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第3章 淫武御前トーナメントの章
40話 マーラから唆されて、自慰する羽目になったナツキ♥
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40話 マーラから唆されて、自慰する羽目になったナツキ♥
くちゅ……、くちゅ……、人工的に作られた無音の空間。
風さえ吹かないせいで、ねっとりとした粘液音がやけに鼓膜を震わせた。
その卑猥を想像させる音は、難しそうに眉を寄せたナツキの股から、それも自らの指によって鳴らされていた。
『ン、ン゛ンッ!』と、マーラの不慣れな咳払いの後続けられた台詞によって、ナツキは手淫をする羽目に陥ったのであった。
「えー、このー影遁の術で作られた空間なんだが……。脱出する方法が、無きにしも非ず!」
「え? ――ほんと?」
ナツキの声がパッと明るくなった。
いくら自殺志願者とはいえ、己のミスでマーラを仮想空間に閉じ込めてしまったことに申し訳なさを感じていたのだ。下手したら一生出られないかもしれない、――そう脳裏に浮かぶほどに、ナツキは事態を楽観視していなかった。それもあって、ナツキはマーラの台詞には素直に喜んだ。
「イケば良いのだよ。――忍術も淫術も原理は一緒」
「原理が一緒なのは分かるんだけど、行く? どこに行くの。え? 行くって ……逝く?」
「そう。――性的絶頂だ」
一理ある。マーラに施した影縫いが解けた原因は、発情によるところが大きい。
……発情してしまったのは不覚だけれど。
忍術は、術者が強い感覚を受けると解けやすくなる性質を持つ。
精神集中の乱れが忍術の掛かりを弱めるのが理由だ。
逝ったら術が解ける可能性は十分あるだろう。
しかし――。
「ワタシが手伝おう。――このちんぽを使ってな」
突然がっついてくるとは思っておらず、これには流石に驚かされた。
それに、この男はオネエに想いを寄せている。
その癖して――突然曝け出してきた肉棒は、目を背けたくなるほどビキビキに反り返っていた。
ナツキに欲情していることが丸分かりな勃起だった。
「やれば術は解ける。気持ち良くなり、尚且ここからも出られる! 一石二鳥だ」
自信満々に、顔に穴が空きそうなくらい凝視して言われたら流石に引いてしまう。
「一理あるのかも知れないけど、他にも方法があるから」と言って、ナツキは自分で達することを選び、今現在、手淫に至っているのであった。
巨漢の背中に背中を合わせて座り、絶対に邪魔立てされないように慰める。
見られているのか、見られていないのか分からないとなると、逝けるものも逝けなくなってしまう。
しかし、この無風空間はあまりにも静か過ぎる。いくら粘膜音を抑えようとしても、ぴちゃ……ぴちゃ……これ以上ないほどに響いて、羞恥を煽ってくる。
防音室で自慰させられているように、何ものにも邪魔されない。
それでいてイヤホンから陰部弄りの音を流されているくらいに、臨場感たっぷりにねちゃくちゃ鳴ってくる。
愛液音が大きくなっていくこともはっきり痛感させられる。
感じていると聴覚から知らしめられる。
音が大きくなるにつれて、ぎゅう……、ぎゅう……、と羞恥心によるものなのか、胸を締め付けるような圧迫感が強くなってくる。
それにマーラは淫魔なのだ。ぴちゃっ、くちゃあっ、とこれだけ音が鳴ればどんな風に弄っているかも、今どれだけ感じているかも丸分かりだろう。
全て筒抜けになっている……。
そんな答えを導き出してから、粘膜音の中に心音まで混ざり始めた。
普段自慰に浸る様子まで、教えてしまっているようなものだ。
これならまだマーラに弄られたほうがマシだったかも知れない……、などと己の判断ミスを悔いていた。
――でも。もう少し……。
くちゅ、くちゅ……、くちゃっくちゅっ、くちゅっくちゃっ……くちゅうっ、
もう少しで、……逝きそう……。
愛液と指先絡む音に荒々しい息遣いまで混ざり始める。
「んっ、ふ、はぁ……あ、はぁ……、はぁはぁ…………あっ、あっ♥」
