【本編完結】朱咲舞う

南 鈴紀

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第五話 朱咲の再来

第五話 二一

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「妾が愛し、慈しんできた一族はこの子以外皆殺されてしまった! あんなにも愛されて育ったこの子はたったひとり残されて……! 仇を討ってやる! 妾の大事な者らに手をだしたこと、後悔させてくれるわ!」
 激する感情とともに、あかりの両の瞳から大粒の雫が後から後から零れ落ちる。
 相対する結月はもちろん、秋之介も昴も、誰も、何も言えなかった。
 彼女の―朱咲の―言うこと全てがあかりの思いではないかもしれないが、全く異なるとは思えない。
 幽閉の身から解放されたあかりはありがとうと微笑んだけれど、その微笑みの裏で本当は何を思っていたのだろう。思えば、あかりの弱音や泣き言など滅多に聞いたことがない。悔しい、情けないと言いながら、それでも頑張るのだと最後に強い決意をするのが彼女で、いつも笑っていて、前を向いていた。傷つかないはずがないのに。まだたった十六歳の少女なのに。
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