【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第一六話 救いのかたち

第一六話 一三

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 衝撃も落胆も消化しきれないままあかりは玄舞家に戻った。道中の記憶はあまりない。
 あかりが玄関扉を引き開けるとその音に気づいたらしい、手前の客間から秋之介がひょっこりと顔だけ出した。
「よう、おかえり、あかり」
「あ、秋……。ただいま」
 あかりが俯きがちだった顔をあげると、顔を見るなり秋之介は眉をひそめた。
「顔色が良くねえ。外が寒かったってだけじゃねえだろ」
「何、どうしたの、秋?」
 どうやら秋之介だけでなく結月も玄舞家に来ていたらしい。秋之介の態度を不審に思った結月の訝しげな声が聞こえた。
 次いで立ち上がる衣擦れの音がした。部屋から出てきたのは昴だった。
「おかえり、あかりちゃん」
「ただいま……」
 落ち込みきったあかりを目にして昴は目を丸くしたがそれもすぐのことで、いつもの穏和な笑みを浮かべた。
「部屋においで。あったかいよ」
「……うん」
 招かれるままあかりは皆が集まる客間に入った。火鉢で暖められた部屋は居心地がよく、あかりの冷えて強張っていた心も体も解きほぐすようだった。
 結月が淹れた緑茶をそっとあかりに手渡す。あかりは両手で湯飲みを持つと、ようやくほっと息を吐いた。
「南朱湖に行ってきたんだよね。そこで何かあったの?」
 柔らかで労わるような昴の声が降ってくる。あかりはぎくりと身を固くした。
(仲間を傷つけた妖狐がお父様だって知ったら、三人はどう思うのかな。その上で私がお父様を救いたいって言ったら……?)
恐怖がある。勇気もいる。それほどまでにあかりが得た確信は重い。
 あかりが逡巡する間も、幼なじみたちはじっとあかりが話し出すのを待ってくれていた。
あかりがおそるおそる顔をめぐらせれば、真摯な三対の瞳が目に飛び込んでくる。判然としない未来よりも今はこの瞳たちを信じたいと思えた。
あかりはようやく決心すると、ゆっくりと口を動かした。
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