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第四話 休日の触れ合い
第四話 六
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「あ、だったら簡単に見た目を変えない?」
手を打ったウタセは、立ち上がると慈乃の背後に回った。
「あー、なるほどな」
得心がいったガザはひとり頷く。
ソラルも察したようだったが、やや苦い顔をしていた。
「ウタさんだから許されるものの……」
「え? なんか言った?」
「いいえ。トゥナさんには真似できないと思っただけですよ」
心底不思議そうなウタセに対して、ソラルは涼しい顔をしていた。
「シノ、ちょっと髪貸してね」
「え」
慈乃が慌てているのも気に留めず、ウタセは言うが早いか慈乃の髪をいじりだす。
「あ、昨日の髪紐使ってくれてるんだね。嬉しいなぁ」
「あのっ……」
「シノって髪おろしてばっかりだから、たまにはアップにしてみてもいいと思うんだよね」
相変わらずの手際の良さで、ウタセは慈乃の髪をまとめ上げていく。
結局、慈乃に有無を言わせる間もなく、ヘアアレンジは完了した。
サイドで三つ編みを作って、ポニーテールと一緒に結われたらしい。
「はい、完成っ」
ウタセは元の座に戻った。
慈乃を見て、ソラルは目をまるくしていた。
「確かにイメージが変わりますね」
ガザもうんうんと頷く。
「似合ってるじゃん。な、トゥナ」
「うん」
「トゥナさん、こういうところですよ」
ソラルが呆れ交じりに指摘した。
皆の反応を受けて、ウタセも満足げだった。
「イメチェン成功だね」
素直な称賛に加え、ウタセからはまっすぐすぎる笑顔を向けられて、当の慈乃はなんと答えたものかと、ただ曖昧に頷いた。
「次はオレね。……四。『五七五で今の気持ちをどうぞ~!』……いや、どうぞっていわれても、今の気持ちを?」
「このテンションはツクシさんですね。ろくなマスがないですね」
ガザはまもなくばっと顔と右手を同時にあげた。
「んー、あ、はいっ! 調いました!」
「早いね。どうぞ」
ウタセに促されて、ガザはひとつ咳払いする。
「試しにと やってはみたが はや後悔」
トゥナは激しく首を縦に振った。
「右に同じく」
「ガザさんとトゥナさんの気持ちはわかりますが、字余りじゃないですか」
「まーまー、細かいことはいいだろ?」
「だよねぇ。うん、僕もそういわれるんじゃないかなとは予想してたんだ」
すごろくに対する酷評に反対するどころか、製作者のひとりまでも同意していた。
「作った面子が面子ですからね」
「ツクシが暴れるからだよね、やっぱり」
ウタセは悩ましそうにしていたが、ガザ達は白い目をウタセにも向けていた。
「それだけじゃないだろ」
「自覚がない分、質が悪いですね」
「もし作り直すならオレ手伝うよ」
「トゥナに言わせるって、このすごろくかなりの問題作なんじゃ?」
「いまさらですけどね。ほら、やっとトゥナさんの番ですよ」
「待ってました! 出ろー、四っ!」
トゥナは持て余したエネルギーを一投にこめるように、さいころを勢いよく振った。
「丁寧に扱ってねー」
「あ、はい」
ウタセに注意されて、トゥナは素直に頷いた。
その間にさいころが止まった。出た目は六だった。そのマスは言うまでもなく『最初に戻る』である。
「~~っ!」
床に拳を叩きつけるトゥナを今更慰める者はいなかった。もはや運がないとしかいえない。
手を打ったウタセは、立ち上がると慈乃の背後に回った。
「あー、なるほどな」
得心がいったガザはひとり頷く。
ソラルも察したようだったが、やや苦い顔をしていた。
「ウタさんだから許されるものの……」
「え? なんか言った?」
「いいえ。トゥナさんには真似できないと思っただけですよ」
心底不思議そうなウタセに対して、ソラルは涼しい顔をしていた。
「シノ、ちょっと髪貸してね」
「え」
慈乃が慌てているのも気に留めず、ウタセは言うが早いか慈乃の髪をいじりだす。
「あ、昨日の髪紐使ってくれてるんだね。嬉しいなぁ」
「あのっ……」
「シノって髪おろしてばっかりだから、たまにはアップにしてみてもいいと思うんだよね」
相変わらずの手際の良さで、ウタセは慈乃の髪をまとめ上げていく。
結局、慈乃に有無を言わせる間もなく、ヘアアレンジは完了した。
サイドで三つ編みを作って、ポニーテールと一緒に結われたらしい。
「はい、完成っ」
ウタセは元の座に戻った。
慈乃を見て、ソラルは目をまるくしていた。
「確かにイメージが変わりますね」
ガザもうんうんと頷く。
「似合ってるじゃん。な、トゥナ」
「うん」
「トゥナさん、こういうところですよ」
ソラルが呆れ交じりに指摘した。
皆の反応を受けて、ウタセも満足げだった。
「イメチェン成功だね」
素直な称賛に加え、ウタセからはまっすぐすぎる笑顔を向けられて、当の慈乃はなんと答えたものかと、ただ曖昧に頷いた。
「次はオレね。……四。『五七五で今の気持ちをどうぞ~!』……いや、どうぞっていわれても、今の気持ちを?」
「このテンションはツクシさんですね。ろくなマスがないですね」
ガザはまもなくばっと顔と右手を同時にあげた。
「んー、あ、はいっ! 調いました!」
「早いね。どうぞ」
ウタセに促されて、ガザはひとつ咳払いする。
「試しにと やってはみたが はや後悔」
トゥナは激しく首を縦に振った。
「右に同じく」
「ガザさんとトゥナさんの気持ちはわかりますが、字余りじゃないですか」
「まーまー、細かいことはいいだろ?」
「だよねぇ。うん、僕もそういわれるんじゃないかなとは予想してたんだ」
すごろくに対する酷評に反対するどころか、製作者のひとりまでも同意していた。
「作った面子が面子ですからね」
「ツクシが暴れるからだよね、やっぱり」
ウタセは悩ましそうにしていたが、ガザ達は白い目をウタセにも向けていた。
「それだけじゃないだろ」
「自覚がない分、質が悪いですね」
「もし作り直すならオレ手伝うよ」
「トゥナに言わせるって、このすごろくかなりの問題作なんじゃ?」
「いまさらですけどね。ほら、やっとトゥナさんの番ですよ」
「待ってました! 出ろー、四っ!」
トゥナは持て余したエネルギーを一投にこめるように、さいころを勢いよく振った。
「丁寧に扱ってねー」
「あ、はい」
ウタセに注意されて、トゥナは素直に頷いた。
その間にさいころが止まった。出た目は六だった。そのマスは言うまでもなく『最初に戻る』である。
「~~っ!」
床に拳を叩きつけるトゥナを今更慰める者はいなかった。もはや運がないとしかいえない。
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