【R-18】『対魔のくノ一・ナツキ』~人間、忍者、魔物から犯され、セックス依存になるまで堕ちる少女~

文々奈

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第3章 淫武御前トーナメントの章

63話 葉月VS主催者

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 63話 葉月VS主催者
 
 今まで散々こき使って来た金田樽男に、翔子は堕とされてしまった。これにより、淫魔との戦いに一番慣れた翔子が、くノ一チーム最初の脱落者となる。

 一方、その頃、ナツキはというと――。
 自身が作り出したワープゲート思い出のホテルが爆発するも、翔子に庇ってもらい、掠り傷の一つとして負わずに済んだのであった。
 そして、そのナツキの視線は、今ある一点に向けられている。
 ナツキは気配を殺して一つの死闘を見詰めていた。

 ……強い。思っていたよりずっと。

 戦っているのは、白無垢に身を包んで表情さえ隠している妖女・葉月。うれいを含んだ口元だけが隠れること無く見えるため、そこへと視線を向け続けてしまう。
 その白無垢へと、ボワンッ! ボワンッ! と空気に穴を開ける勢いで豪腕が伸びる。
 相手の男は、主催者の男だった。
 単純な戦闘能力なら、淫魔チームでも随一だろう。初めて見たときからその印象は変わらなかった。

 しかし、その豪腕は葉月に当たらない。
 葉月の身体はまるでシルクだった。
 闘牛士が振るうマントのように、鋭い突きが無垢を靡かせるに過ぎないのだ。
 しかし、避けているという訳でも無い。
 見方によっては、男が寸止めを繰り返しているようにも見えた。
 生死を賭けた戦いの最中である。かなり奇怪な光景に映った。
 拳先がボワンッ、ボワンッ! と白無垢を扇ぐのだ。
 その様子に、ナツキ自身もピントがズレてしまったような錯覚を覚えていた。

「驚きましたね。風魔の葉月。まさかここまでの実力をお持ちとは。トリックも分からないままです。――ですが」

 腰を落とす男。
 正拳突きの構えだった。
 腰を落としたまま、小指から薬指、薬指から中指へ――、指の根元から指の先まで一本一本へと十二分な気を練り込むように握り締めていく。
 何をしようとしているのか相手にはっきり分かってしまうテレホンパンチ。

「反射とも取れる貴女の力が、実際どのような力なのか分からないなら、分からないままに破壊しましょう」

 言われた葉月の口元から愁いを含んだ笑みが消える。ふわあんっ、と舞い飛んでいったバルーンの如き軽やかさで、葉月は主催の男から距離を置いた。
 拳どころか、蹴りさえも届かない距離。
 しかし、主催の男の拳からは、突き出されようものなら軌道上にあるもの全てが貫かれる、と誇張無しに思ってしまうほどの力が溜め込まれていた。

「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 練った気を口から吐き出すような咆哮と同時に、淫気が拳の形を浮かび上がらせ、葉月の身体を飲み込み、それが白無垢を黒い炎で燃やし尽くした。

 ――同時に拳を突き出したままの男の背後に飛んだナツキが、――ザシュッ! 
 クナイで背中を斬り付けた。

「ぐぅ……ォッ!!」

 不意を突いたが、大太刀を取り出す余裕が無く、手持ちのクナイで斬り掛かったせいで致命傷には至らなかった。
「ぐぉオオオッ!」
 クナイの刺さったまま、主催から裏拳を放たれて、ナツキはバックステップで距離を取った。

「ひ、卑怯なっ……」

「――卑怯? 確かに卑怯かもね。でも、卑怯者と罵られないことよりも、味方の命の方が大事だから」

 そう言ってナツキは軽くステップを踏み、右利きと左利きを繰り返すようにリズミカルに跳ねた。
 そんな中でボワアアッ! と主催の身体が黒炎に飲み込まれ、悲鳴さえ許されずにこの世界から消されてしまったのだ。
 これは……。お母さん、……葉月の術。
 葉月の方へと視線を向けると、黒い炭クズへと姿を変えた主催者を指差していた。
 ……また同じ。これが葉月の忍術。
 眼前で見るのは2度目となる忍術であった。だが初めて見た時同様、またしても忍術の正体は分からなかった。

「はぁ……はぁ…………。いつから、いたんですの…………っ……」

 白無垢を燃やし尽くされ一瞬裸体を晒し者にされた葉月であったが、それすらも元通りになっていた。
 だが、息遣いだけではなく、声色、体温の上昇、心拍の増加、発汗量まで、未知の術を使用する前と後では明らかに違っていた。
 やはり一度まともに受け止めてからそれを跳ね返したりしているのだろうか? 
 