黄色い喘ぎ声が漏れる。
ピチャッ、ピチャッ、と愛液を跳ねさせ、コリコリに立ったクリトリスを指先で摘まんだ。
「んっはっ♥」
ビリン、と電気的な刺激が走って、理性のタガが外れた。
ずっと見ていなかったオネエの肉棒を手コキしてから、オネエとの思い出が走馬灯のように駆け抜け、それからずっと疼きっぱなしだったのだ。
オネエとの情痴を思い出してから昂ぶりっぱなしだった性感帯を慰める。
やっ、やっぱりおねえが好きっ、あっあっ…………。
クチュ、クチュ、クチュクチュコリッ、
「あっ! あ、あっ♥ あ、っあ、あ、あっ、あ! ぁあん!」
後ろに淫魔がいるのに逝っちゃうっ、オネエが化けていた男がいるのにっ、逝くっ……オネエとやったばかりの淫魔がいるのにっ……。あっ……。
2人の姦淫を想像したら、さらに昂ぶった。
「あっ、あぁん♥ あ! あっ、あ、あっ……あ、ぁあっ!」
直接触れていない手の平さえ愛液で水浸しで、甘酸っぱい匂いが立ちのぼっていてその中をビリンッビリンッ、と何度も電気が駆け上ってくる。
湿っているはずなのに乾いた刺激が何度も何度も駆け上ってきて、その電気刺激を抑えつけようとするかのように身体の中心に向かってギュッ、ギュッ、と縮こまる。
おまんこに向かって絞り込まれるような切迫感がギュギュッ、と細かくなる。
「あ、ああんっ! も、もうっ、あっ、、あ、あぁあ♥ あ! もう、ぁ、あっ!」
後ろに男がいることさえ忘れて、この空間に男がいることすら忘れて、膝頭を倒して股を開いてしゃくるように陰部を慰める。
久々にした自慰の指の動きに翻弄されて股間もしゃくるように突き上げる。
「んぁ、あっあ、あい、あ、あぁん♥ あ、あっ、も、もうっ、もう、もうっ――」
「ナツキくん! この状況だと逝けないだろう!?」
「あっ! あ、…………あ、……ぁ……っ………………は? …………はぁ?」
逝けそうだったんだけど……。
邪魔されなければ逝けたのは明白だった。
本気で聞いているのだろうか?
この男は淫魔じゃないのだろうか?
本気で聞いているのなら、オネエはなんでこんな童貞以下の雑魚淫魔に堕ちたの?
そもそもだ。
ふと冷静になってみて思ったが、仮に今逝けたとして異空間から出られるのだろうか。逝ったからといって、物理的に関係のない部屋が突然壊れ始めるとは思えない。
――冷静に考えれば分かるはずなのに。
それよりもだ――。悪意さえ感じる妨害には文句の1つも言ってやらないと気が済まない。
ナツキが不機嫌を露わにした。ところをまるで狙いすますように、マーラから捲し立てられてしまうのであった。
「このような状況で逝くのは雑魚マンコでもない限り無理だよ。――――そこで提案なんだが」
文句を言わせないように、まるで最初から用意していたような雑魚扱いの台詞を吐いたマーラが、小さなカプセルを床に投げ付けると、ボワンッ! と煙が立ちのぼりそこから質量を無視したアタッシュケースが現れ、ガチャン! と良すぎる手際で開帳して中身を見せ付けてきた。
「す、ご……」
マジシャンのような手捌きに感嘆してしまう。妨害してきたことに文句の1つでも言ってやろうと思っていた筈なのに、その気さえ失せてしまっていた。
「はぁ……。で、何それ……。気色悪い色だね」
アタッシュケースの中に、はめ込まれるかたちで注射筒が5本並んでいた。
「翔子くんに使った催淫性の強い注射液だ。――そう、翔子くんが堕ちた注射液だ」
「それを私に打ちたいって? 自分1人じゃいけないからって? 絶対いやなんだけど。MARSって呼ばれる最悪なドラッグでイヤな思いをしたばかりだから」
「そうか、――ガチャンッでも、それは、――チクッ……、関係ない。ガチャンッ! チクッ――」
「……なっ、ちょっ、ちょっと!! 何するの!?」
手際の良さをそのままに、まるで拳銃の弾丸を高速充填しながら撃ち込むガンマンのような芸当を腕に向かって繰り返してきたのだ。
芸当ではあるし、針が刺さっても痛くはない。
しかし純粋に怖かった。
比較対象が、効率を無視して安心感を優先させる看護婦さんしかいないからだ。
それゆえ恐怖心から、バンッ!!
