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第一七話 諦めない未来
第一七話 二
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「にしても、あのあかりが料理を……」
煮物の盛り付けられた皿を秋之介はまじまじと見つめる。あかりはじとりとした目で秋之介を横目に見た。
「秋が言うと含みがあるようにしか聞こえないんだけど」
「俺をなんだと思ってんだよ!」
「どうせ私が作ったのは怪しい料理だとでも思ってるんでしょ」
「そこまでは言ってねぇだろ!」
「でも否定はしないじゃない!」
「まあまあ。けんかしないの」
昴は苦笑してあかりと秋之介の口論を制した。ふたりがそろって昴に目を向けると、彼はにこやかに笑った。
「滅多に料理しないとは思えないくらい良くできてるよ。ね、ゆづくん」
水を向けられた結月も柔らかに微笑んで答えた。
「うん。美味しい」
「本当⁉」
途端にあかりはぱっと顔を輝かせた。
その様子を離れの縁側で見ていたらしい香澄がくすくすとおかしそうに笑う。気づいたあかりが振り返ると、香澄と目が合った。
「あかりちゃんの花嫁修業は一緒にやっていて楽しかったわ。きっと良い花嫁さんになれるわね」
「か、からかわないでよ、香澄おば様!」
「あら、からかってなんていないわよ?」
一年前だったら「結婚なんて考えてる余裕ないよ」と一蹴できたものが、今では同じ台詞が言えない。それはあかり自身の心境の変化や結月の想いを知って、二人の関係性が少しだけ変わったからだろう。
赤面し慌てて否定するあかりの様子を楽しむように香澄はいたずらっぽく笑った。見かねた結月が助け舟を出す。
「母様。あかりで遊ばないで」
「ふふ、わかってるわよ」
香澄はそう言うと春朝たちの会話に戻っていった。
煮物の盛り付けられた皿を秋之介はまじまじと見つめる。あかりはじとりとした目で秋之介を横目に見た。
「秋が言うと含みがあるようにしか聞こえないんだけど」
「俺をなんだと思ってんだよ!」
「どうせ私が作ったのは怪しい料理だとでも思ってるんでしょ」
「そこまでは言ってねぇだろ!」
「でも否定はしないじゃない!」
「まあまあ。けんかしないの」
昴は苦笑してあかりと秋之介の口論を制した。ふたりがそろって昴に目を向けると、彼はにこやかに笑った。
「滅多に料理しないとは思えないくらい良くできてるよ。ね、ゆづくん」
水を向けられた結月も柔らかに微笑んで答えた。
「うん。美味しい」
「本当⁉」
途端にあかりはぱっと顔を輝かせた。
その様子を離れの縁側で見ていたらしい香澄がくすくすとおかしそうに笑う。気づいたあかりが振り返ると、香澄と目が合った。
「あかりちゃんの花嫁修業は一緒にやっていて楽しかったわ。きっと良い花嫁さんになれるわね」
「か、からかわないでよ、香澄おば様!」
「あら、からかってなんていないわよ?」
一年前だったら「結婚なんて考えてる余裕ないよ」と一蹴できたものが、今では同じ台詞が言えない。それはあかり自身の心境の変化や結月の想いを知って、二人の関係性が少しだけ変わったからだろう。
赤面し慌てて否定するあかりの様子を楽しむように香澄はいたずらっぽく笑った。見かねた結月が助け舟を出す。
「母様。あかりで遊ばないで」
「ふふ、わかってるわよ」
香澄はそう言うと春朝たちの会話に戻っていった。
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