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第五話 朱咲の再来
第五話 二五
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翌早朝にあかりたちは白古家に集まった。儀式を行う白砂の庭にはすでに秋之介がいて最終確認を行っているようだった。
庭には、縦横二尺五寸、高さ一尺二寸の台が設置され、その台の四隅にしめ縄を張り巡らせた高さ二尺八寸の丸柱が立ててある。東に榊、南に灯火、西に小刀、北に清い水、中央に清浄な土の以上五行物実も五行祭壇と呼ばれる道具立ての上にすでに置かれていた。これら五色の物実の前には神酒、粗塩、洗米、五色の餅、季節の果物などの供物もある。さらに一番奥に設えられた高案には神霊が降臨するための神籬となる榊と五色の絹布を立てられていた。どうやらすぐにでも儀式は始められそうだった。
「おはよう、秋」
あかりが真っ先に挨拶すると、秋之介は真剣な顔から振り返って「はよ」といつも通りの笑顔で挨拶を返す。いつも通りでないのは着崩していないという点だけだ。ぴしりと衿を整えている秋之介を見るのは滅多にないことなのであかりは少し可笑しく思った。
「なに笑ってんだよ」
あかりがにやにや笑っていることに気づいた秋之介が、訝しげにあかりを睨む。
「秋がちゃんと着物着てるなんてちょっと変な感じなんだもん」
「俺だって落ち着かねえけど、儀式なんだし仕方ねえだろ」
「わかってるんだけど、ふふっ」
「いつまで笑ってるんだよ」
口調こそ呆れたものだったが、あかりに向ける秋之介の視線は存外優しい。あかりの母を呼ぶことに思うところがあったのかもしれない。秋之介はほんの一瞬だけ安心した顔をした。
遅れて結月と昴もやって来る。
「おはよう、秋くん。準備は万端?」
「ああ。いつでもいいぞ」
見上げた東の空から朝陽が顔を覗かせ始めた。
庭には、縦横二尺五寸、高さ一尺二寸の台が設置され、その台の四隅にしめ縄を張り巡らせた高さ二尺八寸の丸柱が立ててある。東に榊、南に灯火、西に小刀、北に清い水、中央に清浄な土の以上五行物実も五行祭壇と呼ばれる道具立ての上にすでに置かれていた。これら五色の物実の前には神酒、粗塩、洗米、五色の餅、季節の果物などの供物もある。さらに一番奥に設えられた高案には神霊が降臨するための神籬となる榊と五色の絹布を立てられていた。どうやらすぐにでも儀式は始められそうだった。
「おはよう、秋」
あかりが真っ先に挨拶すると、秋之介は真剣な顔から振り返って「はよ」といつも通りの笑顔で挨拶を返す。いつも通りでないのは着崩していないという点だけだ。ぴしりと衿を整えている秋之介を見るのは滅多にないことなのであかりは少し可笑しく思った。
「なに笑ってんだよ」
あかりがにやにや笑っていることに気づいた秋之介が、訝しげにあかりを睨む。
「秋がちゃんと着物着てるなんてちょっと変な感じなんだもん」
「俺だって落ち着かねえけど、儀式なんだし仕方ねえだろ」
「わかってるんだけど、ふふっ」
「いつまで笑ってるんだよ」
口調こそ呆れたものだったが、あかりに向ける秋之介の視線は存外優しい。あかりの母を呼ぶことに思うところがあったのかもしれない。秋之介はほんの一瞬だけ安心した顔をした。
遅れて結月と昴もやって来る。
「おはよう、秋くん。準備は万端?」
「ああ。いつでもいいぞ」
見上げた東の空から朝陽が顔を覗かせ始めた。
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