力一杯にマーラの腕を払い除けた。
「な、何て事をするんだ!? 注射の最中にこんな真似をするなんて!! 医療ミスが起きるぞ!?」
「な、何が医療ミスなの!? だいたい医療従事者じゃないでしょ! どういうつもりなのっ、ほんとっ……。さっきも言ったけど、薬剤は嫌いだから。痛い目見たし。それにさっき言ったMARSのお陰で耐性があるから」
そう、不幸にも、ナツキはMARSによって催淫剤の類に対しての免疫があり余っているくらいにあるのだ。
刺されたことよりも、むしろ絶頂の手前のまま放置したあそこのほうがよっぽど疼いている。
身体がだるくてしかたないくらいに――。
――っ、え……?
「少しは耐性があるようだが、打たせてもらった薬はそんなに弱くはない。現に動けないだろう?」
「そんなわけはないっ、ただ怠いだけ、だっ……」
身体が重たくはなってきたものの、動けない訳ではない。倦怠感が強いだけだ。
体液を泥水に変えられたような倦怠感に苛まれているだけだ。
注射を打たれてから時間にして5分と経っていない。
だが、徐々に徐々に自覚出来ないほどのゆったりとしたペースで蝕まれていて、気付かぬうちに身体が沈んでいく。
まるで自分の意思で横たわっていくように。
「翔子くんには筋弛緩剤と麻酔をカクテルしたが、キミには筋弛緩剤と催淫剤だ。どんな気分だい?」
「ど、どういうつもりっ……、私を、嵌めたのかっ……」
ここに来て一抹の不安を覚え、ナツキは見上げるようにマーラを睨んだ。
「違うぞナツキくん。信用してくれ。さっき、絶頂した場合出られるかも知れないと言ったが、正直難しいと判断したんだ」
「ま、まぁ……、はぁ、はぁ……それは私も思ったけど……」
「ナツキくんが気を失いでもしない限り、この空間は維持されるんじゃないかと思ってね。絶頂くらいでは術が解けないくらいにナツキくんは優秀なくノ一なのだろう」
「………………」
煽てられていると分かっても悪い気のしない言い方だった。
「ワタシはここで果てても良いが、ナツキくんはそうもいかないだろう。翔子くんが外で待っているんだ。それで手荒だとは思ったが、無礼を承知でこのような真似をさせてもらった。――許してくれ」
「――そ、……それならそうと。言ってくれれば良かった……」
最初、そう言われたものの、自分で弄って達すると言って聞かなかったのはナツキ自身だった。それを覚えているからこそナツキは、ばつが悪そうに、自信なく呟くことしか出来なかった。
「そうだな、済まなかった。では気を取り直してこれから気を失うまで逝ってもらっても良いかな? ナツキくん」
「ぅ……」
面と向かってストレートに言われると照れが強すぎて、頬が赤くなっていくのが自覚出来てしまう。それでもナツキは僅かに視線を逸らすものの小さく頷いた。
しかしながらこれら全てはマーラ、そして魔凜の策略であった。
ナツキの身体が欲しい魔凜。翔子に惚れ込んでいるナツキを、翔子さえどうでも良くなるほど堕落させたいマーラ。
2人による策略が本格的に始まるのであった。
くちゅ……、くちゅ……、人工的に作られた無音の空間。
風さえ吹かないせいで、ねっとりとした粘液音がやけに鼓膜を震わせた。
その卑猥を想像させる音は、難しそうに眉を寄せたナツキの股から、それも自らの指によって鳴らされていた。
『ン、ン゛ンッ!』と、マーラの不慣れな咳払いの後続けられた台詞によって、ナツキは手淫をする羽目に陥ったのであった。
「えー、このー影遁の術で作られた空間なんだが……。脱出する方法が、無きにしも非ず!」
「え? ――ほんと?」
ナツキの声がパッと明るくなった。