「あの男が乱打を打ち込み始める少し前? から見ていたよ。――葉月って、強いんだね。分かっていたけど」

「強い? 嫌味ですの? 違うのなら謙虚ですのね」

 嫌味? 謙虚? なにを言っているんだろう。
 邪魔したことを怒っているのだろうか?
 思いながら先を急ぐナツキは、無駄なく問い掛ける。

「本当は乱入するつもりじゃなかったんだけどね。まだ戦えそう? 少し苦しそうだけど」

「当然ですわ」

 平静を装っているが、呼吸の乱れを隠しきれない葉月ではあった。
 だからといって、葉月を気遣えるほど、時間的にも状況的にも余裕はなく、ナツキは端的に置かれた状況を伝えていく。

「ここから40キロくらい離れたところでエリナが戦っている。場所は、――風魔の道場。実力的には押しているんだけど、なぜかエリナは責めあぐねているみたい」
 
「……そんなことまで分かってしまうんですの? ――たった数日会わないだけで見違えましたわね。さっきの男をわたくしに気取られずに斬り付けたことも含め……。ほんと嫉妬しますわ」
 
「何言ってるの? 影遁の術があるから仮想空間のことは大体分かるって言ったでしょ? 本当に大丈夫なの? 戦えるの? やっぱり疲れているんじゃないの?」

 おしろいを塗ったように白い頬を、葉月はみるみるうちに薄紅色へと赤らめていった。
 その様子を見て、ナツキはそれ以上突っこむのをよして、エリナが戦う風魔忍軍の屋敷へと先導するのであった。

 パキンッ! カキンッ! ガシャアッ、ギンッ!

 責めあぐねていると思っていたエリナだったが、エリナと相手の男、黒装束を纏った男との実力差は歴然としていた。

 黒装束の男が軌道を隠すために、装束の袖から鎖鎌の分銅を投げるも、エリナは悠々と弾いている。傍目で見ているよりも大きな力の差があった。

「苦戦するでも、何かを狙っているでもありませんわね。無駄に長引かせていますわ。……ナツキ。事情がおわかりで?」
 
 一緒に攻防の様子を見守っていたナツキであったが、エリナの事情なんて分かるはずも無く、「分からない」そう返事したところで、装束の男が分銅を摘まむように揺らす仕草を見てハッとする。

 対戦相手の男の動きに見覚えがあったのだ。
 ――まさか。
 心当たりが浮かび上がったところで――

「榎本! 聞こえないの!? 耳まで腐ってんの!?」

 エリナが叫んだ。
 やっぱり榎本君だったのか。
 利き足が右に対して、利き手は左手。それでいて、モノを摘まむときに親指と薬指で掴む癖があって、スマホを吊すときと同じように分銅も吊して揺らしていた。

 カキィインンッ!! 
  
 エリナの叫びは無視されて、分銅を投げ付けられるが、エリナはクナイを振るって弾き返す。ピッチャーライナーと言わんばかりの勢いで跳ね返る分銅が、榎本君の黒頭巾に直撃した。
 ブファンッ! と頭巾が千切れ飛ぶ。
 ……うっ。
 榎本君の顔が露わになって、ナツキは声を詰まらせた。
 頭巾と一緒に顔の肉まで飛ばされた……。
 そう思ってしまうほどに崩れた顔が頭巾の中から現れたのだ。

 どういうこと……。

 下手くそなエステティシャンに泥パックを塗りたくられて放置された……。
 そう思ってしまうくらいに悲惨な顔だった。

 ほんとに、どういうこと……?
 
