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己自身と向き合い
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あの時の俺は、名前を変えたことに対しての意味はなかった
ただ、自分だと認識したくなくて現実逃避するように名を変えた
リアムという名はどこかの国では
『永遠の敗者』という意味らしい
外国の書物で目を通したことがあり、自分にピッタリじゃないかと
欲望を目にして手を伸ばした
けど、騙されて姿を変えられ、魂の縛りによって死ぬことは許されない、敗北の姿
自分を戒めるように、偽りの自分を演じた
それこそが自分自身をさらに痛めつけているとは知らずに
そんな悪魔としての自分の姿が目の前に現れ
俺自身を瞳に捉えている
『お前は、リアムとしての俺なのか?』
今は二人だけしかこの場にはいない
そんな緊迫した空気の中、俺はそれしか言えなかった
以前の自分の容姿に語りかけているのも、なんとも言えない心情、光景ではある
『そうだ、俺はお前
樹の中にある隠れている部分を姿にした
わかるだろう?』
リアムは、もう一人の樹
樹の中の隠れている部分、それは迷いの心
陽菜に隠していること
樹の願い事、代償を まだ言えていなかった
言えなかったのだ
きっと、言ってしまえば傷ついて
さらに悲しませ、陽菜に深い傷を負わせてしまうことに
わかっていたからこそ、言える勇気が持てなかった
真実を隠すことも、優しさなのだと思い込んで
『けれど、俺はまだ…怖いんだ
きっと言ってしまえば楽だと思う
けれど、それは甘えという逃げでは
ないかと、思ってしまうんだ』
自分自身に嘆くことになるとは思わなかった
それほどに俺は、隠していることに怖気付いてしまっているのだと
『恐れこそ甘えだ
樹は決めたじゃないか、陽菜の思いを
受け止めたその時に
あれは嘘だったのか?』
『嘘じゃない、本心だ
陽菜は優しい子だ、真実を知ったら
きっと泣いて許してくれるだろう
俺は陽菜の優しさに甘えてるにすぎない
そんな資格…俺にはないのに』
自分でも弱音を吐いた
言い訳に過ぎない
人は、向き合いたくない物事が目の前に現れると言い訳してその場を凌ぐ
そうすることで自分を守っている
時にその矛先を、遠慮なく人に向ける
相手のことを考えずに
俺を気味悪がってた周りの人の気持ち、感情
それは今俺の中で巣食っているものと同じだ
今になってわかった
下を向くと同時に、胸ぐらを掴まれた
その赤い瞳は、怒りと揺るぎない力強さが込められていた
『確かに資格はないかもしれない
優しさに甘えてるだけと捉えるのも
無理はない
けれど、それでも陽菜は
樹を望んでいるんだ
自分を卑下するのも勝手にしろ
だが、陽菜の願いを叶えてやれるのは
お前しかいないんだ!』
その声音は自分の心の叫びのように悲痛な思いが込められていた
だからだろうか
悲観的な己の心に、灯火が灯ったように
大きな決意へと変わっていく
その瞬間、リアムの体が透けていった
まるで自分の役目を終えたかのように
驚きを隠せずに、リアムを見つめると小さく微笑んだ
『俺は樹の迷った心のほんの一部に過ぎない
樹の迷いがなくなったから、俺はまた
樹の中に戻るだけ』
『…もう、お前とは会うことはないんだな』
『俺はお前だ、ずっとお前の中に存在し
続ける
俺の分まで、陽菜を幸せにしてやって
くれ』
そしてリアムは消えた
樹の心の中にへと
『ありがとう、もう一人の俺
お前が俺でよかった
もう二度と、間違えたりしない』
それは、リアムとしての自分に贈るはなむけの言葉
ただ、自分だと認識したくなくて現実逃避するように名を変えた
リアムという名はどこかの国では
『永遠の敗者』という意味らしい
外国の書物で目を通したことがあり、自分にピッタリじゃないかと
欲望を目にして手を伸ばした
けど、騙されて姿を変えられ、魂の縛りによって死ぬことは許されない、敗北の姿
自分を戒めるように、偽りの自分を演じた
それこそが自分自身をさらに痛めつけているとは知らずに
そんな悪魔としての自分の姿が目の前に現れ
俺自身を瞳に捉えている
『お前は、リアムとしての俺なのか?』
今は二人だけしかこの場にはいない
そんな緊迫した空気の中、俺はそれしか言えなかった
以前の自分の容姿に語りかけているのも、なんとも言えない心情、光景ではある
『そうだ、俺はお前
樹の中にある隠れている部分を姿にした
わかるだろう?』
リアムは、もう一人の樹
樹の中の隠れている部分、それは迷いの心
陽菜に隠していること
樹の願い事、代償を まだ言えていなかった
言えなかったのだ
きっと、言ってしまえば傷ついて
さらに悲しませ、陽菜に深い傷を負わせてしまうことに
わかっていたからこそ、言える勇気が持てなかった
真実を隠すことも、優しさなのだと思い込んで
『けれど、俺はまだ…怖いんだ
きっと言ってしまえば楽だと思う
けれど、それは甘えという逃げでは
ないかと、思ってしまうんだ』
自分自身に嘆くことになるとは思わなかった
それほどに俺は、隠していることに怖気付いてしまっているのだと
『恐れこそ甘えだ
樹は決めたじゃないか、陽菜の思いを
受け止めたその時に
あれは嘘だったのか?』
『嘘じゃない、本心だ
陽菜は優しい子だ、真実を知ったら
きっと泣いて許してくれるだろう
俺は陽菜の優しさに甘えてるにすぎない
そんな資格…俺にはないのに』
自分でも弱音を吐いた
言い訳に過ぎない
人は、向き合いたくない物事が目の前に現れると言い訳してその場を凌ぐ
そうすることで自分を守っている
時にその矛先を、遠慮なく人に向ける
相手のことを考えずに
俺を気味悪がってた周りの人の気持ち、感情
それは今俺の中で巣食っているものと同じだ
今になってわかった
下を向くと同時に、胸ぐらを掴まれた
その赤い瞳は、怒りと揺るぎない力強さが込められていた
『確かに資格はないかもしれない
優しさに甘えてるだけと捉えるのも
無理はない
けれど、それでも陽菜は
樹を望んでいるんだ
自分を卑下するのも勝手にしろ
だが、陽菜の願いを叶えてやれるのは
お前しかいないんだ!』
その声音は自分の心の叫びのように悲痛な思いが込められていた
だからだろうか
悲観的な己の心に、灯火が灯ったように
大きな決意へと変わっていく
その瞬間、リアムの体が透けていった
まるで自分の役目を終えたかのように
驚きを隠せずに、リアムを見つめると小さく微笑んだ
『俺は樹の迷った心のほんの一部に過ぎない
樹の迷いがなくなったから、俺はまた
樹の中に戻るだけ』
『…もう、お前とは会うことはないんだな』
『俺はお前だ、ずっとお前の中に存在し
続ける
俺の分まで、陽菜を幸せにしてやって
くれ』
そしてリアムは消えた
樹の心の中にへと
『ありがとう、もう一人の俺
お前が俺でよかった
もう二度と、間違えたりしない』
それは、リアムとしての自分に贈るはなむけの言葉
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