いくら自殺志願者とはいえ、己のミスでマーラを仮想空間に閉じ込めてしまったことに申し訳なさを感じていたのだ。下手したら一生出られないかもしれない、――そう脳裏に浮かぶほどに、ナツキは事態を楽観視していなかった。それもあって、ナツキはマーラの台詞には素直に喜んだ。
「イケば良いのだよ。――忍術も淫術も原理は一緒」
「原理が一緒なのは分かるんだけど、行く? どこに行くの。え? 行くって ……逝く?」
「そう。――性的絶頂だ」
一理ある。マーラに施した影縫いが解けた原因は、発情によるところが大きい。
……発情してしまったのは不覚だけれど。
忍術は、術者が強い感覚を受けると解けやすくなる性質を持つ。
精神集中の乱れが忍術の掛かりを弱めるのが理由だ。
逝ったら術が解ける可能性は十分あるだろう。
しかし――。
「ワタシが手伝おう。――このちんぽを使ってな」
突然がっついてくるとは思っておらず、これには流石に驚かされた。
それに、この男はオネエに想いを寄せている。
その癖して――突然曝け出してきた肉棒は、目を背けたくなるほどビキビキに反り返っていた。
ナツキに欲情していることが丸分かりな勃起だった。
「やれば術は解ける。気持ち良くなり、尚且ここからも出られる! 一石二鳥だ」
自信満々に、顔に穴が空きそうなくらい凝視して言われたら流石に引いてしまう。
「一理あるのかも知れないけど、他にも方法があるから」と言って、ナツキは自分で達することを選び、今現在、手淫に至っているのであった。
巨漢の背中に背中を合わせて座り、絶対に邪魔立てされないように慰める。
見られているのか、見られていないのか分からないとなると、逝けるものも逝けなくなってしまう。
しかし、この無風空間はあまりにも静か過ぎる。いくら粘膜音を抑えようとしても、ぴちゃ……ぴちゃ……これ以上ないほどに響いて、羞恥を煽ってくる。
防音室で自慰させられているように、何ものにも邪魔されない。
それでいてイヤホンから陰部弄りの音を流されているくらいに、臨場感たっぷりにねちゃくちゃ鳴ってくる。
愛液音が大きくなっていくこともはっきり痛感させられる。
感じていると聴覚から知らしめられる。
音が大きくなるにつれて、ぎゅう……、ぎゅう……、と羞恥心によるものなのか、胸を締め付けるような圧迫感が強くなってくる。
それにマーラは淫魔なのだ。ぴちゃっ、くちゃあっ、とこれだけ音が鳴ればどんな風に弄っているかも、今どれだけ感じているかも丸分かりだろう。
全て筒抜けになっている……。
そんな答えを導き出してから、粘膜音の中に心音まで混ざり始めた。
普段自慰に浸る様子まで、教えてしまっているようなものだ。
これならまだマーラに弄られたほうがマシだったかも知れない……、などと己の判断ミスを悔いていた。
――でも。もう少し……。
くちゅ、くちゅ……、くちゃっくちゅっ、くちゅっくちゃっ……くちゅうっ、
もう少しで、……逝きそう……。
愛液と指先絡む音に荒々しい息遣いまで混ざり始める。
「んっ、ふ、はぁ……あ、はぁ……、はぁはぁ…………あっ、あっ♥」
黄色い喘ぎ声が漏れる。
ピチャッ、ピチャッ、と愛液を跳ねさせ、コリコリに立ったクリトリスを指先で摘まんだ。
「んっはっ♥」
ビリン、と電気的な刺激が走って、理性のタガが外れた。
ずっと見ていなかったオネエの肉棒を手コキしてから、オネエとの思い出が走馬灯のように駆け抜け、それからずっと疼きっぱなしだったのだ。
オネエとの情痴を思い出してから昂ぶりっぱなしだった性感帯を慰める。
やっ、やっぱりおねえが好きっ、あっあっ…………。
