競走に参加した。接戦の末、三位だった。ガザは「団長負けるなー!」「負けたらジュースおごりなー」「しょうがないからアイスでもいいぞ!」との声に「負けねーし、おごらねーよ!」とツッコミながら、スタートラインについた。結果は圧倒的な速さで一位だった。周りからからかい混じりの文句の声が上がったが、ガザも一緒になって大笑いしていた。
「いいねぇ、青春って感じで」
「ぼくもはやく、がくしゃにいきたいなぁ」
「テオは再来年だよね。それまで楽しみにしてようね」
「うん」
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