鏡が望む願い

ある伝説があった
鏡に見そめられた少女は、素敵な殿方と結ばれると
皆、憧れていた

年頃の女子の部屋には、姿見の鏡が置かれていた
どんな鏡でもいいのだ
鏡に自分の姿が映れば

そして、女子はお決まりのセリフを言う
しっかりとめかし込んだ
けれど、それは偽りの自分の容姿を纏わせた姿

唇に紅をさし、肌は透き通るように白粉を塗り
髪は艶が出るように椿油を塗った
その姿で

『鏡よ、鏡よ、鏡さん
 私に相応わしい殿方と結ばわせて』

夢見る女子達は何一つ疑わない
皆が自分を美しいと思っているから
けれど、鏡は知っている

女子の中にあるのは、醜い心
その心は、魔女になる証

偽った容姿で、素敵な殿方をと
懇願する女子達に嫌気が指すのは無理もなかった

けれど、その中でセリフを言わなかった者もいたのだ
ただ、鏡を見つめるだけの女子
容姿は見すぼらしかったが、磨けば艶がでるだろう

鏡は興味を湧いた
この女子は、自分にどんな願いを言うのだろう
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