クチュ、クチュ、クチュクチュコリッ、
「あっ! あ、あっ♥ あ、っあ、あ、あっ、あ! ぁあん!」
後ろに淫魔がいるのに逝っちゃうっ、オネエが化けていた男がいるのにっ、逝くっ……オネエとやったばかりの淫魔がいるのにっ……。あっ……。
2人の姦淫を想像したら、さらに昂ぶった。
「あっ、あぁん♥ あ! あっ、あ、あっ……あ、ぁあっ!」
直接触れていない手の平さえ愛液で水浸しで、甘酸っぱい匂いが立ちのぼっていてその中をビリンッビリンッ、と何度も電気が駆け上ってくる。
湿っているはずなのに乾いた刺激が何度も何度も駆け上ってきて、その電気刺激を抑えつけようとするかのように身体の中心に向かってギュッ、ギュッ、と縮こまる。
おまんこに向かって絞り込まれるような切迫感がギュギュッ、と細かくなる。
「あ、ああんっ! も、もうっ、あっ、、あ、あぁあ♥ あ! もう、ぁ、あっ!」
後ろに男がいることさえ忘れて、この空間に男がいることすら忘れて、膝頭を倒して股を開いてしゃくるように陰部を慰める。
久々にした自慰の指の動きに翻弄されて股間もしゃくるように突き上げる。
「んぁ、あっあ、あい、あ、あぁん♥ あ、あっ、も、もうっ、もう、もうっ――」
「ナツキくん! この状況だと逝けないだろう!?」
「あっ! あ、…………あ、……ぁ……っ………………は? …………はぁ?」
逝けそうだったんだけど……。
邪魔されなければ逝けたのは明白だった。
本気で聞いているのだろうか?
この男は淫魔じゃないのだろうか?
本気で聞いているのなら、オネエはなんでこんな童貞以下の雑魚淫魔に堕ちたの?
そもそもだ。
ふと冷静になってみて思ったが、仮に今逝けたとして異空間から出られるのだろうか。逝ったからといって、物理的に関係のない部屋が突然壊れ始めるとは思えない。
――冷静に考えれば分かるはずなのに。
それよりもだ――。悪意さえ感じる妨害には文句の1つも言ってやらないと気が済まない。
ナツキが不機嫌を露わにした。ところをまるで狙いすますように、マーラから捲し立てられてしまうのであった。
「このような状況で逝くのは雑魚マンコでもない限り無理だよ。――――そこで提案なんだが」
文句を言わせないように、まるで最初から用意していたような雑魚扱いの台詞を吐いたマーラが、小さなカプセルを床に投げ付けると、ボワンッ! と煙が立ちのぼりそこから質量を無視したアタッシュケースが現れ、ガチャン! と良すぎる手際で開帳して中身を見せ付けてきた。
「す、ご……」
マジシャンのような手捌きに感嘆してしまう。妨害してきたことに文句の1つでも言ってやろうと思っていた筈なのに、その気さえ失せてしまっていた。
「はぁ……。で、何それ……。気色悪い色だね」
アタッシュケースの中に、はめ込まれるかたちで注射筒が5本並んでいた。
「翔子くんに使った催淫性の強い注射液だ。――そう、翔子くんが堕ちた注射液だ」
「それを私に打ちたいって? 自分1人じゃいけないからって? 絶対いやなんだけど。MARSって呼ばれる最悪なドラッグでイヤな思いをしたばかりだから」
「そうか、――ガチャンッでも、それは、――チクッ……、関係ない。ガチャンッ! チクッ――」
「……なっ、ちょっ、ちょっと!! 何するの!?」
手際の良さをそのままに、まるで拳銃の弾丸を高速充填しながら撃ち込むガンマンのような芸当を腕に向かって繰り返してきたのだ。
芸当ではあるし、針が刺さっても痛くはない。
しかし純粋に怖かった。
比較対象が、効率を無視して安心感を優先させる看護婦さんしかいないからだ。
それゆえ恐怖心から、バンッ!!
