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初めての寄り道
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初めてできた友達という存在に浮かれていた
憧れていたのだ、その存在に
周りのクラスメイトを見て、和気藹々と楽しんでる姿、放課後の予定を立てたりと
きっと楽しいんだろうな
けれど、声が出ない私にはきっと叶うことなどないだろう
だが、高校3年生になって、その願いが叶うかも知れないと淡い期待を胸に秘めていた
陽君に恋愛感情はない
けれど、女子生徒は私と陽君の関係をそういう目で見てくる
否定しても疑いはかけられるばかり
だからそれ以上は何もしない事にした
否定すればするほど、彼女達に刺激を与えるばかりだから
女子とはそういうものだ
最初はその視線が痛くて、彼からも遠ざけるように態度とかで示したりした
けれど、彼は私の行動をわかっているかのように先回りする
驚くほどに、彼の方が上手だったのだ
勘が良い、とも言う
『周りの視線が気になるなら、好きにさせとけば
いいさ
俺達の関係に口出しする権利なんて
ないんだから』
その言葉に納得してしまった
何故、他人に、周りの人達に振り回されながら
自分たちが何かを我慢しなくてはいけないのかと
彼の言葉には説得力があった
ある日の放課後、私はいつものように帰り支度をしていた
私は部活に所属していない、帰宅部だ
陽君もそうだ、部活に入るつもりはないらしい
あんなに明るい子だから、運動部に所属すると思っていたから、意外だった
私に合わせてると思ったが、違ったみたい
きっと家の事情とか、色々あるかも知れない
鞄を背負って、下駄箱で靴を履き替えていると
誰かが背中を軽く叩いた
振り返ると、陽君だった
『優希さん、今帰り?』
ゆっくりと頷く私に、彼は遠慮がちに誘ってきた
『優希さんがよかったらさ、寄り道して
帰らないかな?
あ、もしかして用事あったりする?』
そのお誘いに私は胸が躍った
私は家に帰るのが嫌で、放課後友達同士で
戯れている様子を見て、下校するが習慣になっていた
きっと私には、できることのないものだと
ドラマや、小説の中で感じることでいいと思っていた
けれど目の前に、憧れていた、羨ましかったものがある
それが嬉しくて私はつい陽君の手を握ってしまった
彼も驚いたようだが、私はそれを気にしてる余裕はなく、無我夢中でいっぱい頷いた
周りのクラスメイトはその異様な光景に、注目を浴びてしまったが、陽だけには見えた
彼女が、涙ぐむように小さく微笑んでいたことを
陽君の誘いに承諾し、寄り道して帰った
目的があるわけではない、少ない所持金で買い食いをして、それを食べ合いっこしたり
それだけのこと、その小さなことが私は嬉しかった
嬉しくて、口角が上がって仕方がなかった
陽君はそれに気づいてるはずなのに、指摘はせずに微笑ましいように私を見る
その微笑みに、私は少しだけ胸がドキッとした
母性本能、というものだろう
異性と接する機会なんて、あまりなかったので
私はどう会話を切り出せばいいのか、接し方も
わからなかった
(陽君は、何か寄りたいところとかないの?)
