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第五話 朱咲の再来
第五話 二
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「あかりちゃんの勝ち」
「ありがとうございました」
「……おう。お疲れさん」
一瞬前の鬼気迫るような表情から一転、ころりと笑顔で礼を告げるあかりに、秋之介は鼻白む。人間姿に変化し直すと、拍子抜けした様子でとりあえず言葉を返した。
二人で並んで歩きながら、縁側に座る結月と昴のもとへ向かう。
「あかりも秋も、お疲れ様」
「いい試合だったよ。この分ならすぐにでも実戦に戻れそうだね」
「本当?」
ようやく皆の役に立つことができる。あかりの声は無意識に弾んだ。
「模擬実戦かってくらい殺る気がすごかったしな」
「そうかな? 前からあんな感じじゃなかった?」
あかりは首を傾げるが、対する秋之介は眉根を寄せた。
「なんかあかりっぽくはなかったぜ」
「……」
「ま、時が経てば変わるもんもあるだろうしな」
瞬きの間のあかりの不安そうな表情に気づいたらしい。秋之介はあかりの頭に軽く手を置くと髪をかき乱した。
「もー! ぐちゃぐちゃになるじゃない!」
「辛気臭い面するよりましだろ」
あかりのふくれっ面を見て、秋之介は鋭い犬歯を覗かせてにやりと笑った。
結月と昴は触れなかったが、二人も秋之介と同じように感じていたのだろう。あかりがいつものように秋之介に言い返すのを見て、やや安堵したように息を吐いた。
「とりあえずあかりちゃんの今日の試合稽古はこれでおしまいね」
まだ余力はあったが、ここは素直に頷いておくことにした。普段なら文句を垂れるところだが、胸に広がる一点の染みが判断を変えさせたのかもしれない。
次は結月と昴で模擬実戦を行うというので、あかりは審判役を買って出た。
結局その日は一日中裏庭で四人一緒に過ごしたのだった。
「ありがとうございました」
「……おう。お疲れさん」
一瞬前の鬼気迫るような表情から一転、ころりと笑顔で礼を告げるあかりに、秋之介は鼻白む。人間姿に変化し直すと、拍子抜けした様子でとりあえず言葉を返した。
二人で並んで歩きながら、縁側に座る結月と昴のもとへ向かう。
「あかりも秋も、お疲れ様」
「いい試合だったよ。この分ならすぐにでも実戦に戻れそうだね」
「本当?」
ようやく皆の役に立つことができる。あかりの声は無意識に弾んだ。
「模擬実戦かってくらい殺る気がすごかったしな」
「そうかな? 前からあんな感じじゃなかった?」
あかりは首を傾げるが、対する秋之介は眉根を寄せた。
「なんかあかりっぽくはなかったぜ」
「……」
「ま、時が経てば変わるもんもあるだろうしな」
瞬きの間のあかりの不安そうな表情に気づいたらしい。秋之介はあかりの頭に軽く手を置くと髪をかき乱した。
「もー! ぐちゃぐちゃになるじゃない!」
「辛気臭い面するよりましだろ」
あかりのふくれっ面を見て、秋之介は鋭い犬歯を覗かせてにやりと笑った。
結月と昴は触れなかったが、二人も秋之介と同じように感じていたのだろう。あかりがいつものように秋之介に言い返すのを見て、やや安堵したように息を吐いた。
「とりあえずあかりちゃんの今日の試合稽古はこれでおしまいね」
まだ余力はあったが、ここは素直に頷いておくことにした。普段なら文句を垂れるところだが、胸に広がる一点の染みが判断を変えさせたのかもしれない。
次は結月と昴で模擬実戦を行うというので、あかりは審判役を買って出た。
結局その日は一日中裏庭で四人一緒に過ごしたのだった。
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