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第3章 淫武御前トーナメントの章
47話 決勝戦
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47話 決勝戦
「龍司。淫魔を孕ませる力を持った男で、アタシの兄。奴とは戦わないほうがいいわ。出来ることなら奴と接触しないままサバイバルマッチを制したい。――ナツキちゃん以外の意見は纏まっていたから、正直納得してくれて助かったわ」
戦うべきではないと思ったのは、オネエが持つ兄妹のしがらみを避けたいからでも、忍びが抱えている淫魔との宿命を避ける為でもない。
少し前なら気付くことさえ出来なかったであろう彼、――龍司が持つ別次元な強さ。単純な力の大きさがゆえだった。
淫らの力では勝てない相手。しかし、肉弾戦ではことさら勝てない。
それを強く思ったからだ。
「まぁ、あんなバケモノ見たら」
言いながらナツキは、ちらっと我関せずな様子で鼻歌を歌っているエリナを見た。
単純な力なら、ロリ巨乳になったエリナがこの中では一番だろう。
それゆえ気になったのだ。
「あたしは別に戦っても良かったんだけどねーうっ゛――」
オネエからの射貫くような視線を受けてエリナが言葉を詰まらせる。
が、それでも手の平をバリケードにして続けた。
「ただね。ルールがルールだから戦わない方が良いって思ったよ」
「ルール?」そうナツキが聞き返して、オネエから教えてもらうことになった。
168時間のリミットの中で4チームによる生き残り戦を行い、残ったポイントが多いチームの優勝。
それが決勝のルールだった。
1度の失神でマイナス1ポイント、5回失神した選手は退場。
減点方式なため、チーム全体で失神回数の少ないチームの優勝になる。
「下手に戦うのが危険って思ったから、逃げるのは賛成だよ。決勝の会場が地上と同じ広さで作られた、人だけいない仮想空間らしいからね」
――仮想空間……。戻ってきたばかりなのにまた? それももぬけの殻にした地上? どれだけの力があればそんな馬鹿げた空間を作りだせるんだ? ……龍司か。
「マイナス付けられて逃げ切られたら終わりだから戦わない方がいいよね」
思っている中、葉月が作戦の概要を話しはじめた。
「龍司を避けることを第一に、淫魔たちからポイントを奪います。――万が一龍司と遭遇した場合は、遭遇した味方を見捨ててください」
ナツキの眉間に皺が寄る。
そうするのが正解だと分かっていても、どうにも言葉にされると慣れない。
ただ、オネエとエリナはまるでこういったことに慣れたように聞き流している。異空間に閉じ込められている間に、もの凄い温度差が出来てしまったような気分だった。
「ナツキー、罰ゲームはあたしら全員の奴隷化みたいだよ。意思とか何もかもを捨てさせるんだって。奴隷とういうかー、肉? とういうか動物? 結構重いでしょ」
エリナは嘘吐きだと思っていたが、異様なくらいに気が利く。
嘘吐きだったのが嘘だった?
そんな結局嘘吐きなエリナが続けた。
「あまり重たいと思わないんだよね。多分服部も、そして葉月も。むしろ死なない分軽いって思っちゃうくらいで。ナツキは変に真面目で、変に優しいから――」
温度差なんかじゃない。慣れているはずがない。負けた場合に失うモノの大きさは、皆同じ。苦痛だって、恐怖だって同じだ。
ただ、気遣いできるか出来ないかの差。
そして、勝っても負けても決勝戦が淫魔との最終決戦になる。
みんなそれを分かっている。
「エリナ。――……ありがとう。今度宿題手伝ってあげるよ」
「え? ほんと!? あーでも、おっぱい以外ちっちゃくなったから学校いけないかもー。あー、でもナツキも通えてるから大丈夫だね! いや、ナツキは最初から小さかったから……」
「オネエ、――無事帰れたら話があるから。男なのか女なのか人間なのか淫魔なのか、色々詳しく聞かせてもらうからね」
「ちょっとナツキちゃん突然何? ねぇ、まずいんじゃないのこういうのって? 誰か死ぬんじゃないの? ナツキちゃんが死ぬんじゃないの?」
「葉月、――お母さんって多分一生呼ばないと思うから、無事帰れたらめちゃくちゃこき使うから。今までボケたおじいちゃんの面倒散々見させられた分」
「生きて帰られたらいくらでも見てあげますわ」
今生の別れとは思っていない。
ただ、これが最後の戦いとなるのだ。
そう思うとこみ上げてくるものがあって、ナツキの口数が異様に増えていた。
そして伝えたいことがもう一つ。
「作戦に私の力が使えるかも知れないから、少し話しを聞いて欲しい。使えたなら龍司がバケモノとはいえ多分負けない。絶対みんなで生きて帰れる」
