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第一八話 凶星の瞬き
第一八話 二
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そのようにして天翔を追いかけ続けると、邸の裏手に出た。言わずもがなそこには大きな南朱湖が広がっている。強雨のために湖の水かさは増していて、辺りは水浸しになっていた。
眼前の光景にあかりの頭がずきりと痛む。
(私、似たような景色を見たことがあったっけ……?)
あかりが考え込んでいる間にも、天翔は歩みを止めることはなかった。
(これ以上は湖があるんだから先に進めないはず。一体どこに……)
頭痛を堪えながら、あかりは天翔の行く先を目で追った。
すると、天翔は何の躊躇いも見せずに湖に足をつけた。
「えっ⁉」
天翔はそのまま先へ先へと進んでいく。奥に行くにつれて水が深くなる。天翔の姿が徐々に水の中に消えていく。
あかりはせり上がる水への恐怖を無理矢理抑え込み、天翔を連れ戻そうと湖に向かって駆け出した。しかし冷えきった足はうまく動かず、あかりはぬかるみに足を滑らせた。
「きゃっ!」
派手な水しぶきをあげて、あかりは浅瀬で膝をついた。しかし天翔は一瞥もくれずにさらに先を行く。
「待って。待ってよ、お父様!」
あかりは立ち上がるために一度地に視線を落とした。そして、膝を立たせながら再び前を向いたとき、ぐにゃりと景色が歪んだ。同時に頭が締め付けられるような痛みを主張した。
「あ……」
瞬きの後、あかりは瞠目した。頭痛は引き、目の前の景色は様変わりしていた。
「そう、だった……。この、景色……」
湖は水で満ちていた。それは変わらない。けれども数多の人の浮島がそこここに現れている。あかりに動揺が広がった。
湖の一番手前に一点の赤が浮いている。その傍に金の狐が沈んでいく。
「や、やだ……! 行かないで!」
湖の水をかき分けて、あかりは文字通り必死に両親の元へ行こうとした。突然水深が増し、あかりの足が水中を掻く。
「っ⁉」
泳げず、体勢も立て直せない。あかりは水に抵抗しようとしたが、溺れた拍子に水を飲んでしまい、呼吸ができなかった。そのまま体も意識も沈んでいく。
これもまたいつか見た光景のようだと混濁していく意識の片隅でぼんやりとそんなことを思った。
眼前の光景にあかりの頭がずきりと痛む。
(私、似たような景色を見たことがあったっけ……?)
あかりが考え込んでいる間にも、天翔は歩みを止めることはなかった。
(これ以上は湖があるんだから先に進めないはず。一体どこに……)
頭痛を堪えながら、あかりは天翔の行く先を目で追った。
すると、天翔は何の躊躇いも見せずに湖に足をつけた。
「えっ⁉」
天翔はそのまま先へ先へと進んでいく。奥に行くにつれて水が深くなる。天翔の姿が徐々に水の中に消えていく。
あかりはせり上がる水への恐怖を無理矢理抑え込み、天翔を連れ戻そうと湖に向かって駆け出した。しかし冷えきった足はうまく動かず、あかりはぬかるみに足を滑らせた。
「きゃっ!」
派手な水しぶきをあげて、あかりは浅瀬で膝をついた。しかし天翔は一瞥もくれずにさらに先を行く。
「待って。待ってよ、お父様!」
あかりは立ち上がるために一度地に視線を落とした。そして、膝を立たせながら再び前を向いたとき、ぐにゃりと景色が歪んだ。同時に頭が締め付けられるような痛みを主張した。
「あ……」
瞬きの後、あかりは瞠目した。頭痛は引き、目の前の景色は様変わりしていた。
「そう、だった……。この、景色……」
湖は水で満ちていた。それは変わらない。けれども数多の人の浮島がそこここに現れている。あかりに動揺が広がった。
湖の一番手前に一点の赤が浮いている。その傍に金の狐が沈んでいく。
「や、やだ……! 行かないで!」
湖の水をかき分けて、あかりは文字通り必死に両親の元へ行こうとした。突然水深が増し、あかりの足が水中を掻く。
「っ⁉」
泳げず、体勢も立て直せない。あかりは水に抵抗しようとしたが、溺れた拍子に水を飲んでしまい、呼吸ができなかった。そのまま体も意識も沈んでいく。
これもまたいつか見た光景のようだと混濁していく意識の片隅でぼんやりとそんなことを思った。
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