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第六話 幸せはいつもそばに
第六話 七
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夜も深くなったので、そろそろ解散しようということになった。
今晩は結月と秋之介も玄舞家に泊まるらしい。客間に案内するという昴たちと廊下の途中で別れ、あかりはひとり、自室としてあてがわれている部屋へと向かった。
寝支度を整え、ふと夜空を見上げる。満月に近い形をした月が煌々と輝いては、地上に淡く優しい光を降り注がせていた。
『美しい月夜じゃの』
「⁉」
静寂に突如落とされた少女の声に、あかりは飛び上がった。少女はくつくつと笑う。
『何を今更そこまで驚くことがある? 初対面でもなかろうに』
「す、朱咲様……」
ばくばくとうるさい心臓を上からおさえて、あかりは少女の名を呟いた。
「久しぶりだったので、驚いたのです」
『確かにあれ以来妾はほとんど眠っておったしな。今宵は新年の挨拶だと思ってくれてよい』
互いに挨拶を交わしてから、あかりは朱咲に問いかけた。
「朱咲様はいままでどうしておられたのですか」
ご尊像や朱咲家が戻らない現在、朱咲の存在は変わらずあかりの中にあると思われる。しかし、あれ以来あかりは朱咲と会ったり話したりはしておらず、ときおり気配が感じられる程度だった。
『そなたのことは見守っておったぞ』
朱咲は柔らかに微笑んだようだった。姿形は見えないが、息づかいから察せられた。
『そなたはひとりではない、というより、ひとりにさせてくれないようじゃな。彼らといるときは本当に楽しそうにしておったから安心していたぞ』
その声音はどこまでも優しくて、あかりに母や祖母を思い起こさせた。あかりの胸が不思議と温かさに包まれる。
『そなたは先ほど、皆と共になら頑張れると思っていたな』
「はい」
『その『皆』の中に妾がいることも忘れないでほしい。あかりの為なら、妾は喜んで力を貸そうぞ』
朱咲はそう言い置くと、再び眠りについたようだった。存在は確かに感知できるが、つい先ほどのようには朱咲の自我を感じられない。まるであかりの一部として心にとけてしまったようだった。
優しさと温かさを胸にして、あかりも床につくことにした。
今夜はいつも以上によく寝られそうだった。
今晩は結月と秋之介も玄舞家に泊まるらしい。客間に案内するという昴たちと廊下の途中で別れ、あかりはひとり、自室としてあてがわれている部屋へと向かった。
寝支度を整え、ふと夜空を見上げる。満月に近い形をした月が煌々と輝いては、地上に淡く優しい光を降り注がせていた。
『美しい月夜じゃの』
「⁉」
静寂に突如落とされた少女の声に、あかりは飛び上がった。少女はくつくつと笑う。
『何を今更そこまで驚くことがある? 初対面でもなかろうに』
「す、朱咲様……」
ばくばくとうるさい心臓を上からおさえて、あかりは少女の名を呟いた。
「久しぶりだったので、驚いたのです」
『確かにあれ以来妾はほとんど眠っておったしな。今宵は新年の挨拶だと思ってくれてよい』
互いに挨拶を交わしてから、あかりは朱咲に問いかけた。
「朱咲様はいままでどうしておられたのですか」
ご尊像や朱咲家が戻らない現在、朱咲の存在は変わらずあかりの中にあると思われる。しかし、あれ以来あかりは朱咲と会ったり話したりはしておらず、ときおり気配が感じられる程度だった。
『そなたのことは見守っておったぞ』
朱咲は柔らかに微笑んだようだった。姿形は見えないが、息づかいから察せられた。
『そなたはひとりではない、というより、ひとりにさせてくれないようじゃな。彼らといるときは本当に楽しそうにしておったから安心していたぞ』
その声音はどこまでも優しくて、あかりに母や祖母を思い起こさせた。あかりの胸が不思議と温かさに包まれる。
『そなたは先ほど、皆と共になら頑張れると思っていたな』
「はい」
『その『皆』の中に妾がいることも忘れないでほしい。あかりの為なら、妾は喜んで力を貸そうぞ』
朱咲はそう言い置くと、再び眠りについたようだった。存在は確かに感知できるが、つい先ほどのようには朱咲の自我を感じられない。まるであかりの一部として心にとけてしまったようだった。
優しさと温かさを胸にして、あかりも床につくことにした。
今夜はいつも以上によく寝られそうだった。
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