 もともとエリナは榎本君を助けるためにこの大会に参加した。
 古賀茂に取り込まれた榎本君を、逆さま玉手箱を使って分離させるつもりだった。
 なぜ鎖鎌を振り回されているのだろうか。茂との分離に失敗した?

「チィイッ!」

 思案している中、榎本君が鎖鎌を丸々投げ付けて逃げ出した。
 顔が泥のように溶けているものの、動きは俊敏だった。
 しかし、それはあくまで一般人と比べればの話。当然ながらエリナの方が素早く、榎本君の進路に回りこんで立ち塞がった。

「待ちなよ! どうしてここにいるのかとか色々よく分からないけど、治してあげられるからっ……ぇ…………? えぇえ!?」

 エリナが説得している最中、パッ! と榎本君の身体が煌めいた。
 かと思ったら、身体が光の粒子へと変化する。
 まるで群れをなした蛍のような光の集合体が、「待って!」と叫んだエリナの制止も聞かず、稽古場に置かれた素振り用の全身鏡の中へと吸い込まれていった。

「くっ! なんでっ!」

 鏡を割らんばかりの勢いでガンガンッガンッ! とクナイで斬り付けるエリナへと、ナツキ、葉月が一斉に飛び出した。

「待ってエリナ! 鏡が割れたら追えなくなる!」
 
「な、ナツキ!? ……それに葉月も。どうしてここに?」

 覗き見に気付けないほど、エリナは気が動転していたのだろう。
 大会に参加した目的である榎本君と再会を果たせたのだから。

「その話は後。エリナ。多分榎本君はどこかに転移させられた。消え方を考えたら、榎本君の意思で転移したとは考え難い」

「転移……」
 
「多分その鏡がゲートになっている。叩いたくらいでは壊れないと思うけど、もし壊れたら大変なことになるから」

 自分の全身が映った鏡を叩いていたエリナだったが、ナツキの説得が功を奏して、叩き割りたい気持ちをクナイを握り締めて抑えていた。

「ちっくしょ……」

 エリナは、照れ隠しのつもりなのか、弱点を晒したくないからなのか「榎本を助けるのは、服部から忍びの秘宝をもらうついで」なんて言っていたけど絶対違う。

 ――忍びを継いで欲しい。そう願ったエリナの両親。エリナはその願いを叶えようとしてナツキと殺し合い、古賀忍軍を最強の忍軍に昇華させようとした。

 エリナは見た目からは想像も付かないけれど、孝行娘だ。しかし、親思いでありつつも、その両親の願い以上に榎本君とのライバル関係を大切にしていた。
 榎本君がいなかったらエリナはくノ一になっていない。力だって捨てなかった。

 ――まずは榎本君の事は後回しにして、優勝を確実にしたほうがいい。
 普段のナツキならば、きっぱりと言い切れそうなものだ。

 しかし、エリナが邪魔にしかならない角張った逆さま玉手箱を、風呂敷に包んで肌身離さず持ち歩き続けている理由を知ったら何も言えなかった。

 そんな僅かに生まれた沈黙を、葉月が破る。
  
「少しは事情を理解したつもりですけど、彼に関しては打つ手がありませんわ。今はまずこの場を離れて身を隠しましょう」

 葉月は、決勝が終わるまで隠れるつもりなのだろう。
 現状淫魔チームは、マモン、審査委員長が戦闘不能。親玉の龍司も、残り一回でゲームオーバーになる。
 今逃げた榎本君と、誰からも相手にされなさそうな樽男は無傷だろうが、はっきり言って場違いなくらいに弱い。
 このまま逃げ切れば勝利は確実だった。
 ただ、エリナが納得するだろうか……。

「ウワアアアッ!!?」

 思いを巡らせていると、突然エリナがお化けでも見たような悲鳴を上げて飛び跳ね、――そして鏡を指差した。

「なっ、……り、……龍司っ!?」

 鏡に天敵である龍司が映り込んでいたのだ。ナツキ、そして葉月も武器をたずさえ、鏡にあいたいするように身構えた。
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