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第一二話 葉月の凶事
第一二話 三
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残った気配を辿っていく。向かっているのは北玄山の東端、艮の結界のようだ。
「嫌な予感がする……」
あかりの呟きに昴は頷いた。
「ゆづくんと秋くんもそろそろ合流するはず。とにかく慎重にいこう」
「うん」
木立の中を器用に走り進みながら、あかりと昴は妖狐の後を追っていった。
北玄山に林立する木々にも終わりが見え始めたころ、結月と秋之介が合流した。
「聞いたぜ。昴んとこの結界にも引っかからなかったって?」
「うん。最初は猫が入ってきたと思ったくらい」
あかりが言うと、昴は顎に手をあてて呟いた。
「あの結界は敵意や害意に反応する仕組みになってるんだ。つまり、その妖狐にはその気がなかったってことになる」
「でも、あの妖狐は現帝に使役されてるんだよ? なんだかちぐはぐじゃない?」
「もし、前のような大人しい状態のままなら……」
それまで黙って話を聞いていた結月がおもむろに口を開いた。三人の視線も結月に集中する。
「まだ、自我が残ってる、のかも……」
前のような状態とは、一度目の遭遇であかりと目が合った妖狐がじっとしていたこと、二度目に再会したときも最初はぼんやりとした敵意しか感じられなかったことだということをあかりは察した。そして三度目の邂逅を果たした今日も、瞳は穏やかなものだった。総じて件の妖狐は大人しいときも多い。それは妖狐の本来の姿なのではないかと結月は考えているようだった。
しかし大人しいときがあるといっても、強力なことには変わりない。油断したら最後、命がけだった。
謎は深まるばかりで、考えてもわからない。
「嫌な予感がする……」
あかりの呟きに昴は頷いた。
「ゆづくんと秋くんもそろそろ合流するはず。とにかく慎重にいこう」
「うん」
木立の中を器用に走り進みながら、あかりと昴は妖狐の後を追っていった。
北玄山に林立する木々にも終わりが見え始めたころ、結月と秋之介が合流した。
「聞いたぜ。昴んとこの結界にも引っかからなかったって?」
「うん。最初は猫が入ってきたと思ったくらい」
あかりが言うと、昴は顎に手をあてて呟いた。
「あの結界は敵意や害意に反応する仕組みになってるんだ。つまり、その妖狐にはその気がなかったってことになる」
「でも、あの妖狐は現帝に使役されてるんだよ? なんだかちぐはぐじゃない?」
「もし、前のような大人しい状態のままなら……」
それまで黙って話を聞いていた結月がおもむろに口を開いた。三人の視線も結月に集中する。
「まだ、自我が残ってる、のかも……」
前のような状態とは、一度目の遭遇であかりと目が合った妖狐がじっとしていたこと、二度目に再会したときも最初はぼんやりとした敵意しか感じられなかったことだということをあかりは察した。そして三度目の邂逅を果たした今日も、瞳は穏やかなものだった。総じて件の妖狐は大人しいときも多い。それは妖狐の本来の姿なのではないかと結月は考えているようだった。
しかし大人しいときがあるといっても、強力なことには変わりない。油断したら最後、命がけだった。
謎は深まるばかりで、考えてもわからない。
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