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第二三話 昇る朝陽と舞う朱咲
第二三話 一四
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旺気を胸いっぱいに吸い込み、あかりはまるで歌うように言葉を紡いでいく。
「天地の父母たる六甲六旬十二時神・青柳・蓬星・天上玉女・六戊・蔵形之神、我が母神たる朱咲に願い奉る」
手にした霊剣がまとう赤い光が輝きを増す。あかりは舞うように軽やかな一歩を踏み出した。
「東方諸神、功曹・太衝・天罡・青帝・甲乙大神。南方諸神、太乙・勝先・小吉・赤帝・丙丁大神。西方諸神、伝送・従魁・白帝・庚申大神。北方諸神、登明・神后・大吉・黒帝・壬癸大神にも願い奉る」
守ってくれるという幼なじみたちの言葉を信じて、あかりは反閇に集中して昴の張った結界内をのびやかに禹歩の足運びで巡る。一言一句に気をこめて、あかりは丁寧に謡い、舞い踊った。
「玉女、白古、朱咲、勾陳、玄舞、六合、六甲、六神、十二時神に乗り、我を喜ぶ者は福し、我を悪む者は殃せらる。百邪鬼賊、我に当う者は亡び、千万人中、我を見る者は喜ぶ」
言葉に想いを載せて言霊と成す。祝詞奏上が進むほどにあかりを中心とした赤い光が帯のように流れていった。その赤の気の流れは室内を巡り、やがて窓の外にまで流れ出る。
(この声がどうか全ての邪気を祓いますように)
この場で戦う仲間に襲いかかる邪気も、式神にまとわりつく邪気も、現帝が放つ邪気も。それだけではない。今この瞬間、邪気にあてられ苦しむ人々にもこの声が届いてほしいと祈る。
司の卜占は必ず当たる。ならばこの戦いはきっとあかりにとって最後の戦いになるはずだ。憂いなく笑い合える未来のために、ひとかけらの邪気も残してはいけない。
あかりは霊剣を握り直した。
「今日の禹歩、上は天罡に応じ、玉女傍らに侍り、下は不祥をさく。万精を厭伏し、向かう所殃無く、治す所の病は差え、攻むる所のものは開き、撃つ所のものは破し、求むる所のものは得、願う所のものは就る。帝王・大臣・二千石の長吏、我を見て愛すること赤子の如し。今日、玉女大臣、我に随いて進まんことを請う」
大雨の中、何度も反閇を使って戦ったせいか儀式の半ばだというのに手足から力が抜けそうになる。膝が震え、腕が重く痺れ始めるが、あかりはそれらを無視して一心に舞う。次第に息が上がり、ひとつ呼吸をする度に胸がきりきりと痛んだが、あかりは決してその痛みを表に出そうとはしなかった。
周囲の状況は全く目に入らなかったが、気の流れだけは敏感に察知できる。あかりの凛とした声が響くごとに、一帯の邪気が徐々に浄化されていくことがわかった。
(だけどまだ、強さが……、想いが足りない)
幼い頃、母に言われた言葉を思い出す。
『言霊を力に変えるのには、自身の想いがなにより重要なのよ。強大な力を扱いたければなおのこと、それに応じた想いの強さが必要となるの』
今のままでは全ての邪気を祓いたいというあかりの願いは叶えられそうにない。この反閇が失敗に終わったらもう次はないだろう。体力も霊力も限界に達しているのだから。
反閇も半ばに差しかかっている。冷静さを失ってはならないのに、じわりじわりと焦りが広がっていく。
(どうしよう。失敗は許されないのに、このままじゃ……)
「天地の父母たる六甲六旬十二時神・青柳・蓬星・天上玉女・六戊・蔵形之神、我が母神たる朱咲に願い奉る」
手にした霊剣がまとう赤い光が輝きを増す。あかりは舞うように軽やかな一歩を踏み出した。
「東方諸神、功曹・太衝・天罡・青帝・甲乙大神。南方諸神、太乙・勝先・小吉・赤帝・丙丁大神。西方諸神、伝送・従魁・白帝・庚申大神。北方諸神、登明・神后・大吉・黒帝・壬癸大神にも願い奉る」
守ってくれるという幼なじみたちの言葉を信じて、あかりは反閇に集中して昴の張った結界内をのびやかに禹歩の足運びで巡る。一言一句に気をこめて、あかりは丁寧に謡い、舞い踊った。
「玉女、白古、朱咲、勾陳、玄舞、六合、六甲、六神、十二時神に乗り、我を喜ぶ者は福し、我を悪む者は殃せらる。百邪鬼賊、我に当う者は亡び、千万人中、我を見る者は喜ぶ」
言葉に想いを載せて言霊と成す。祝詞奏上が進むほどにあかりを中心とした赤い光が帯のように流れていった。その赤の気の流れは室内を巡り、やがて窓の外にまで流れ出る。
(この声がどうか全ての邪気を祓いますように)
この場で戦う仲間に襲いかかる邪気も、式神にまとわりつく邪気も、現帝が放つ邪気も。それだけではない。今この瞬間、邪気にあてられ苦しむ人々にもこの声が届いてほしいと祈る。
司の卜占は必ず当たる。ならばこの戦いはきっとあかりにとって最後の戦いになるはずだ。憂いなく笑い合える未来のために、ひとかけらの邪気も残してはいけない。
あかりは霊剣を握り直した。
「今日の禹歩、上は天罡に応じ、玉女傍らに侍り、下は不祥をさく。万精を厭伏し、向かう所殃無く、治す所の病は差え、攻むる所のものは開き、撃つ所のものは破し、求むる所のものは得、願う所のものは就る。帝王・大臣・二千石の長吏、我を見て愛すること赤子の如し。今日、玉女大臣、我に随いて進まんことを請う」
大雨の中、何度も反閇を使って戦ったせいか儀式の半ばだというのに手足から力が抜けそうになる。膝が震え、腕が重く痺れ始めるが、あかりはそれらを無視して一心に舞う。次第に息が上がり、ひとつ呼吸をする度に胸がきりきりと痛んだが、あかりは決してその痛みを表に出そうとはしなかった。
周囲の状況は全く目に入らなかったが、気の流れだけは敏感に察知できる。あかりの凛とした声が響くごとに、一帯の邪気が徐々に浄化されていくことがわかった。
(だけどまだ、強さが……、想いが足りない)
幼い頃、母に言われた言葉を思い出す。
『言霊を力に変えるのには、自身の想いがなにより重要なのよ。強大な力を扱いたければなおのこと、それに応じた想いの強さが必要となるの』
今のままでは全ての邪気を祓いたいというあかりの願いは叶えられそうにない。この反閇が失敗に終わったらもう次はないだろう。体力も霊力も限界に達しているのだから。
反閇も半ばに差しかかっている。冷静さを失ってはならないのに、じわりじわりと焦りが広がっていく。
(どうしよう。失敗は許されないのに、このままじゃ……)
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