【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一八話 凶星の瞬き

第一八話 一〇

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同時刻、中央御殿。
謁見の間で結月と秋之介は司と向き合って正座していた。司が重々しく口を開く。
「お二人は先月、凶星が出現したのをご存じでしょうか」
 結月と秋之介は声を揃えて「はい」と答えた。司は「そうですか……」とやや俯いて呟いたが、一度深く息を吐くと背筋をしゃんと伸ばして前を見据えた。
「凶星が出てから卜占を重ねました。その結果をお伝えしたく、お二人をお呼びしました」
 凶星について卜占を行った結果とは、つまり悪いお告げともいえる。司の決して明るくはない表情も相まって、内容を知らされる前に結月と秋之介の顔は強張った。
「心の準備はできましたか?」
しかし、どうあっても聞かないという選択肢はない。司の確認に結月と秋之介は厳かに頷いた。司もまた頷き返すと、まず秋之介の方に視線を送った。
「まずは秋之介さん。貴方は水無月と火に注意しなさい。特にご両親の命が危ないです」
「……それは、死相が出ているということですか?」
「星の輝きがやや弱くなっているだけなので、まだ亡くなると決まったわけではありませんよ。貴方方の行動如何で守れる可能性もまだあります」
「……はい」
 秋之介の返事を聞き届けて、司は結月の方へ視線を滑らせた。
「結月さんも水無月には注意してください。それから水にもお気をつけて。貴方のご両親も同様に命が危ないと出ていますが、どちらに転ぶかは貴方方の行動次第です」
「はい」
 結月の静かな返事に、司はこくりと頷いた。
「余も卜占は続けてみます。また変化があればお教えします」
 司はそう言い残すと謁見の間から退出した。
入れ替わりに黄麟家の案内役が部屋に入ってきて、結月と秋之介を門の前まで先導する。そのまま見送られ、二人は中央御殿を後にし、あかりと昴の待つ玄舞家を目指して歩き出した。
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