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放課後の出来事の余韻
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陽君に伝わったかは、わからない
けど、握った手を握り返してくれて
ありがとう、と言ってくれたように
こんな伝え方もあるんだな、と私は知れた
『‥そろそろ、帰ろっか
日が沈みそうだ、送るよ』
私は頷いた
家路までの間、その手を離れることはなかった
道中も話は尽きず、彼はよく話をしてくれた
好きな食べ物、趣味、休日の過ごし方
他にも色んなことを
私は相槌を打つことしかできなかったが、それでもこの他愛ない時間がもっと続けばいいのに
だからか、私の家に着くのはあっという間だった
時間は長いようで、短い
彼との別れは、とても名残惜しかった
明日も学校で会えるのに
私は感謝を伝えたくて、今日感じたこと、思いを言葉を紙に書き記した
思いが昂って、少し乱雑な字になってしまったけれど
(陽君、今日はありがとう
とても楽しかった、また行こうね)
『うん、俺も楽しかった
優希さんの楽しそうな笑顔が見れて
よかったよ』
お互い微笑み合い、また明日と、手を振ろうとするとちょうど妹が帰ってきたようだ
私と陽君の関係がどう思ったのかは知らない
一瞬驚愕した表情をしたが、すぐに無表情になった
そして私達など見えないかのように、素通りにして家へと入っていった
それだけのことなのに、私にとっては悲しかった
(目も合わせてくれないほどに、香織は私の事‥)
どうしても、あの日から香織との間に壁ができてしまった。両親ともそう
他愛ないコミュニケーションが、できないほどに
お互い気を遣いあってしまっていた
『今家に入っていった子は、妹さん?』
私はゆっくりと頷いた。
彼に私と妹の間にある溝を知られたくなくて
(妹はきっと私の事嫌いなの、それでも私に
とっては大切なかけがえのない妹
可愛くて、仕方がないの)
陽君は何か言いたそうだったけど、私は遮るように玄関まで歩いた
(本当に今日はありがとう
また、明日ね)
微笑んで手を振った
彼もつられたかのように、微笑んで振り返って手を振ってくれた
私は玄関で彼を見送った
彼の姿が、私の視界から消えるまで
いつもの帰り道だった
私よりもいつも早く帰宅してる姉が、笑っていた
あんな笑顔、見た事なかった
いつも困ったように笑うから
そんな笑顔に苛ついて、思っていない言葉で何回姉を傷つけただろう
今更、謝ろうともできない
謝ろうとしたけれど、あの頃は自分のことで精一杯だった。言い訳にしか聞こえなくもない
友達に姉のことを指摘され、笑いものにされた
悲しかった、自慢の姉だったのに
声が出なくてもわかった
優しくて、温かった
けれど、私は自慢の姉を自分の勝手で、関係を壊してしまった
謝ったとしても、姉は許すだろう
心優しい姉だから、本当は傷ついてる
なのに本人は傷ついていることすら分からない
わからないほどに、周りは姉を傷つけ、虐げた
声が出ない、たったそれだけで
私もその一人だ
だって、姉の隣にいた男の人が、突き刺すような瞳で私を見ていた
きっと知っている、周りが姉にした仕打ちを
私もその周りの一人に入ってしまっていることにも気がついている
私は恐怖で、急いで家へと入った
心臓が脈打っている、警鐘が鳴っているかのよう
あの男の人はいったい、何なのだろう
姉に問いただそうにも、それは今の私にはできなかった
その夜は、中々眠らなかった
彼と過ごした放課後の出来事の余韻を、思い出したのもあったからかも知れない
思い出すだけで、口角が上がり胸が高鳴った
こんなに嬉しかったのは、いつぶりだろう
けれど、瞼はだんだんと落ちてきて、私は眠りについた
夢の中はふわふわしていてて、内容までは覚えていない
けど、陽君がいた気がした
それだけで、自然と笑みが溢れた
目が覚めると目元が涙で濡れていた
なぜかはわからない
私は、不思議に思いながら涙を拭った
『それでも私にとっては、かけがえのない
大切な妹
可愛くて、仕方がないの』
優希は、そう言った
曇りのない瞳で、優しく微笑んで
『優希は、変わらないな
けど、俺は許せそうにない』
あの時、どう言うか迷った
けれど、優希は言葉はいらないと言うように
身を翻した
まるで、今日の放課後の出来事を体で表現するかのように
『‥俺は優希を守りたい、助けたい
だから、その為に‥』
その行く先に迎えてくれるのは、誰もわからない
未来は誰もわからない、選んだ道が正しいことではなかったとしても
脳裏に光景が焼き付いた
忘れたくても、忘れることができない悲惨な光景
