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第一六話 救いのかたち
第一六話 七
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「……天翔くんでは、ないのかな」
突然出てきた父の名前に、あかりは目を丸くした。そして以前にも似たような会話をしたことを思い出した。
「目が赤い狐の妖だから? 秋も前に同じようなこと言ってたけど、お父様の毛色は黒じゃなくてきれいな金色だよ?」
「あかりちゃんの言うことにも一理あるけど、それだけが根拠じゃないよ」
春朝は小さく息を吸うと、重々しく口を開いた。
「あかりちゃんは天翔くん……君のお父様の生い立ちをどこまで知っている?」
「え……?」
問われて改めて考える。
(お父様は……厳しいお母様の代わりにいつでも優しくて、私のことを大事に育ててくれたわ。気の強いお母様には弱かったけど、本当に仲が良くて……。そういえばお父様は婿に入ったのよね。お母様とは何が縁で知り合って結ばれたのかしら)
天翔がどこの生まれで、まつりと出会う前は何をしていたのか。何がきっかけで、どういった経緯でまつりと結婚するに至ったのか。父の生い立ちを考えれば考えるほどに、あかりは父としての天翔しか知らないことに気づかされた。
狼狽するあかりを見て、春朝は深く息を吐いた。
「まつりちゃんや天翔くんはいつかあかりちゃんにこのことを伝えるつもりだったかもしれないし、ずっと黙っているつもりだったのかもしれない。今はもう確かめようがないことだけれどね」
「おじ様やおば様は何か知ってるの?」
春朝と香澄は顔を見合わせると頷きあった。彼らの表情は覚悟を決めたことを物語っていた。
「まつりちゃんと天翔くんの思うところはわからない。もしかしたら教えない方が良いのかもしれないが、そうも言っていられない状況だ。それにあかりちゃんには知る権利があると思うからね」
あかりは胸を押さえて一度深呼吸をすると、春朝と香澄に向かってはっきりと頷いた。心の準備は整った。
「聞かせてください」
突然出てきた父の名前に、あかりは目を丸くした。そして以前にも似たような会話をしたことを思い出した。
「目が赤い狐の妖だから? 秋も前に同じようなこと言ってたけど、お父様の毛色は黒じゃなくてきれいな金色だよ?」
「あかりちゃんの言うことにも一理あるけど、それだけが根拠じゃないよ」
春朝は小さく息を吸うと、重々しく口を開いた。
「あかりちゃんは天翔くん……君のお父様の生い立ちをどこまで知っている?」
「え……?」
問われて改めて考える。
(お父様は……厳しいお母様の代わりにいつでも優しくて、私のことを大事に育ててくれたわ。気の強いお母様には弱かったけど、本当に仲が良くて……。そういえばお父様は婿に入ったのよね。お母様とは何が縁で知り合って結ばれたのかしら)
天翔がどこの生まれで、まつりと出会う前は何をしていたのか。何がきっかけで、どういった経緯でまつりと結婚するに至ったのか。父の生い立ちを考えれば考えるほどに、あかりは父としての天翔しか知らないことに気づかされた。
狼狽するあかりを見て、春朝は深く息を吐いた。
「まつりちゃんや天翔くんはいつかあかりちゃんにこのことを伝えるつもりだったかもしれないし、ずっと黙っているつもりだったのかもしれない。今はもう確かめようがないことだけれどね」
「おじ様やおば様は何か知ってるの?」
春朝と香澄は顔を見合わせると頷きあった。彼らの表情は覚悟を決めたことを物語っていた。
「まつりちゃんと天翔くんの思うところはわからない。もしかしたら教えない方が良いのかもしれないが、そうも言っていられない状況だ。それにあかりちゃんには知る権利があると思うからね」
あかりは胸を押さえて一度深呼吸をすると、春朝と香澄に向かってはっきりと頷いた。心の準備は整った。
「聞かせてください」
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