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第六話 幸せはいつもそばに
第六話 五
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「戦いもあったし楽しいことばっかりじゃなかったけど、いつだって結月と秋と昴が側にいてくれた。それってすごく幸せなことだと思ったの」
それに今は朱咲も胸の中にいて、姿は見えなくとも母もあかりを見守ってくれていることだろう。
最初は朱咲の影響もあって、陽の国や大事な人を護ることに加え、南の地の皆の仇討ちもあかりの使命だと思っていた。しかし朱咲との邂逅を経て、その思いは変化した。今やこれからを生きる人のために戦うことで、亡くなった皆への手向けになればと思うのだ。
(私は、私にできることを精一杯やったんだってみんなに胸を張れる生き方をしたい。生き残った私にできること、そして亡くなったみんなが安心してくれることはそういうことだと思うから)
決して仇討ちなどというあかりには似つかわしくないことではない。彼らがそんなことを望むとは思えないと、今なら冷静に考えられた。
それもまた、結月たちのおかげだと思う。いつの間にか皮を剥く手は止まり、代わりに感謝の言葉が自然と口をついて出た。
「側にいて、支えてくれて、ありがとう」
『二年半』という単語とあかりの台詞、無言の間から結月たちはあかりの懐古や心情をある程度読み取ったらしい。突然の『ありがとう』にも戸惑うことなく、あかりに微笑を向けた。
「そんなの当然だよ。こちらこそありがとう」
「つーか、向こう見ずなあかりを放っておくとか、それこそありえないしな」
「ありがとうは、おれも一緒。あかりが側にいてくれるから、頑張れる。あかりの笑顔に、いつも支えられてるから」
彼らが幼なじみで本当に良かった。あかりは心底からそう思い、花開くような笑顔を彼らに贈った。
「みんな、大好き!」
それに今は朱咲も胸の中にいて、姿は見えなくとも母もあかりを見守ってくれていることだろう。
最初は朱咲の影響もあって、陽の国や大事な人を護ることに加え、南の地の皆の仇討ちもあかりの使命だと思っていた。しかし朱咲との邂逅を経て、その思いは変化した。今やこれからを生きる人のために戦うことで、亡くなった皆への手向けになればと思うのだ。
(私は、私にできることを精一杯やったんだってみんなに胸を張れる生き方をしたい。生き残った私にできること、そして亡くなったみんなが安心してくれることはそういうことだと思うから)
決して仇討ちなどというあかりには似つかわしくないことではない。彼らがそんなことを望むとは思えないと、今なら冷静に考えられた。
それもまた、結月たちのおかげだと思う。いつの間にか皮を剥く手は止まり、代わりに感謝の言葉が自然と口をついて出た。
「側にいて、支えてくれて、ありがとう」
『二年半』という単語とあかりの台詞、無言の間から結月たちはあかりの懐古や心情をある程度読み取ったらしい。突然の『ありがとう』にも戸惑うことなく、あかりに微笑を向けた。
「そんなの当然だよ。こちらこそありがとう」
「つーか、向こう見ずなあかりを放っておくとか、それこそありえないしな」
「ありがとうは、おれも一緒。あかりが側にいてくれるから、頑張れる。あかりの笑顔に、いつも支えられてるから」
彼らが幼なじみで本当に良かった。あかりは心底からそう思い、花開くような笑顔を彼らに贈った。
「みんな、大好き!」
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