こうして決勝戦に向けての作戦会議が行われるのであった。
「龍司。淫魔を孕ませる力を持った男で、アタシの兄。奴とは戦わないほうがいいわ。出来ることなら奴と接触しないままサバイバルマッチを制したい。――ナツキちゃん以外の意見は纏まっていたから、正直納得してくれて助かったわ」
戦うべきではないと思ったのは、オネエが持つ兄妹のしがらみを避けたいからでも、忍びが抱えている淫魔との宿命を避ける為でもない。
少し前なら気付くことさえ出来なかったであろう彼、――龍司が持つ別次元な強さ。単純な力の大きさがゆえだった。
淫らの力では勝てない相手。しかし、肉弾戦ではことさら勝てない。
それを強く思ったからだ。
「まぁ、あんなバケモノ見たら」
言いながらナツキは、ちらっと我関せずな様子で鼻歌を歌っているエリナを見た。
単純な力なら、ロリ巨乳になったエリナがこの中では一番だろう。
それゆえ気になったのだ。
「あたしは別に戦っても良かったんだけどねーうっ゛――」
オネエからの射貫くような視線を受けてエリナが言葉を詰まらせる。
が、それでも手の平をバリケードにして続けた。
「ただね。ルールがルールだから戦わない方が良いって思ったよ」
「ルール?」そうナツキが聞き返して、オネエから教えてもらうことになった。
168時間のリミットの中で4チームによる生き残り戦を行い、残ったポイントが多いチームの優勝。
それが決勝のルールだった。
1度の失神でマイナス1ポイント、5回失神した選手は退場。
減点方式なため、チーム全体で失神回数の少ないチームの優勝になる。
「下手に戦うのが危険って思ったから、逃げるのは賛成だよ。決勝の会場が地上と同じ広さで作られた、人だけいない仮想空間らしいからね」
――仮想空間……。戻ってきたばかりなのにまた? それももぬけの殻にした地上? どれだけの力があればそんな馬鹿げた空間を作りだせるんだ? ……龍司か。
「マイナス付けられて逃げ切られたら終わりだから戦わない方がいいよね」
思っている中、葉月が作戦の概要を話しはじめた。
「龍司を避けることを第一に、淫魔たちからポイントを奪います。――万が一龍司と遭遇した場合は、遭遇した味方を見捨ててください」
ナツキの眉間に皺が寄る。
そうするのが正解だと分かっていても、どうにも言葉にされると慣れない。
ただ、オネエとエリナはまるでこういったことに慣れたように聞き流している。異空間に閉じ込められている間に、もの凄い温度差が出来てしまったような気分だった。
「ナツキー、罰ゲームはあたしら全員の奴隷化みたいだよ。意思とか何もかもを捨てさせるんだって。奴隷とういうかー、肉? とういうか動物? 結構重いでしょ」
エリナは嘘吐きだと思っていたが、異様なくらいに気が利く。
嘘吐きだったのが嘘だった?
そんな結局嘘吐きなエリナが続けた。
「あまり重たいと思わないんだよね。多分服部も、そして葉月も。むしろ死なない分軽いって思っちゃうくらいで。ナツキは変に真面目で、変に優しいから――」
温度差なんかじゃない。慣れているはずがない。負けた場合に失うモノの大きさは、皆同じ。苦痛だって、恐怖だって同じだ。
ただ、気遣いできるか出来ないかの差。
そして、勝っても負けても決勝戦が淫魔との最終決戦になる。
みんなそれを分かっている。
「エリナ。――……ありがとう。今度宿題手伝ってあげるよ」
「え? ほんと!? あーでも、おっぱい以外ちっちゃくなったから学校いけないかもー。あー、でもナツキも通えてるから大丈夫だね! いや、ナツキは最初から小さかったから……」
「オネエ、――無事帰れたら話があるから。男なのか女なのか人間なのか淫魔なのか、色々詳しく聞かせてもらうからね」
「ちょっとナツキちゃん突然何? ねぇ、まずいんじゃないのこういうのって? 誰か死ぬんじゃないの? ナツキちゃんが死ぬんじゃないの?」
「葉月、――お母さんって多分一生呼ばないと思うから、無事帰れたらめちゃくちゃこき使うから。今までボケたおじいちゃんの面倒散々見させられた分」
「生きて帰られたらいくらでも見てあげますわ」
今生の別れとは思っていない。
ただ、これが最後の戦いとなるのだ。
そう思うとこみ上げてくるものがあって、ナツキの口数が異様に増えていた。
そして伝えたいことがもう一つ。
「作戦に私の力が使えるかも知れないから、少し話しを聞いて欲しい。使えたなら龍司がバケモノとはいえ多分負けない。絶対みんなで生きて帰れる」
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