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第二五話 希望の灯
第二五話 一
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長い長い夢が終わる。夢を見ていたことは覚えているのに、何の夢を見ていたのかは思い出せなかった。何か大事なことを掴みかけていた気もするが、一体何だったか。
「……」
夢と現の境を揺蕩っていたが、やがてあかりの意識は現の世界へと浮上した。
まぶたを押し上げ、視界に最初に映ったのは見慣れない天井だった。そしてすぐに右手に触れているものに気がつき、そちらに視線だけを動かした。
そこには青の美しい青年が座りながら突っ伏して眠っていて、あかりの右手に触れていたのは彼の左手だった。あかりよりやや温度の低い手を、何故だかあたたかいと感じる。なんとなく繋がれた手と手を眺めていると、やがて青年が身動ぎした。
「ん……。夢……?」
青年はゆるゆると身を起こし、繋いだままの手を見た。
「ああ、だからあかりの夢、だったのか、な……」
手からあかりの顏に視線を移した途端、青年の呟きは不自然に途切れた。そして静かに瞠目する。
「あか、り……?」
あかりはひとつ瞬きした。
「……『あかり』」
喉が上手く動かなくてささやき程度の声しか出せない。それでもあかりは慈しむように丁寧に、その単語をなぞった。
だが、あかりはそれきり黙ってしまう。
目を瞠っていた青年はいよいよ訝しむように微かに眉を寄せ、もう一度「あかり?」と言った。
あかりは再び瞬きする。
「『あかり』」
その瞬きは青年に応えているというよりかは、理解できないとでも言いたげで。
「それは、なに?」
力強いきらめきを宿していたはずの赤い瞳は、今は哀しいくらいに美しいガラス玉のようだった。
「……」
夢と現の境を揺蕩っていたが、やがてあかりの意識は現の世界へと浮上した。
まぶたを押し上げ、視界に最初に映ったのは見慣れない天井だった。そしてすぐに右手に触れているものに気がつき、そちらに視線だけを動かした。
そこには青の美しい青年が座りながら突っ伏して眠っていて、あかりの右手に触れていたのは彼の左手だった。あかりよりやや温度の低い手を、何故だかあたたかいと感じる。なんとなく繋がれた手と手を眺めていると、やがて青年が身動ぎした。
「ん……。夢……?」
青年はゆるゆると身を起こし、繋いだままの手を見た。
「ああ、だからあかりの夢、だったのか、な……」
手からあかりの顏に視線を移した途端、青年の呟きは不自然に途切れた。そして静かに瞠目する。
「あか、り……?」
あかりはひとつ瞬きした。
「……『あかり』」
喉が上手く動かなくてささやき程度の声しか出せない。それでもあかりは慈しむように丁寧に、その単語をなぞった。
だが、あかりはそれきり黙ってしまう。
目を瞠っていた青年はいよいよ訝しむように微かに眉を寄せ、もう一度「あかり?」と言った。
あかりは再び瞬きする。
「『あかり』」
その瞬きは青年に応えているというよりかは、理解できないとでも言いたげで。
「それは、なに?」
力強いきらめきを宿していたはずの赤い瞳は、今は哀しいくらいに美しいガラス玉のようだった。
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