醜い皮を被った姫君

ばんご

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女神が呪いをかけた理由

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私が決心がついた瞬間、辺りが輝きを増した
目を開けていられなくなり、目を瞑る

再び目を開けると視界が変わり、真っ白な空間に動揺する

傍には彼と私、そして声を発する暇もなく
神々しい女性が突如現れ微笑みかける

その女性には見覚えがあった
夢の中に出てきたあの女性
あの夢と女性の姿が重なった
私に呪いをかけた人だ

『突然こんな形でごめんなさいね
 けれど私にはこの方法でしか会うことを
 許されていないから』

女性は優しく微笑み、ゆっくりと歩み寄る
そして私を優しく抱きしめた

その抱擁は彼とは違った
その暖かな温もりに全てを委ねてしまいたいようで、とても心地よかった

『やっぱり貴女を選んでよかった
 期待外れしない選択をしてくれたわ』

『貴女は一体…何者なのですか?』

女性は私から体を離し、向き合う姿勢になる

『私は女神、貴女に醜い呪いをかけたもの』

女神は優しく微笑み、私の髪を撫でた
すると私の体が輝き、光に包まれた

眩い光がやむと私は容姿が変わっていた
艶のある髪、凛とした瞳
痩せ細った体も、しっかりと女性らしい体つきへと変化していた

その光景に彼は驚きもせず、彼女を見つめていた 寂しさと嬉しさが混じった表情で

彼女は自分の容姿を変わったことに気づき
気持ちが追いつかず、混乱した

ずっと欲しかったもの、望んでいたことだったのに 一瞬で叶ってしまった  

そして何故、女神は私に呪いをかけ
今呪いを解いたのか、わからなかった

どろどろと感情が、心が黒く塗りつぶされていくようだった

そんな彼女の気持ちを察してか、彼は彼女を後ろから抱きしめた

『姫、自分を見失わないで
 大丈夫です、落ち着いて』

その温もりに少しずつ心が落ち着いてきた
彼の腕に自分の手を添える

それは痩せ細った腕ではなかった
肉つきの良い女性らしい手
震えながらも女神に問う

『貴女は、何故私にこの呪いをかけたの
 ですか
 どうして今になって…呪いを?』

『貴女の…人間の選択を見たかった
 醜い皮を被った人間がどういう選択し、
 どう生きるかを』

女神は淡々と思いを話す

『人間は見た目を気にする生き物
 人間は何かに天秤をかけられると
 自分にとって有利な方を選ぶ 
 
 いつの時代も…そう思っていた』

そして私と彼を交互に見て、慈しむように見る
その笑顔は女神としてではなく、一人の女性としての笑顔に見えた

『貴女を呪ったのも、それが理由
 あの言葉通りに、すると思ったから
 人間だったら…誰でもよかった』

"その身に受けた呪いを取り除きたければ
 姫という立場を捨てるがよい"

女神は私がその言葉通りにすると
思っていたのかも知れない

『私も、人間たちを見下していたのかも
 しれない…
 貴女の行動を見てそう気付かされたわ  

 そして貴女にとっては許されない事を
 したのも…本当にごめんなさい』

女神の思いを聞き、私はどう答えていいのか分からなかった
女神は『人間』という存在に必要以上に固執していた

だからこそ聞いて見たかった
女神から見て人間はどんな存在かを

『…人間は嫌いですか?』

『ええ、嫌いよ 人を簡単に裏切り
 自分の欲に正直で、その欲のせいで
 犠牲なっている人もいると知らずに…』

今まで隣で聞いていた彼は言葉を紡ぐ

『それが人間の、美しさかも知れません』

女神はその発言に疑問を隠せない表情で彼を見つめる
彼もその威圧感に圧倒されずに、会話を続ける

『誰もが完璧な人はいません
 間違い、過ちを犯すでしょう
 それを正し、前を進むからこそ
 人は輝き続ける

 人間だからできることだと思います』

その言葉に女神は圧倒されてしまったように
ゆっくりと涙を流した
その流れる涙はとても美しかった

女神という存在だからかも知れない
けれどこの光景を見れば、皆そう思うだろう

『貴方は素敵な人ね
 人間でいるには勿体ないくらい
 貴方は何故そんなに前向きでいられるの
 かしら?』

『愛しい人がいるからです』

その言葉に胸が高鳴った
彼を見ると、優しい瞳で私を見つめた

呪いが解けたおかげで視力も少しよくなった
彼はいつもこんな表情で私を見ていたのね、
嬉しくて泣きそうだった

『愛しい人がいるからこそ、諦めない気持ち 
 が生まれ、頑張ろうと思うのです』

彼は思ったことを言っただけかも知れない
けれどその思いが、とても嬉しく感じた
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