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届かない言葉
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父からの祝福の言葉を受け、私は嬉しくて
急いで父の言伝を彼に伝えようと駆け出した
こんな気持ちは初めてで、嬉しさを体で表現したいくらいだ
けど、それ以上に父から祝いの言葉をくれたのが一番嬉しかった
彼の元へと足を運ぶと、城は少し緊迫した空気だったが、気にせずに足へと踏み入れた
彼は私に気づくと、ゆっくり微笑んでくれた
けれどいつもとは違う雰囲気に、違和感を感じた
何か邪魔をしてしまったのかと思い、少し怖気付いてしまう
『あの…私お邪魔してしまったかしら
当然の訪問でごめんなさい
日を改めたほうがいいかしら…』
『いいえ、そんなことありませんよ
姫に会えることは私にとって幸せなこと
一分一秒でも長くいたいくらいです』
私は彼のときめく言葉に、微笑む
それに答えるように、彼は私の髪に口づけを落とす
もう隠す必要はなくなった
あの顔を覆うヴェールも、肌や髪に染粉を塗ることもやめた
あの事件がきっかけで、国中が私の容姿について知れ渡ってしまったらしい
醜い容姿は偽りだったと
この緊迫した空気もおそらく、あの事件が原因なのかもしれない
首謀者が彼の父、それも王様だから
民も混乱していることだろう
国を統べる王が、隣国の姫に危害を加えた
国中を揺るがすことは、間違いない
その事について、以前彼から意見を委ねられた
私はこの人達をどうしたいのかと
被害者である私だからこそ、決める権利があると
私は争いを好まないし、大罪を犯した方々を
どうすればいいのかもわからない
けれど罪を償わないで、表に出すのもよくない
彼らに与える罰は、どうしたらいいのだろう
今私の中では結論は出ないが、彼らと対話をする事で何かが変わると思い、私は彼に進言する
それを彼に伝えると、渋々だったが了承してくれた
彼の付き添いのもとで
彼らが捕えられている牢は、薄暗居場所だった
私が誘拐された場所よりも酷い場所
小さな蝋燭の灯りだけが、頼りだった
少しの隙間風がこの牢を肌寒くさせていた
彼が立ち止まるとそこには、彼らがいた
私が来た事に驚きもせずに、ただ無表情で見つめるのみ
様子を伺っているようにも見えた
私はゆっくりと深呼吸をして、対話を試みた
『単刀直入に聞きます 何故私を誘拐したの
ですか?』
王はゆっくりと、掠れたような声で言い放つ
その声音は憎悪も含まれているよう
『お前は王子に相応しくないからだ
肩書きと容姿は大事だ
そこに愛というものはいらない
私がかつてそうだったように
王子にもそれが必要だ』
自分がそうだったように、息子にもそれが当然のように言い張る
『それはあなたの言い分ではないですか
貴方がそうであったとしても
彼にもそうする必要がどこに
ありますか?』
思ったことを言葉にしただけだが、それが癪に触ったのか、王は声を張り上げた
『知ったような口を聞くな!
今まで容姿を隠してたような
お前なんかに!
どうせそれも王子を自分のものにしようと
いう策略なのだろう?
私は騙されないぞ!』
王の声が薄暗い牢に反響する
小さな蝋燭の灯りが、ゆらゆらと揺らめいている
私はその声に動揺せずに、真っ直ぐに王を見つめる
『あなたが私をどう思おうと構いません
確かに私はあなたに、私と彼の婚姻を
認めてもらいたかった
その為に、容姿を偽ったのは謝罪します
けれどそれは私と彼で決めたことです』
一呼吸置いて私は、当時の思いを
物語るように
『私は、容姿だけで認められたくなかった
私自身を見て欲しかったから
偽ったのです
けれどあなたは、私自身、言葉を
受け入れることはなかった
全てを否定しましたよね』
『…』
『人は一人一人、心、意思を持っている
それが人としての素晴らしい生命です
価値があります 容姿、肩書きだけが
全てじゃない
それをあなたに理解してほしかった
王としてではなく、彼の父として』
そう彼女は、彼の父として認めてほしかった
だから、容姿は偽りだったとしても
心、言葉は真実であった
けれど彼女の言葉は、彼の父の心には届くことはなかった
冷たい牢の空気が私の心に凍てつかせるようで心が少しずつ痛み出して、結局彼らの処遇の答えは出なかった
けど彼はゆっくりと私の気持ちを汲み取るように、抱きしめてくれて
『大丈夫です、貴女はよくやりましたよ
姫には私がついていますよ』
