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第六話 幸せはいつもそばに
第六話 二
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そして時は流れ、雪月に入り、気づけば年末になっていた。
「寒い寒ーい」
火鉢で温められた部屋にあかりは駆け込んだ。その手にはみかんがのった籠がある。あかりに続いて部屋に入った昴は片手に緑茶の載った盆を持ちかえ、ふすまを閉めた。
あかりは部屋の中央の座卓に籠をのせると、すぐに火鉢に近づいて暖をとった。
「はあ~。あったかい」
「あかり」
結月はあかりの肩をちょんちょんとつついた。振り向いたあかりに直前まで温めていた温石を手渡す。
「あったかいよ」
「ありがとう!」
にっこり笑うと、心まで温かくなった気がする。結月の優しさに触れたからか、朱咲が暖かさに安心したからか。
あかりは温石を受け取ると、そのまま結月の腕にくっついた。
「結月もあったかいね」
「……ずっと部屋にいたから」
結月の白い頬にほんのり赤みがさす。あかりはそれには気づかないまま「そうだ」と言って、座卓に手を伸ばした。ぎりぎり籠に指先が届いたので引き寄せてみかんをとる。
「温石のお礼だよ」
「ありがとう」
「って、それ昴んとこのみかんじゃん」
虎姿の秋之介がのっそりとあかりの横に移動して、伏せた。あかりは秋之介の首筋に抱き着いた。
「もっふもふ!」
「苦しいんだけどー」
文句を言いながらも、秋之介の虎の尾はぱたぱたと揺れていて機嫌が悪そうには見えない。
「寒い寒ーい」
火鉢で温められた部屋にあかりは駆け込んだ。その手にはみかんがのった籠がある。あかりに続いて部屋に入った昴は片手に緑茶の載った盆を持ちかえ、ふすまを閉めた。
あかりは部屋の中央の座卓に籠をのせると、すぐに火鉢に近づいて暖をとった。
「はあ~。あったかい」
「あかり」
結月はあかりの肩をちょんちょんとつついた。振り向いたあかりに直前まで温めていた温石を手渡す。
「あったかいよ」
「ありがとう!」
にっこり笑うと、心まで温かくなった気がする。結月の優しさに触れたからか、朱咲が暖かさに安心したからか。
あかりは温石を受け取ると、そのまま結月の腕にくっついた。
「結月もあったかいね」
「……ずっと部屋にいたから」
結月の白い頬にほんのり赤みがさす。あかりはそれには気づかないまま「そうだ」と言って、座卓に手を伸ばした。ぎりぎり籠に指先が届いたので引き寄せてみかんをとる。
「温石のお礼だよ」
「ありがとう」
「って、それ昴んとこのみかんじゃん」
虎姿の秋之介がのっそりとあかりの横に移動して、伏せた。あかりは秋之介の首筋に抱き着いた。
「もっふもふ!」
「苦しいんだけどー」
文句を言いながらも、秋之介の虎の尾はぱたぱたと揺れていて機嫌が悪そうには見えない。
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