『そうだな、この街の景色を見てみたいかな
まだ引っ越してきてばかりで、曖昧だし』
遠くを見つめるように、彼は空を見上げる
まだ日が陰るにはまだ早く、夕陽が二人を照らす
彼が太陽に照らされると、悲しい気持ちになる
どうしてなのか、わからない
彼に纏う空気がそうさせたのかも知れない
そのまま消えていなくなってしまいそうな、そんな気持ちにさせられた
無意識だったのかも知れない、彼の服の裾を引いてしまった
彼は驚いたように、私を見つめる
お互いにその視線を、逸らすことができなかった
何か言わなくてはいけない
言葉の代わりに伝えられるもの
陽君に見つめられる中
私は服の裾から、彼の手を握った
自分でも何をしてるのだろうと思った
恋人同士でもないのに
人肌に触れることで穏やかな気持ちになれる
声が出ない私には、そんな伝え方しかできなかった
憧れていたのだ、その存在に
周りのクラスメイトを見て、和気藹々と楽しんでる姿、放課後の予定を立てたりと
きっと楽しいんだろうな
けれど、声が出ない私にはきっと叶うことなどないだろう
だが、高校3年生になって、その願いが叶うかも知れないと淡い期待を胸に秘めていた
陽君に恋愛感情はない
けれど、女子生徒は私と陽君の関係をそういう目で見てくる
否定しても疑いはかけられるばかり
だからそれ以上は何もしない事にした
否定すればするほど、彼女達に刺激を与えるばかりだから
女子とはそういうものだ
最初はその視線が痛くて、彼からも遠ざけるように態度とかで示したりした
けれど、彼は私の行動をわかっているかのように先回りする
驚くほどに、彼の方が上手だったのだ
勘が良い、とも言う
『周りの視線が気になるなら、好きにさせとけば
いいさ
俺達の関係に口出しする権利なんて
ないんだから』
その言葉に納得してしまった
何故、他人に、周りの人達に振り回されながら
自分たちが何かを我慢しなくてはいけないのかと
彼の言葉には説得力があった
ある日の放課後、私はいつものように帰り支度をしていた
私は部活に所属していない、帰宅部だ
陽君もそうだ、部活に入るつもりはないらしい
あんなに明るい子だから、運動部に所属すると思っていたから、意外だった
私に合わせてると思ったが、違ったみたい
きっと家の事情とか、色々あるかも知れない
鞄を背負って、下駄箱で靴を履き替えていると
誰かが背中を軽く叩いた
振り返ると、陽君だった
『優希さん、今帰り?』
ゆっくりと頷く私に、彼は遠慮がちに誘ってきた
『優希さんがよかったらさ、寄り道して
帰らないかな?
あ、もしかして用事あったりする?』
そのお誘いに私は胸が躍った
私は家に帰るのが嫌で、放課後友達同士で
戯れている様子を見て、下校するが習慣になっていた
きっと私には、できることのないものだと
ドラマや、小説の中で感じることでいいと思っていた
けれど目の前に、憧れていた、羨ましかったものがある
それが嬉しくて私はつい陽君の手を握ってしまった
彼も驚いたようだが、私はそれを気にしてる余裕はなく、無我夢中でいっぱい頷いた
周りのクラスメイトはその異様な光景に、注目を浴びてしまったが、陽だけには見えた
彼女が、涙ぐむように小さく微笑んでいたことを
陽君の誘いに承諾し、寄り道して帰った
目的があるわけではない、少ない所持金で買い食いをして、それを食べ合いっこしたり
それだけのこと、その小さなことが私は嬉しかった
嬉しくて、口角が上がって仕方がなかった
陽君はそれに気づいてるはずなのに、指摘はせずに微笑ましいように私を見る
その微笑みに、私は少しだけ胸がドキッとした
母性本能、というものだろう
異性と接する機会なんて、あまりなかったので
私はどう会話を切り出せばいいのか、接し方も
わからなかった
(陽君は、何か寄りたいところとかないの?)
『そうだな、この街の景色を見てみたいかな
まだ引っ越してきてばかりで、曖昧だし』
遠くを見つめるように、彼は空を見上げる
まだ日が陰るにはまだ早く、夕陽が二人を照らす
彼が太陽に照らされると、悲しい気持ちになる
どうしてなのか、わからない
彼に纏う空気がそうさせたのかも知れない
そのまま消えていなくなってしまいそうな、そんな気持ちにさせられた
無意識だったのかも知れない、彼の服の裾を引いてしまった
彼は驚いたように、私を見つめる
お互いにその視線を、逸らすことができなかった
何か言わなくてはいけない
言葉の代わりに伝えられるもの
陽君に見つめられる中
私は服の裾から、彼の手を握った
自分でも何をしてるのだろうと思った
恋人同士でもないのに
人肌に触れることで穏やかな気持ちになれる
声が出ない私には、そんな伝え方しかできなかった
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