醜い皮を被った姫君

ばんご

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思い通りにはさせない

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姫は痛みと立ちはだかる恐怖に耐えるしか他ないなのだろうと思った

けれどそうしてしまえば、この二人の思う壺にはまってしまう

だから追い被さってくる叔父に反抗的な瞳で睨みつけた
すると叔父は私の首を絞めた

『ああ、やっぱりお前はあいつの子だ
 その目、俺を馬鹿にしているのか!
 いつも憐れむ目で俺をみやがって…』

気に障ったようで逆上してしまった
声を出すことも許されないくらい強い力でうめき声しか出すことが叶わなかった

『お前は母親似だと思っていたのに!
 最後だから真実を教えてやろう
 お前は両親に愛されてないと思っている
 だろうが、母親だけはお前を愛していた

 死ぬ間際でさえ自分よりも赤子のお前の
 姿を探す様だ!
 
 お前はどんな死に様を見せてくれる?』

その真実に私は涙を流した
母は愛してくれていたのだと

物心ついた時にはもう、母は亡くなっと知らされ、写真でしか見たことなかったから
きっと愛してくれなかったのだろうと思っていた

窮地になって真実を聞かされ、私は生きなければと思った 
母がくれた命をこんなところで散らしたくなかった

『私は…あなたの…思い…通りには…
 ならない…わ…』

酸素が奪われていく中で、私は自分の思いを
叔父にぶつける

何を思ったのか、叔父は私の首を離した
埃まみれの床に投げ出され、私は咳き込みながらも息を思いっきり吸った

呼吸が整う頃には、叔父は自分の震える手を見つめていた
母親とその娘の諦めない意思、瞳が重なるように叔父の脳裏に焼き付くように

叔父は焦点が合わないようで、血が頭に上っており、室内に叔父の叫びが響き渡る

『ああ、やはりお前は…!
 血縁というのは恐ろしい
 お前だけは、私が殺してやらないと
 気が済まない!』

もう一度私に覆い被さり、顔を覆っているヴェールを剥ぎ取った
ヴェールが床に落ちた瞬間、さらに詰め寄る

『お前…醜くないではないか!
 その容姿は一体…!』

ヴェールに隠された顔は爛れた顔、窪んだ両目の面影すらなかった
この国で一番美しいとも言われても申し分ない容姿、美しさを纏っていた

『ええ、醜い姫ですよ 
 叔父様の想像通りの』

笑みを浮かべ、ゆっくりと言葉を紡ぐ

『言ったでしょう?あなたの思い通りには
 ならないと
 今、貴方に殺されるつもりはないわ』







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