醜い皮を被った姫君

ばんご

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嵐の前の静けさ

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嵐の前の静けさとはこのことだろうか
いつもと違い城内が静かで、空がどんよりしており、雲一つも見当たらないほどだ

静かな城内に足音が響く

『姫様、お久しぶりでございます』

叔父だ 父からの呼び出し以来だ
私は叔父を快く思っていない

小さい頃から、私のことを品定めするような目つきで、今も作り笑いの表情を崩さない
その表情の裏に何が隠されているのだろう

『お久しぶりです、叔父様
 何か私に用事でも?』

『最近、妙な噂を耳にしましてね 
 姫が隣国の王に楯突いてると』

そんな噂があるとは知らなかった
人の噂は当事者よりも、話しが大袈裟になるものだ

『それは誤解よ 私は王様に私達の婚姻を
 認めてもらおうと、足を運んでいるだけ』

『でしたら誤解を招く行いをしない方が
 よろしいかと
 悪足掻きは身を滅ぼしますよ』

『悪足掻きね、私は真剣よ
 真剣に彼と添い遂げたいと思っている』

反論するとは思わなかったのか、叔父は蔑む瞳で私を見て、ため息をつく

『意志は固いのですか?』

『ええ、諦めることは自分自身を否定
 してしまうから』

そう言うと叔父は一度視線を下に向け
仕方ありませんね、と呟く

その瞬間、見知らぬ人達が行く手を阻むように、私の両腕を掴んだ

『何をするの!離してください』

『姫様、私の目的に貴女の行動は目に余る
 つまり、邪魔なのですよ

 貴女に恨みはないですが…
 あの王子に会えないように
 心も体も、切り刻んで差し上げましょう』

そのねっとりとした笑みに、体が震えて仕方がなかった

そして私は反論を許されないよう、口元に布を当てられた
その布に染み込んだ薬物を思いっきり、吸い込んでしまい、徐々に意識が遠のいた

遠のく前に、お母様の耳飾りがその場に落ちてしまった 

(大切なものなのに…ごめんなさい)

そして私の意識は遮断した
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