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第一五話 希望の声
第一五話 一二
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あかりが登場したことで戦況は一気に逆転した。これを好機とみた昴は残された力でもがき苦しむ陰の国の式神使いたちを次々と黒い結界に閉じ込めていく。最後に艮の結界まで修復して、ようやく一段落した。疲弊しきった彼らがその場に座り込んだので、あかりも地面に腰を下ろした。火事によって木々も下草も焼け焦げて、一帯に遮るものはない。寒風が吹き抜けて、興奮に火照った身体を冷ましてくれるようだった。
あかりが何とはなしに空を見上げていると、秋之介の呆れとも感嘆ともつかないため息が聞こえた。
「なんでこんなとこにあかりがいるんだよ」
秋之介に続いて昴も口を開く。
「それに声も。どういうことなの?」
この五か月間の癖で、あかりは筆記用具の入った袂に手を伸ばしかけたが、もうその必要はないのだと右手を引っ込めた。燃えるように痛んだ喉は今はなんともなく、声もすんなりと出すことができた。
「寺子屋にいたときに異変があったから、いてもたってもいられなくてここまで来たの」
秋之介は今度こそ呆れた息を吐いた。
「お前なぁ。戦えもしないのにどうするつもりだったんだよ」
「考えてなかった。けど、とにかくどうにかしなくちゃって思って、朱咲様にいただいた力とそれに見合う想いを意識したら急に身体も喉も熱くなって。呪詛ごと燃やし尽くしてやるって思ったら、声が出るようになったの」
話を聞いた昴は顎に手を添えて唸った。
「呪詛を解くにはあかりちゃんに大きな力と比例する想いが必要だったんだね。僕の治療だけじゃ解呪できないわけだ。……それはそれとして、あかりちゃん」
打って変わった昴の低い声と鋭い眼差しに、あかりはぴっと背筋を伸ばした。嫌な予感がする。
あかりが何とはなしに空を見上げていると、秋之介の呆れとも感嘆ともつかないため息が聞こえた。
「なんでこんなとこにあかりがいるんだよ」
秋之介に続いて昴も口を開く。
「それに声も。どういうことなの?」
この五か月間の癖で、あかりは筆記用具の入った袂に手を伸ばしかけたが、もうその必要はないのだと右手を引っ込めた。燃えるように痛んだ喉は今はなんともなく、声もすんなりと出すことができた。
「寺子屋にいたときに異変があったから、いてもたってもいられなくてここまで来たの」
秋之介は今度こそ呆れた息を吐いた。
「お前なぁ。戦えもしないのにどうするつもりだったんだよ」
「考えてなかった。けど、とにかくどうにかしなくちゃって思って、朱咲様にいただいた力とそれに見合う想いを意識したら急に身体も喉も熱くなって。呪詛ごと燃やし尽くしてやるって思ったら、声が出るようになったの」
話を聞いた昴は顎に手を添えて唸った。
「呪詛を解くにはあかりちゃんに大きな力と比例する想いが必要だったんだね。僕の治療だけじゃ解呪できないわけだ。……それはそれとして、あかりちゃん」
打って変わった昴の低い声と鋭い眼差しに、あかりはぴっと背筋を伸ばした。嫌な予感がする。
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