最後に見た彼女の悲しみを含んだ瞳
忘れてはいけない、そうして俺は踏み出す
行動に移した
けど、握った手を握り返してくれて
ありがとう、と言ってくれたように
こんな伝え方もあるんだな、と私は知れた
『‥そろそろ、帰ろっか
日が沈みそうだ、送るよ』
私は頷いた
家路までの間、その手を離れることはなかった
道中も話は尽きず、彼はよく話をしてくれた
好きな食べ物、趣味、休日の過ごし方
他にも色んなことを
私は相槌を打つことしかできなかったが、それでもこの他愛ない時間がもっと続けばいいのに
だからか、私の家に着くのはあっという間だった
時間は長いようで、短い
彼との別れは、とても名残惜しかった
明日も学校で会えるのに
私は感謝を伝えたくて、今日感じたこと、思いを言葉を紙に書き記した
思いが昂って、少し乱雑な字になってしまったけれど
(陽君、今日はありがとう
とても楽しかった、また行こうね)
『うん、俺も楽しかった
優希さんの楽しそうな笑顔が見れて
よかったよ』
お互い微笑み合い、また明日と、手を振ろうとするとちょうど妹が帰ってきたようだ
私と陽君の関係がどう思ったのかは知らない
一瞬驚愕した表情をしたが、すぐに無表情になった
そして私達など見えないかのように、素通りにして家へと入っていった
それだけのことなのに、私にとっては悲しかった
(目も合わせてくれないほどに、香織は私の事‥)
どうしても、あの日から香織との間に壁ができてしまった。両親ともそう
他愛ないコミュニケーションが、できないほどに
お互い気を遣いあってしまっていた
『今家に入っていった子は、妹さん?』
私はゆっくりと頷いた。
彼に私と妹の間にある溝を知られたくなくて
(妹はきっと私の事嫌いなの、それでも私に
とっては大切なかけがえのない妹
可愛くて、仕方がないの)
陽君は何か言いたそうだったけど、私は遮るように玄関まで歩いた
(本当に今日はありがとう
また、明日ね)
微笑んで手を振った
彼もつられたかのように、微笑んで振り返って手を振ってくれた
私は玄関で彼を見送った
彼の姿が、私の視界から消えるまで
いつもの帰り道だった
私よりもいつも早く帰宅してる姉が、笑っていた
あんな笑顔、見た事なかった
いつも困ったように笑うから
そんな笑顔に苛ついて、思っていない言葉で何回姉を傷つけただろう
今更、謝ろうともできない
謝ろうとしたけれど、あの頃は自分のことで精一杯だった。言い訳にしか聞こえなくもない
友達に姉のことを指摘され、笑いものにされた
悲しかった、自慢の姉だったのに
声が出なくてもわかった
優しくて、温かった
けれど、私は自慢の姉を自分の勝手で、関係を壊してしまった
謝ったとしても、姉は許すだろう
心優しい姉だから、本当は傷ついてる
なのに本人は傷ついていることすら分からない
わからないほどに、周りは姉を傷つけ、虐げた
声が出ない、たったそれだけで
私もその一人だ
だって、姉の隣にいた男の人が、突き刺すような瞳で私を見ていた
きっと知っている、周りが姉にした仕打ちを
私もその周りの一人に入ってしまっていることにも気がついている
私は恐怖で、急いで家へと入った
心臓が脈打っている、警鐘が鳴っているかのよう
あの男の人はいったい、何なのだろう
姉に問いただそうにも、それは今の私にはできなかった
その夜は、中々眠らなかった
彼と過ごした放課後の出来事の余韻を、思い出したのもあったからかも知れない
思い出すだけで、口角が上がり胸が高鳴った
こんなに嬉しかったのは、いつぶりだろう
けれど、瞼はだんだんと落ちてきて、私は眠りについた
夢の中はふわふわしていてて、内容までは覚えていない
けど、陽君がいた気がした
それだけで、自然と笑みが溢れた
目が覚めると目元が涙で濡れていた
なぜかはわからない
私は、不思議に思いながら涙を拭った
『それでも私にとっては、かけがえのない
大切な妹
可愛くて、仕方がないの』
優希は、そう言った
曇りのない瞳で、優しく微笑んで
『優希は、変わらないな
けど、俺は許せそうにない』
あの時、どう言うか迷った
けれど、優希は言葉はいらないと言うように
身を翻した
まるで、今日の放課後の出来事を体で表現するかのように
『‥俺は優希を守りたい、助けたい
だから、その為に‥』
その行く先に迎えてくれるのは、誰もわからない
未来は誰もわからない、選んだ道が正しいことではなかったとしても
脳裏に光景が焼き付いた
忘れたくても、忘れることができない悲惨な光景
最後に見た彼女の悲しみを含んだ瞳
忘れてはいけない、そうして俺は踏み出す
行動に移した
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