力一杯にマーラの腕を払い除けた。
「な、何て事をするんだ!? 注射の最中にこんな真似をするなんて!! 医療ミスが起きるぞ!?」
「な、何が医療ミスなの!? だいたい医療従事者じゃないでしょ! どういうつもりなのっ、ほんとっ……。さっきも言ったけど、薬剤は嫌いだから。痛い目見たし。それにさっき言ったMARSのお陰で耐性があるから」
そう、不幸にも、ナツキはMARSによって催淫剤の類に対しての免疫があり余っているくらいにあるのだ。
刺されたことよりも、むしろ絶頂の手前のまま放置したあそこのほうがよっぽど疼いている。
身体がだるくてしかたないくらいに――。
――っ、え……?
「少しは耐性があるようだが、打たせてもらった薬はそんなに弱くはない。現に動けないだろう?」
「そんなわけはないっ、ただ怠いだけ、だっ……」
身体が重たくはなってきたものの、動けない訳ではない。倦怠感が強いだけだ。
体液を泥水に変えられたような倦怠感に苛まれているだけだ。
注射を打たれてから時間にして5分と経っていない。
だが、徐々に徐々に自覚出来ないほどのゆったりとしたペースで蝕まれていて、気付かぬうちに身体が沈んでいく。
まるで自分の意思で横たわっていくように。
「翔子くんには筋弛緩剤と麻酔をカクテルしたが、キミには筋弛緩剤と催淫剤だ。どんな気分だい?」
「ど、どういうつもりっ……、私を、嵌めたのかっ……」
ここに来て一抹の不安を覚え、ナツキは見上げるようにマーラを睨んだ。
「違うぞナツキくん。信用してくれ。さっき、絶頂した場合出られるかも知れないと言ったが、正直難しいと判断したんだ」
「ま、まぁ……、はぁ、はぁ……それは私も思ったけど……」
「ナツキくんが気を失いでもしない限り、この空間は維持されるんじゃないかと思ってね。絶頂くらいでは術が解けないくらいにナツキくんは優秀なくノ一なのだろう」
「………………」
煽てられていると分かっても悪い気のしない言い方だった。
「ワタシはここで果てても良いが、ナツキくんはそうもいかないだろう。翔子くんが外で待っているんだ。それで手荒だとは思ったが、無礼を承知でこのような真似をさせてもらった。――許してくれ」
「――そ、……それならそうと。言ってくれれば良かった……」
最初、そう言われたものの、自分で弄って達すると言って聞かなかったのはナツキ自身だった。それを覚えているからこそナツキは、ばつが悪そうに、自信なく呟くことしか出来なかった。
「そうだな、済まなかった。では気を取り直してこれから気を失うまで逝ってもらっても良いかな? ナツキくん」
「ぅ……」
面と向かってストレートに言われると照れが強すぎて、頬が赤くなっていくのが自覚出来てしまう。それでもナツキは僅かに視線を逸らすものの小さく頷いた。
しかしながらこれら全てはマーラ、そして魔凜の策略であった。
ナツキの身体が欲しい魔凜。翔子に惚れ込んでいるナツキを、翔子さえどうでも良くなるほど堕落させたいマーラ。
2人による策略が本格的に始まるのであった。
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