いつもならその言葉が胸を温かくするのに、
今の私の心にはその温かさは届かなかった
急いで父の言伝を彼に伝えようと駆け出した
こんな気持ちは初めてで、嬉しさを体で表現したいくらいだ
けど、それ以上に父から祝いの言葉をくれたのが一番嬉しかった
彼の元へと足を運ぶと、城は少し緊迫した空気だったが、気にせずに足へと踏み入れた
彼は私に気づくと、ゆっくり微笑んでくれた
けれどいつもとは違う雰囲気に、違和感を感じた
何か邪魔をしてしまったのかと思い、少し怖気付いてしまう
『あの…私お邪魔してしまったかしら
当然の訪問でごめんなさい
日を改めたほうがいいかしら…』
『いいえ、そんなことありませんよ
姫に会えることは私にとって幸せなこと
一分一秒でも長くいたいくらいです』
私は彼のときめく言葉に、微笑む
それに答えるように、彼は私の髪に口づけを落とす
もう隠す必要はなくなった
あの顔を覆うヴェールも、肌や髪に染粉を塗ることもやめた
あの事件がきっかけで、国中が私の容姿について知れ渡ってしまったらしい
醜い容姿は偽りだったと
この緊迫した空気もおそらく、あの事件が原因なのかもしれない
首謀者が彼の父、それも王様だから
民も混乱していることだろう
国を統べる王が、隣国の姫に危害を加えた
国中を揺るがすことは、間違いない
その事について、以前彼から意見を委ねられた
私はこの人達をどうしたいのかと
被害者である私だからこそ、決める権利があると
私は争いを好まないし、大罪を犯した方々を
どうすればいいのかもわからない
けれど罪を償わないで、表に出すのもよくない
彼らに与える罰は、どうしたらいいのだろう
今私の中では結論は出ないが、彼らと対話をする事で何かが変わると思い、私は彼に進言する
それを彼に伝えると、渋々だったが了承してくれた
彼の付き添いのもとで
彼らが捕えられている牢は、薄暗居場所だった
私が誘拐された場所よりも酷い場所
小さな蝋燭の灯りだけが、頼りだった
少しの隙間風がこの牢を肌寒くさせていた
彼が立ち止まるとそこには、彼らがいた
私が来た事に驚きもせずに、ただ無表情で見つめるのみ
様子を伺っているようにも見えた
私はゆっくりと深呼吸をして、対話を試みた
『単刀直入に聞きます 何故私を誘拐したの
ですか?』
王はゆっくりと、掠れたような声で言い放つ
その声音は憎悪も含まれているよう
『お前は王子に相応しくないからだ
肩書きと容姿は大事だ
そこに愛というものはいらない
私がかつてそうだったように
王子にもそれが必要だ』
自分がそうだったように、息子にもそれが当然のように言い張る
『それはあなたの言い分ではないですか
貴方がそうであったとしても
彼にもそうする必要がどこに
ありますか?』
思ったことを言葉にしただけだが、それが癪に触ったのか、王は声を張り上げた
『知ったような口を聞くな!
今まで容姿を隠してたような
お前なんかに!
どうせそれも王子を自分のものにしようと
いう策略なのだろう?
私は騙されないぞ!』
王の声が薄暗い牢に反響する
小さな蝋燭の灯りが、ゆらゆらと揺らめいている
私はその声に動揺せずに、真っ直ぐに王を見つめる
『あなたが私をどう思おうと構いません
確かに私はあなたに、私と彼の婚姻を
認めてもらいたかった
その為に、容姿を偽ったのは謝罪します
けれどそれは私と彼で決めたことです』
一呼吸置いて私は、当時の思いを
物語るように
『私は、容姿だけで認められたくなかった
私自身を見て欲しかったから
偽ったのです
けれどあなたは、私自身、言葉を
受け入れることはなかった
全てを否定しましたよね』
『…』
『人は一人一人、心、意思を持っている
それが人としての素晴らしい生命です
価値があります 容姿、肩書きだけが
全てじゃない
それをあなたに理解してほしかった
王としてではなく、彼の父として』
そう彼女は、彼の父として認めてほしかった
だから、容姿は偽りだったとしても
心、言葉は真実であった
けれど彼女の言葉は、彼の父の心には届くことはなかった
冷たい牢の空気が私の心に凍てつかせるようで心が少しずつ痛み出して、結局彼らの処遇の答えは出なかった
けど彼はゆっくりと私の気持ちを汲み取るように、抱きしめてくれて
『大丈夫です、貴女はよくやりましたよ
姫には私がついていますよ』
いつもならその言葉が胸を温かくするのに、
今の私の心にはその温かさは届かなかった
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