2 / 31
語りかけてくる声
しおりを挟む
この国の姫は醜かった
産まれた時から醜く、両親は愛してくれなかった
愛を注ぐのは、いつも世話係だけ
けれど、姫が成人を迎える頃には、世話係は解雇され一人ぼっちになった
それが悲しくて私は思ってしまった
こんな醜い体じゃなかったら、と
姿見を見て思う
窪んだ両目、痩せ細った体
艶のない腰までのびた髪
皆が私をこう呼ぶ
人の皮を被った化け物だと
望んでこうなった訳ではないのにと
悲しみに浸ってしまうのだった
そんなある日、語りかける声がした
『その身に受けた呪いを取り除きたければ
姫という立場を捨てるがよい』
周りを見渡すが、人姿すら見当たらない
その声は何回も繰り返す
まるで呪いの様に
姫には慕っている人がいた
その人は隣国の王子だ
父の商談であった仲だが、初対面の頃から彼は私の醜い姿を見ても何も言わず、微笑みかける
私が泣いていると慰めてくれて、決して汚れた言葉を口にしない
私を罵ったりしない
いつもこう言ってくれるのだ
『姫は醜くありません、とても美しいです
もっと自信を持ってください
姫が笑ってくれるのなら何度でも
言いましょう』
それが嬉しかった
だから姫という立場を捨ててしまったら
彼に会えなくなってしまう
それが一番悲しかった
姫という立場に未練はない
捨てたいとも思うほどに
もうどうすればいいのか、わからなかった
産まれた時から醜く、両親は愛してくれなかった
愛を注ぐのは、いつも世話係だけ
けれど、姫が成人を迎える頃には、世話係は解雇され一人ぼっちになった
それが悲しくて私は思ってしまった
こんな醜い体じゃなかったら、と
姿見を見て思う
窪んだ両目、痩せ細った体
艶のない腰までのびた髪
皆が私をこう呼ぶ
人の皮を被った化け物だと
望んでこうなった訳ではないのにと
悲しみに浸ってしまうのだった
そんなある日、語りかける声がした
『その身に受けた呪いを取り除きたければ
姫という立場を捨てるがよい』
周りを見渡すが、人姿すら見当たらない
その声は何回も繰り返す
まるで呪いの様に
姫には慕っている人がいた
その人は隣国の王子だ
父の商談であった仲だが、初対面の頃から彼は私の醜い姿を見ても何も言わず、微笑みかける
私が泣いていると慰めてくれて、決して汚れた言葉を口にしない
私を罵ったりしない
いつもこう言ってくれるのだ
『姫は醜くありません、とても美しいです
もっと自信を持ってください
姫が笑ってくれるのなら何度でも
言いましょう』
それが嬉しかった
だから姫という立場を捨ててしまったら
彼に会えなくなってしまう
それが一番悲しかった
姫という立場に未練はない
捨てたいとも思うほどに
もうどうすればいいのか、わからなかった
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】平安の姫が悪役令嬢になったなら
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢に転生した、平安おかめ姫と皇太子の恋物語。
悪役令嬢のイザベルはある日、恨みをかったことで階段から突き落とされて、前世の記憶を思い出した。
平安のお姫様だったことを思い出したイザベルは今の自分を醜いと思い、おかめのお面を作りことあるごとに被ろうとする。
以前と変わったイザベルに興味を持ち始めた皇太子は、徐々にイザベルに引かれていき……。
本編完結しました。番外編を時折投稿していきたいと思います。
設定甘めです。細かいことは気にせずに書いています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完膚なきまでのざまぁ! を貴方に……わざとじゃございませんことよ?
せりもも
恋愛
学園の卒業パーティーで、モランシー公爵令嬢コルデリアは、大国ロタリンギアの第一王子ジュリアンに、婚約を破棄されてしまう。父の領邦に戻った彼女は、修道院へ入ることになるが……。先祖伝来の魔法を授けられるが、今一歩のところで残念な悪役令嬢コルデリアと、真実の愛を追い求める王子ジュリアンの、行き違いラブ。短編です。
※表紙は、イラストACのムトウデザイン様(イラスト)、十野七様(背景)より頂きました
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる