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第六話 優しい昔話
第六話 七
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買い物が終わって、学び家に帰りつくとちょうどお昼時だった。
弁当の準備の傍ら、ニアは忙しく昼食を作っていた。買ってきた食材をさっと片付けて、慈乃はすかさずニアと作業を分担した。
「さすがシノ。助かるわー」
「いえ、そんな……。お弁当作りは、進みましたか?」
お互いに手を止めることなく、会話を続ける。
「和え物は大体作った。残りはは下味つけたり、煮物作ったりって感じ」
「午後から、私もやりますね」
「うん、よろしく!」
そこへ、食堂と厨房をつなぐ出入り口からツクシがひょっこり顔を覗かせた。
「ええ~。シノちゃん、今日も一緒に遊んでくれないの~?」
その後ろでは、マリカを抱いたスギナがじっとりとした目でツクシを冷ややかに見つめている。
「楽したいからって、シノを巻き込むなよな」
「それだけじゃないよ~。シノちゃんいないとみんな寂しそうだし~、ボクもつまんな~い」
ツクシが頬を膨らませる。それをマリカが指で押すと、頬の風船はしぼんだ。
「シノは明日まで借りるからダメー。ウタが帰ってきたでしょ。あの子と遊べばいいじゃん」
皿に料理を盛りつけながら、ニアはちらりとツクシを見た。
「今日はシノちゃんの気分なの~」
「どんな気分だよ……」
「ウタが聞いたら落ち込みそう」
慈乃もなんとも言えずに、料理を盛り付けることに集中するふりをした。
それから数分後にウタセも食堂にやって来た。
「これ運んでいいの?」
「いいよー」
そこでツクシがウタセの袖を引く。
「ん? どうしたの、ツクシ?」
「ウタくんは、今日の午後ヒマ~?」
「暇……ではないけど、急ぎの用事でもないよ。それが?」
ツクシはその返事に二度、大きく首を縦に振った。
「ボクは今、ウタくんの気分になったので~、午後はボク達と遊ぼうね~」
「い、いいよ……?」
前半は何を言っているのかいまいちわからないようだったが、用件はわかったようでウタセは戸惑いながらも了承していた。
「調子のいい奴……」
慈乃とニアにだけ聞こえる声で、スギナがぼそっと呟いた。
弁当の準備の傍ら、ニアは忙しく昼食を作っていた。買ってきた食材をさっと片付けて、慈乃はすかさずニアと作業を分担した。
「さすがシノ。助かるわー」
「いえ、そんな……。お弁当作りは、進みましたか?」
お互いに手を止めることなく、会話を続ける。
「和え物は大体作った。残りはは下味つけたり、煮物作ったりって感じ」
「午後から、私もやりますね」
「うん、よろしく!」
そこへ、食堂と厨房をつなぐ出入り口からツクシがひょっこり顔を覗かせた。
「ええ~。シノちゃん、今日も一緒に遊んでくれないの~?」
その後ろでは、マリカを抱いたスギナがじっとりとした目でツクシを冷ややかに見つめている。
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ツクシが頬を膨らませる。それをマリカが指で押すと、頬の風船はしぼんだ。
「シノは明日まで借りるからダメー。ウタが帰ってきたでしょ。あの子と遊べばいいじゃん」
皿に料理を盛りつけながら、ニアはちらりとツクシを見た。
「今日はシノちゃんの気分なの~」
「どんな気分だよ……」
「ウタが聞いたら落ち込みそう」
慈乃もなんとも言えずに、料理を盛り付けることに集中するふりをした。
それから数分後にウタセも食堂にやって来た。
「これ運んでいいの?」
「いいよー」
そこでツクシがウタセの袖を引く。
「ん? どうしたの、ツクシ?」
「ウタくんは、今日の午後ヒマ~?」
「暇……ではないけど、急ぎの用事でもないよ。それが?」
ツクシはその返事に二度、大きく首を縦に振った。
「ボクは今、ウタくんの気分になったので~、午後はボク達と遊ぼうね~」
「い、いいよ……?」
前半は何を言っているのかいまいちわからないようだったが、用件はわかったようでウタセは戸惑いながらも了承していた。
「調子のいい奴……」
慈乃とニアにだけ聞こえる声で、スギナがぼそっと呟いた。
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