312 / 388
第二二話 重ねる約束
第二二話 九
しおりを挟む
半刻後、あかりはふるりとまぶたを震わせてゆっくりと目を開けた。
「あかり、起きた? おはよう」
「……おは、よう……?」
目覚めた直後こそ夢現の状態だったあかりだが、次第に意識が鮮明になってくる。そして、結月との距離の近さに慌てて身を退いた。
「え、何、どういうこと⁉」
「あかり、憶えてない?」
結月に問われて、あかりは何があったか思い出そうとする。ところどころ記憶があいまいな部分はあるが、大体何があったかは憶えていた。
普段は口にできないようなことを恥ずかしげもなく言っていた羞恥から、あかりの頬はみるみる真っ赤に染まっていく。
「う、あ……その……」
意味のない呻き声しか出せないあかりを見て、結月ははにかんで小さく笑った。
「おれは、……嬉しかったよ」
不意打ちの笑顔にあかりはぴたりと動きを止めた。そんな風に言われたら恥ずかしくはあるけれど悪いことではなかったと錯覚してしまいそうになる。
絡まる視線からお互いに逃れられないように、見つめ合うこと数秒。
横合いから聞こえたわざとらしい咳払いに、あかりは我に返った。
「俺たちもいるぞー?」
「なんかごめんね?」
ばっと振り返り、秋之介と昴の顔を見て、彼らにも大胆な告白をしたことを思い出す。あかりはとっさに両頬を手で隠すように覆った。
「わ、私こそごめんね!」
隣で結月が不思議そうに首を傾げる。
「なんであかり、謝るの?」
「え、だって……みんなのこと困らせたよね?」
「おれは嬉しかったって、さっき言った」
隣を見上げていたあかりは卓の向かい側に座る秋之介と昴に視線を移した。しかし彼らもまた首を振って否定する。
「俺は愉しかったけどな」
「僕はあかりちゃんが僕たちとずっと一緒にいたいって教えてくれて、同じだなって思ったよ」
「同じ?」
あかりが聞き返すと、昴はこくりと頷いた。
「うん。僕たちだって普段言わないだけで、あかりちゃんと思うことは一緒ってことだよ。それを言葉にしてくれて嬉しかったんだ。だからありがとうね」
「そ、うなんだ……」
恥ずかしさは消え、代わりに安堵が心の内を満たす。
あかりがほっと胸を撫でおろしていると、秋之介が声をあげた。
「なあ、せっかく四人集まったんだし模擬実戦でもしねえ? 俺、憑依術の調整をしてぇんだよな」
「僕はいいよ。あかりちゃんとゆづくんは?」
「……おれも、一刻くらいなら、大丈夫」
「いいよ。やろうやろう!」
四人はそろって立ち上がると裏庭の方へ向かい出す。
「あかり、起きた? おはよう」
「……おは、よう……?」
目覚めた直後こそ夢現の状態だったあかりだが、次第に意識が鮮明になってくる。そして、結月との距離の近さに慌てて身を退いた。
「え、何、どういうこと⁉」
「あかり、憶えてない?」
結月に問われて、あかりは何があったか思い出そうとする。ところどころ記憶があいまいな部分はあるが、大体何があったかは憶えていた。
普段は口にできないようなことを恥ずかしげもなく言っていた羞恥から、あかりの頬はみるみる真っ赤に染まっていく。
「う、あ……その……」
意味のない呻き声しか出せないあかりを見て、結月ははにかんで小さく笑った。
「おれは、……嬉しかったよ」
不意打ちの笑顔にあかりはぴたりと動きを止めた。そんな風に言われたら恥ずかしくはあるけれど悪いことではなかったと錯覚してしまいそうになる。
絡まる視線からお互いに逃れられないように、見つめ合うこと数秒。
横合いから聞こえたわざとらしい咳払いに、あかりは我に返った。
「俺たちもいるぞー?」
「なんかごめんね?」
ばっと振り返り、秋之介と昴の顔を見て、彼らにも大胆な告白をしたことを思い出す。あかりはとっさに両頬を手で隠すように覆った。
「わ、私こそごめんね!」
隣で結月が不思議そうに首を傾げる。
「なんであかり、謝るの?」
「え、だって……みんなのこと困らせたよね?」
「おれは嬉しかったって、さっき言った」
隣を見上げていたあかりは卓の向かい側に座る秋之介と昴に視線を移した。しかし彼らもまた首を振って否定する。
「俺は愉しかったけどな」
「僕はあかりちゃんが僕たちとずっと一緒にいたいって教えてくれて、同じだなって思ったよ」
「同じ?」
あかりが聞き返すと、昴はこくりと頷いた。
「うん。僕たちだって普段言わないだけで、あかりちゃんと思うことは一緒ってことだよ。それを言葉にしてくれて嬉しかったんだ。だからありがとうね」
「そ、うなんだ……」
恥ずかしさは消え、代わりに安堵が心の内を満たす。
あかりがほっと胸を撫でおろしていると、秋之介が声をあげた。
「なあ、せっかく四人集まったんだし模擬実戦でもしねえ? 俺、憑依術の調整をしてぇんだよな」
「僕はいいよ。あかりちゃんとゆづくんは?」
「……おれも、一刻くらいなら、大丈夫」
「いいよ。やろうやろう!」
四人はそろって立ち上がると裏庭の方へ向かい出す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる