132 / 389
第一〇話 夢幻のような
第一〇話 一二
しおりを挟む
甘味処を後にしたあかりたちは、次に駄菓子屋に向かうことにした。
「ちょうど金平糖を切らしそうだったんだよね」
「また甘いもんか」
「いいでしょー」
甘味処から駄菓子屋は近い距離にあったので、すぐに着いた。
「金平糖みーっけ!」
あかりはいそいそとそちらへ向かうと、赤、青、白、黒の四袋を迷わず手に取った。
ここでも駄菓子屋の店主がおまけをしてくれた。
「あかりちゃんの誕生日だからね」
「わあい! ありがとう、源さん」
おまけされたのは黄の金平糖がつまった袋だった。五色揃うと、四家と黄麟家のことが思い起こされる。
(御上様は、金平糖って召し上がったことがあるのかな?)
あかりの約半分の年の司。あんなに小さいのに、その双肩にかかる重みは如何ほどか。今度会う機会があったら失礼にならない程度に訊いて、勧めてみようか。もしかしたら少しだけ疲れが癒えるかもしれない。
「あかり?」
結月に顔を覗き込まれ、あかりは思考の海から意識を浮上させた。
「考え事?」
「ほら、黄色って御上様の色でしょ。御上様は金平糖って知ってるのかなって」
「ふーん……」
結月の反応は大抵淡白なものだが、あかりたち幼なじみにはその僅かな差異がわかる。このときは結月らしくもなく、面白くなさそうな反応だった。
「結月、どうかした?」
「……ううん、なんでもない」
今度の返事はいつもの結月らしいもので、ただ淡々としていた。
「次行こうって、秋が、言ってた」
「あ、うん!」
駄菓子屋の軒先で待つ秋之介と昴のもとへ、あかりは結月と一緒に舞い戻った。
「ちょうど金平糖を切らしそうだったんだよね」
「また甘いもんか」
「いいでしょー」
甘味処から駄菓子屋は近い距離にあったので、すぐに着いた。
「金平糖みーっけ!」
あかりはいそいそとそちらへ向かうと、赤、青、白、黒の四袋を迷わず手に取った。
ここでも駄菓子屋の店主がおまけをしてくれた。
「あかりちゃんの誕生日だからね」
「わあい! ありがとう、源さん」
おまけされたのは黄の金平糖がつまった袋だった。五色揃うと、四家と黄麟家のことが思い起こされる。
(御上様は、金平糖って召し上がったことがあるのかな?)
あかりの約半分の年の司。あんなに小さいのに、その双肩にかかる重みは如何ほどか。今度会う機会があったら失礼にならない程度に訊いて、勧めてみようか。もしかしたら少しだけ疲れが癒えるかもしれない。
「あかり?」
結月に顔を覗き込まれ、あかりは思考の海から意識を浮上させた。
「考え事?」
「ほら、黄色って御上様の色でしょ。御上様は金平糖って知ってるのかなって」
「ふーん……」
結月の反応は大抵淡白なものだが、あかりたち幼なじみにはその僅かな差異がわかる。このときは結月らしくもなく、面白くなさそうな反応だった。
「結月、どうかした?」
「……ううん、なんでもない」
今度の返事はいつもの結月らしいもので、ただ淡々としていた。
「次行こうって、秋が、言ってた」
「あ、うん!」
駄菓子屋の軒先で待つ秋之介と昴のもとへ、あかりは結月と一緒に舞い戻った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる